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3.支援体制を構築する
「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」
第4話 「ぬくもりの継承」
東京渋谷区白駒地区にある、白駒池居宅介護支援事業所のケアマネジャーや、それに関わる人々、そして北アルプス山麓の人達の物語である。
【今回の登場人物】
立山麻里 白駒池居宅のケアマネジャー
月山信二 白駒地区地域包括支援センターの相談員
秋元ユキ 麻里が担当する利用者
小村大作 白駒地区社協の職員
ラグビーで使われる言葉
ひとりはみんなのために
みんなはひとりのために
ケアマネジメントも一緒だろう
3.支援体制を構築する
秋元ユキは、認定調査の結果が介護度1が推定されたため、月山信二は早々にケア会議を開いた。
担当の民生委員筑波芳子だけでなく、当該地区の民生委員長、それに行政のソーシャルワーカー、さらに家主、社協の日常生活自立支援事業の担当者、ケアマネジャーの立山麻里、そして仙丈医院の仙丈岳医師も遅れては来たが参加してくれた。
これだけのメンバーをてきぱきと集めるのも月山の成せる業と言えた。
秋元ユキには愛媛県に弟がいることが分かったが、疎遠な状況であり他に親族もなく、後見人の申請が必要な状況と言えた。
長年保険のセールスを頑張り、後年はその会社での指導係も勤め上げて円満退職していた。
そのため厚生年金をそれなりにもらっていた。
趣味は部類の阪神タイガースファンで、東京ドーム、神宮、横浜にはよく応援に出かけていたという。
民生委員からは地域としての課題は提起されてはいなかったが、訪問回数は増やすこととした。
サービスとしては、ヘルパーとデイサービスを本人と話し合ったうえで導入を考えた。
仙丈医師からは、とりあえず介護保険導入のための検診を行ったが、落ち着けば精密検査が必要かもしれないという情報が得られた。
月山は成年後見制度の導入に向けても、手続きを開始することにした。
ひとつのポイントになったのが、日常生活自立支援事業の導入だった。
担当の社協職員小村大作は、本人がこの事業のことを理解してくれるだけの能力があるのか疑問であると難色を示した。
しかしそれに対しては、月山も立山も大丈夫と反論し、月山が金銭管理等について秋元ユキにアプローチを進めることになった。
マンションの家主は、これだけの人が関わっているのを見て、圧倒されるとともに安心したのか、遅れながらでもいいのでしっかりと払ってもらえれば、退去は言わないと明言した。
こうして秋元ユキのサポート体制は固まった。
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既に秋元ユキと信頼関係を築き上げていた立山麻里は、本人と相談しながらデイサービスとヘルパーの導入を進めた。
「デイサービス? なんだかわからないけど、一人で家にじっとしてるより良さそうね。タイガースの帽子かぶって行っていい?」
と、あっさりとデイサービス行きを決めた。
実際秋元ユキは初回のデイサービス利用時、ジャイアンツファンが多い中、堂々とタイガースの帽子をかぶって参加したのだった。
一方、月山信二は社協の担当職員の小村とともに秋元ユキに日常生活自立支援事業について説明し、「なんだかよくわからないけど、お任せする。」という秋元ユキの返事をもらった。
社協職員の小村はその返事に不満顔だったが、手続きを進めてくれた。
そのうえで、月山は小村とともに、秋元ユキと一緒に銀行の通帳での残高確認と出金を行った。
秋元ユキはカードの暗証番号は忘れていたが、幸いなことに通帳と印鑑が出てきたからだ。
しかし、通帳を見て新たなる事実がわかる。
毎月高額が引き落とされているのだ。それも複数だった。
後で調べて分かったことだが、高級化粧品や羽根ふとんや健康食品の通販を注文していたのだ。そのため、貯金は底を尽きかけていた。
月山はそれらのことに対応したうえで、秋元ユキに渡す現金を制限し、まずは家賃の滞納分を貯めていくことにした。
とにもかくにも、秋元ユキの新生活が始まったのだ。
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