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6.山小屋は別世界?
「幾星霜の人々と共に・白駒池居宅介護支援事業所物語」
第3話 「南極ゴジラを見た」
【今回の登場人物】
立山麻里 白駒池居宅の管理者
想井遣造 麻里の友人 山想小屋と親しい
明神健太 白駒池居宅のケアマネジャー
滝谷七海 白駒地区地域包括支援センターの管理者
有明一郎 松本アルピ地域包括支援センターの職員
鵜木畑猛 山想小屋の小家主
離れていても
空も地面も繋がっている
6.山小屋は別世界?
立山麻里は、想井遣造から携帯に直接電話があったことにドキッとした。
ただその内容が介護保険の相談であったので、そのドキドキはすぐに収まったが、なんとなく心地よさを感じていた。
「わかりました。東京からではどうすることもできませんが、地元の包括支援センターがどこなのか調べて、私か包括の滝谷さんから地元の包括支援センターに連絡を取ってみますね。」
「ありがとう。お礼に今度とまりぎで、だし巻き玉子おごるわ。」
想井はそう言って電話を切った。
居酒屋とまりぎのだし巻き玉子がとても美味しいと、麻里がいつも頼むのを想井は知っていたのだ。
「立山さん、どうしたんですか、にやにやして。」
電話が終わった立山の顔を見て、明神健太ケアマネジャーが声を掛けた。
「え? 私、にやにやしてました? 別になんでもありません。」
と言い返したものの、確かに気持ちがどこか高鳴った所があったのかもしれないと麻里は思った。
「あはは、そうなんですか~? じゃあ、訪問行ってきま~す。」
と、明神は軽いノリで出かけて行った。
麻里は想井からの相談を包括支援センターの滝谷七海に伝えた。
介護の相談はまずは地域包括支援センターが担うことになる。包括のことは包括から連絡してもらった方がいいと考えたからだ。
白駒地区地域包括支援センターの滝谷七海は、立山麻里から山小屋の住所を聞き、すぐに地元の地域包括支援センターを調べた。
恋生地区という住所を管轄するのは、松本アルピ地域包括支援センターだと分かり、七海はすぐに電話を掛けた。
電話に出たのは有明一郎という名前の男性職員だった。
「山想小屋ですか? 知ってますよ。え? 小屋の親父さんからの相談ですか? 」
有明はなぜ東京から連絡があったのかわからなかったが、山小屋の親父が東京にいる知人に相談したからだと分かり納得した。
有明はそれならば、こちらから山小屋に連絡すると言って滝谷からの電話を切った。
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「もしかして、あの山のおばばのことかな? 」
山想小屋の山のおばばのことは、地元民として有明も知っていた。
有明は小屋の電話番号を調べ、さっそく山小屋の親父鵜木畑猛に連絡を入れた。
鵜木畑は介護保険のことなど全くわからないということだったので、認定を受けるには申請書を提出し、医者の診断と調査を受ける必要があると伝えた。
「鵜木畑さん、お母様を連れて山から下りてこられますか? ご自宅で調査させてもらって、しかるべきお医者さんを紹介しますけど。」
有明はここまでは淡々と説明した。
しかし、鵜木畑からの返事は山から下りる気はないし、本人にもその気はないので山小屋まで来てほしいというものだった。
有明は仰天した。
「 え!? 山小屋に認定調査に行くなんて、聞いたことありませんよ。」
有明は想定外のことに、思わずそう鵜木畑に返してしまった。
元々頑固で気難しい鵜木畑は、有明のその言葉にカチンときた。
「わかった。もういい。」
と言って、電話をブチッと切ってしまった。
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