
コラム12 太平洋フェリーに価値はあるのか (その2)~時間をどのように活用するかは私たち自身に委ねられている~
コラム12 太平洋フェリーに価値はあるのか (その2)
~時間をどのように活用するかは私たち自身に委ねられている~
さて、この太平洋フェリーですが、安定用のスタビライザーを備えているとはいえ、荒天時はやはり揺れるようです。何と言っても太平洋上を航行するので、荒天時の船酔いはあるかもしれません。
また、携帯の電波は入りません。船の陸側の部屋だと時々電波が入るということですが、仙台港の寄港時以外は、基本電波は入らないと思った方が良いでしょう。
40時間かかるうえに、天気が悪ければ船酔いするし、降りたくても降りれません。
電波も入らないというマイナス点もありますが、二泊することを思えば、宿泊料は安いですし、料金は高めですがレストランや軽食コーナーで、御馳走が味わえます。
映画や余興がタダで見られ、展望デッキに出れば普段見ることができない朝な夕なの景色が見られるなどの、船でしか味わえない体験ができます。 フェリーのキャッチフレーズが、「時もひと休みする船旅」というように、時間をどう解釈するかというところもポイントではないでしょうか。
もちろん飛行機なら前回も書いたように、待ち時間も含めて3時間から4時間もあれば、北海道に着いてしまいます。
実質1時間45分ですから、狭い空間もほんのひととき、ひと眠りしたら着いちゃいますので、北海道内の行動範囲も広がります。
なのに何故、太平洋フェリーは人気があるのか? それもリピーターが多いとか。今回は物流輸送に関することは別にして、あくまでも観光客の視点で考えてもらいました。

さて、そもそも何故にケアの世界の話ではないのか?
それは狭い領域で、右のものを左に、左のものを右に動かすだけで、小さな満足感を得ているところがあるかもしれないからということです。(と言うか、そのような状態であるということも見えなくなっている)
その中では広範囲な多様的な見かた捉え方をするという力量自体が狭められてしまいます。逆に広範囲に見ると、ケアの世界に役立つヒントが沢山あるのです。
他の世界を見る中でケアの世界と結びつけてみるというのも目標の一つなのです。

では実際どのような対話がなされたでしょうか。
実質的な話は当然出てきます。やはり船酔い。逃れたくても逃れられないですし、折角ののんびりタイムも酷い時間になります。
さすがに上下左右する船をジェットコースターに乗ってるかのように荒天を楽しめるという人はいませんでした。
また、電波が届かないというのは、それが良いという人と、それは困るという人とに分かれました。
海しか見えない景色は面白くないという人がいれば、海の上だからこそ見れる朝な夕なの景色があるという人もいました。
さらにせっかく北海道に遊びに行くなら、現地でゆっくりしたいので、船の40時間はもったいないという人、逆にゆったりと過ごす時間を持つことは、それはそれでもったいない時間ではないという意見もあります。
要は、「何に時間を使うかで、見える景色も違ってくる」(千田琢哉氏)ということですし、人それぞれにどこに価値観を置くのかと言うことも違ってきます。

この対話の大切なところはここからになります。
単にフェリー旅の良し悪しの話し合いではなく、その対話の中から感じたことを話しあってもらいます。
ひとそれぞれの価値観の尊重を学ぶ機会になりますし、違う価値観の発見にも繋がるかもしれません。
例えば、スマホが必携品の人が船に乗ったら、デジタルデトックスの時間にイライラするのか、逆にスマホに奴隷になっていたのだということに気づき、開放感が味わえる時間になり、スマホ奴隷ではない時間への価値観を見出すかもしれません。
「なるほどそれはいいね。」ということもあるでしょうし、「それは困るね」なんていう発見もあるかもしれません。
発想を変えた普段は出てこない意見も出てきます。
飛行機も電車も時間を気にするけど、船はあまり気にしなくていいねという時間の捉え方も変わってくるかもしれません。
逆に少々高くても、高速化された乗り物に乗ることは、時間をお金で買うという意味にもなります。このことによって生まれる時間を、別のことに活用することもできます。
要はどのように時間を使うかによって、見かた捉え方も変わってくるでしょうし、どちらがいい悪いではなく、見かた捉え方を代えれば、価値のあるものが一杯見えてくるかもしれないということです。
しかしながら、ケアの世界で考えるなら、バタバタとルーティンワークに追われていると、そこに価値は見いだせず、見えないものだらけになるかもしれません。
時間の流れ自体は世界中どこへ行っても同じです。
飛行機に乗っていようと、船に乗っていようと同じ時間が流れていきます。船に乗ったからと言って、時間がゆっくり進むわけではありません。
要は時間をどのように活用するかは私たち自身に委ねられているということなのです。
次回はこの太平洋フェリーの話を元に、ケアの世界、特に施設生活について考えていきたいと思います。
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