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【ギフトシネマ会員インタビューvol.12】武藤弘明さま

途上国の子ども達に映画を届けるNPO法人World Theater Project(以下、WTP)は、団体発足以来、多くの方々に支えられ活動を続けてまいりました。どのような方達がどのような想いで支えてくださっているのか。 活動を支えてくださる大きな存在である「ギフトシネマ会員」の皆さまに、お話を伺っていければと思います。
第12回目のゲストは、武藤弘明(むとう・ひろあき)さん。ギフトシネマ会員さまとしてご支援してくださるだけでなく、素敵なデザインでWTPの名刺やチラシなどでもご協力くださっている武藤さん。いつもユーモアたっぷりでWTPメンバーを笑わせてくださる武藤さんですが、インタビューでお聞きできたのはユーモアさの中に秘めた、あたたかな想いでした。

(聞き手:菊地夏美、取材日:2023年11月28日)

カンボジアで体験した忘れられないシーン。

―本日はインタビューにご協力くださりありがとうございます。
まずは武藤さんとWTPのはじめての出会いについてお聞きしたいです。

はじめは、私がちょうど独立した8年前くらいに、WTPの「ビブリオバトル」という映画イベントについての記事をYahoo!か何かで見たんです。独立するタイミングだったこともあり、「私も何かやれることはないかな」と思って、WTPのウェブサイトからダイレクトに連絡をしました。別件で東京へ行く際に「お話を聞かせてください」という感じでお会いしたのがきっかけでした。
その時に、自分が何に興味を持ったのかというのは明確ではないのですが、とてもWTPの活動が引っかかったんです。今考えてみると、カンボジアで活動していることが理由だったように思います。

20年程前に友人とカンボジアに旅行に行き、現地で原付を借りて移動していて、カゴには友人の帽子を入れていました。ある町で小学生くらいの子、2人組が話しかけてきて、おもむろに、カゴの中の帽子をパっと奪って行ったんです。私は帽子を奪われた友人と、奪っていった子どもを客観的な感じで遠巻きに見ていました。

その場面を、今でも覚えているのですが、走っていく子どもたちを友人が追いかけて、「返して」と言ったら、帽子をふわーと投げ返してきて、その帽子が放物線を描いて友人のところに届いたんです。その時に「映画みたい!」と思ったんです。
その映画のようなワンシーンを現実にみているというのがすごく印象的でした。

その子どもたちは、おそらく、ストリートチルドレンだったと思います。その後で、町の片隅でシンナーを吸っている姿を見ました。もしかすると、その子たちは映画を観たことがないかもしれないし、映画館にも行ったことががないかもしれないと思ったんです。

私は、帽子が放物線を描く瞬間を「映画みたい!」と捉えましたが、映画を観る機会がなかったら、それが美しい場面でも「まるで、映画みたい!」とは思わないじゃないですか。
きっと、そのシーンを同じようには捉えていない・・・。
もしかしたら、人生の瞬間を「映画みたい!」と感じられる気持ちも何かとても意義のあることかもしれないと思いました。

あのワンシーンが忘れられないってことがあったりするじゃないですか。それが何をもたらすかはわからないけど、もしも、それを持っているのと持っていないとでちょっと違うのかもしれないと思います。
だから、WTPの映画を届けるという活動が、なんか感覚的に面白いと感じたのかもしれません。

―素敵なエピソード・・・(泣)

代表の教来石さんの本も読みました。現地で映画を届けるスタッフのことを”映画配達人”って名づける発想が面白いな、とか。

本の中で、とても印象に残っているのが、途上国の農村部の子どもたちに将来の夢を聞くと、お医者さんとか、教師になりたいとかで、なりたいものの選択肢が限られている。身近な大人の職業が、将来の夢であるということは、もしかしたら、色々な選択肢を知る機会が限られていることにつながっているのかもしれない。

そういうことって映画の役割というか、映画にはそういう価値があるんだなと思ったんです。共感できることがたくさんあり、本当に面白い活動だなと思いました。

芸術的な活動を一種のコミュニケーションに。

―ありがとうございます。
武藤さんには、会員としてご寄付いただくに留まらず、WTPの名刺やチラシのデザインも無償でつくっていただいて感謝しきれません(涙)
どんなお仕事をされているのかは存じ上げているつもりなのですが、改めてお仕事はなにをされていらっしゃるのでしょうか。

そうですね、仕事はこれをやっていますとは言いにくくて、やれることをやっているといった感じなのですが、主にはチラシやパンフレットなどのグラフィックデザインと、プロモーション関係などの動画制作をやっています。

武藤さんにデザインいただいたWTPの名刺

あとは、6年程前から岐阜県の障がい者芸術文化支援センターというところで、美術や音楽、写真など、表現活動を支援する仕事をしています。

―武藤さんの知らない一面でした!(驚)そんな活動もされていらっしゃるんですね!具体的にはどんなことをされているんですか?

美術とか芸術的な何かを表現するものは、障がいのあるなしに関わらず、それだけで生活をしていくのはなかなか難しいですよね。でも、例えばですけど、誰かに手紙を書くように絵を描いている方が見えますが、表現するということは、一種のコミュニケーションツールになり得るものだと思っています。
気持ちの整理がつかない方が、絵を描くことで、気持ちが落ち着くとか、言葉では、うまく伝えられない場合に、絵や色などで気落ちを伝えるとか。

支援センターの事業としては、オープンアトリエといって、画材や紙などを用意して「ここに来れば自由に創作できますよ」というような創作の場を提供したり、絵やダンス、音楽など発表の場がなかなかない方のために、展覧会やコンサートなどの発表や鑑賞の場を用意したりもしています。映画の上映もやりました。ごろごろ寝転がって観られるスペースをつくって、鑑賞される方へ、途中で騒いで歩き回ってしまう子どももいるかもしれないけど、みんな大目にみてね、みたいなアナウンスをして上映したりとか。
その時々にくる相談をベースに、何ができるかを考えて、色々と実践しています。

―素敵な活動です。武藤さんはどんな経緯でその活動を?

私は元々、福祉などに関わったりしていたわけではなく、福祉施設についても、障がいのことについても、何も知らなかったんですが、岐阜県で支援センターが立ち上がる時に「ロゴマーク」やパンフレットをつくらせてもらい、そのときに「ちょうど人が足りないから」ということで声をかけてもらったのがきっかけになり、関わらせていただくようになりました。

どんな方にも映画上映を。

―そうだったんですね・・・!

実は、WTPの活動とも関連して何かできることないかと考えているんです。

重度の心身障害をお持ちの方の中には、映画館で映画を観るということが、現状ではなかなかハードルがある側面を感じています。身体的なケアの必要性であったり、他のお客さんの目(理解)であったり。

最近知った活動で、映画とは少し違うのですが、長野県の方で出張で病院や、個人宅にプラネタリウムを持って行って観てもらうという活動している方が見えたんです。実際に病院にテントのようなドームを設置して上映したりしているらしくて、すごく面白いと思いました。
ドーム型のスクリーンなら、座ってみることが難しい方も子どもたちも、ゴロンと寝転がって観る事ができる。それを映画上映に活かしたりできないかなと思っています。

―すごいです!面白いですね!ぜひ実現させたいですね。
それでは最後に、武藤さんの今の夢・目標はなんでしょうか。

こ、これ、、難しいですね。

あ、でも映画を撮りたいです。ずっとこれは思っていて。
過去に映画らしきものをつくったこともあるのですが、ちゃんと自分の思い描くような形で撮りたいなと思っています。
映画を撮りたいと思って東京で暮らしていた時期もあって、ずっと映画を撮りたいとは思っているんです。それはずっとある想いですね。

―ずっと抱えている想いがあるって素敵です!
あっという間に時間がきてしまいました。本日はご協力ありがとうございました。


HIROAKI MUTOU
屋号は「boum」。これは、映画「トト・ザ・ヒーロー」の挿入曲からとったもの。
グラフィックを中心としたデザインやプロモーション映像等を中心に企画・制作している。
好きな映画監督は、是枝裕和、岩井俊二、イ・チャンドン、チャン・イーモウ、パトリス・ルコントなど。
(写真:金華山を背景にした一枚。 信長が天下統一を目指した拠点の山城)



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