感想:テヘランのすてきな女
タイトル:テヘランのすてきな女
作者: 金井真紀
晶文社
筆者が2023年にイランに渡り行ったインタビューと、その旅のスケッチがまとまった本。最初に目に入ったのは、装丁だった。
本屋で並ぶ本の中にある、すこし正方形に近い小さめサイズ、薄い水色のカバーに女性たちが力強く微笑んでいる。なぜかその装丁に惹かれて、手にしていた。
二人の通訳との出会いから始まり、筆者は生まれた年、生き方、仕事も違う様々な人々と出会い話をしながら彼らを知り、イランを知っていく。
イランのことはニュースで知る程度である自分にとっても、いろんな人が暮らしているということを改めて本書で気づくものだった。もちろんそれは筆者が出会った人たちだけであるので、全体ではない。それでも彼らの話す内容は、日々の生活や仕事にこだわりを持って生きてきたことを感じさせる。それは過去のことを語っていても、過去のせいにはしておらず、今を楽しみ、自分を手放そうとしていないからだ。
この読後感はジェーン・スー著「闘いの庭 咲く女」の読後感に近い。これも自分の人生を手放さない人たちのインタビューエッセイである。
決して楽しいこと軽やかなだけではない、でも苦いだけでもない。自分を捨てずに日々を暮らすタイトル通りすてきな人々と出会う本であった。