Netflix『極悪女王』 命懸けのエンターテイメント(2024/11/22)#131
まさかプロレスドラマの感想を書くことになろうとは。
幼いころ父親に連れられ、隣町の体育館に男子プロレスを観に行きました。
覆面レスラーやガタイの良いレスラーたちが、場外乱闘を繰り広げ、パイプ椅子を投げ合い戦っていた怖い思い出。
なんでこんなことするんだろう。。
さらには、なんでこんな怖いものをわざわざ観に行くのだろう。。。
当時の私には到底理解できない光景でした。
時を経て約30年。
プロレスのエンタメとしての面白さと、そこに人生をかけた女の子たちの熱い戦いに心湧きました。
プロレスはエンタメである
このドラマを観るまでプロレスがショー要素を多く含むことを知りませんでした。
当人たちはもちろん、体を鍛え上げたくさんの練習に汗と涙と血を流してきています。
ですが、面白い対戦を設定し、どちらを勝たせたほうが観客がより盛り上がるのか、つまりお金がより落ちるのはどちらなのかを常に考えて試合運びが行われていました。
そのため、対立構造がよく用いられます。
主役のゆりやんレトリィバァさん演じる「ダンプ松本」は悪。
唐田えりかさん演じる「長与千種」、剛力彩芽さん演じる「ライオネス飛鳥」のコンビ「クラッシュギャルズ」は正義。
そういった対立構造を意図的に作ることで、テレビで放映してもらうための盛り上げ材料にしていたそうです。
また、試合は真剣勝負で行われるものの、「ブック」と呼ばれる台本もあったそう(当ドラマではこう呼ばれているものの、実際は「アングル」と呼ばれていたとかいないとか)。
つまり、プロレスは最高のエンタメショーであったわけです。
その人気から、クラッシュギャルズは歌手デビューしたりテレビドラマに出演したりするようになり、まさに国民的人気プロレスラーとして活躍。
本気で純粋な競技としてプロレスをしたいライオネス飛鳥と、芸能活動も含めてプロレスと言い切る長与千種の意見の食い違いも面白いです。
時代に忠実にあるならば、長与千種の言い分が正しかったと言えるでしょう。
女性ファンも多かった
ドラマを観始めてすぐ、女の子同士が水着姿で痛めつけ合い、戦う姿に嫌悪感を抱きました。
あ~女子プロレスは男性客向けのものだったのか。と残念な気持ちになったのもつかの間、意外にも女の子のファンが多いという描写には驚きました。
強い女子に憧れる女子。
押しのベビーフェイス(正義)がヒール(悪)にやられて、心が掻き立てられ応援に熱が入る…。
そういったわかりやすいショーだったのですね。
注目は長与千種役の唐田えりかさん
このドラマで初めて唐田さんの演技を観ました。
気迫を感じる素晴らしい演技でした…!
このドラマに背水の陣で臨んでいる様子が表情や演技から、一挙手一投足から伝わってきます。
ダンプ松本のドラマなのですが、同時に長与千種がいかにスター的なプロレスラーだったかが伝わってきます。
自然と観ているこちらが長与千種のファンになってしまうほど、役に憑依していたと思います。
さいごに
ダンプ松本はリングの上だけでなく、悔しさや悲しみや憎しみを心に抱えながら、日ごろからヒールに徹していた最高のエンターテイナー。
プロレスはエンタメだと知れば、分かったうえで熱狂するのもわかる気がします。
世の中、エンタメだと思えば楽しめる物は他にもあると思います。
本来の姿、思想は誰にも分らない。
本人たちは本気の様相でエンターテイナーを演じているだけかもしれない。