【ショートショート】怠け者の成れの果て
この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。
ある夜、静まり返ったリビングで、ポチが突然しゃべりだした。
「なあ、知ってるか?オレ、もともとは人間だったんだ」
「…は?お前、犬だろ?」
飼い主はテレビを見たまま首をかしげた。
「それに、しゃべれるのか?」
「そう。元々はね。でもね、人間が怠けすぎると、こうなるんだ」
ポチは静かに笑った。
「ほら、お前も最近ゴロゴロしてばかりだろ?」
飼い主は笑いながらも、背筋に薄ら寒さを感じた。
「いや、そんなバカな。オレが犬になるわけないし」
「さあ、どうだろうね」
ポチは肩をすくめた。
「明日の朝、鏡を見て確認してごらんよ」
翌朝、飼い主が目を覚ますと、視点が異様に低かった。
毛むくじゃらの前足が目の前にあり、全身がふわふわしている。
「…嘘だろ?」
その時、部屋の奥から歩いてきたのは、昨日のポチの声そっくりの人間だった。
きちんとスーツを着こなし、まるでどこかの会社員のように見える。
「おはよう、ポチ。今日から君が僕のペットだ」
元飼い主は混乱しながらも尋ねた。
「お前、ポチだったのか?」
男はにっこりと笑った。
「ああ、僕は元々、このシステムを管理する役なんだ。怠け者が増えないように、見張っているだけさ。これからは君がその役を果たす番だよ」
部屋に薄暗い光が差し込む中、元ポチの男は最後にこう告げた。
「さあ、怠けることなく、しっかり働いてもらうからね。ペットも人間も、全員がね」
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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