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【ショートショート】完璧な治療法
この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。
新型インフルエンザが猛威を振るう中、政府はついに秘密兵器を発表した。
その名も「パーフェクト・ソリューション」
町の人々は、その頼もしげな名前に希望を抱いた。
「感染の疑いがあれば即隔離、徹底治療する」という説明があり、市民たちは「これで安心だ」と胸をなでおろした。
ナカムラは、家族とともにこの対策が町を救ってくれるだろうと信じていた。
しかし、その安心感はすぐに揺らぐことになった。
ある日、近所の男が軽く咳をしたのを見たナカムラの妻が「念のために」と通報した。
ナカムラは「ただの風邪に違いない」と楽観的だったが、特別チームがすぐに現れ、その男を「治療施設」へと連行していった。
男は「本当にただの風邪だ!」と必死に訴えたが、その声は無視された。
数日後、男が戻ってきた。
…いや、戻ってきたのは男のように見える“何か”だった。
ナカムラはすぐに違和感を覚えた。
表情も話し方もどこかぎこちない。
それでも、男の家族は「本当に治ったの?」と心配そうに尋ねた。
男は不気味な笑みを浮かべ
「もちろん。これが政府のパーフェクトな治療だよ」と答えた。
その言葉を聞いた瞬間、ナカムラは寒気を感じた。
「パーフェクト・ソリューション」の真の意味を理解した時には、すでに遅かった。
男の家族は次々に「治療施設」へと連れて行かれ、二度と戻ってこなかった。
そして、同じ運命がナカムラとその家族にも迫っていた。
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最後まで読んで頂きありがとうございました。
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