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一枚の絵を切り取ったように
透明なガラスを隔てた先の
たくさんの色が
額縁にひっそりと飾られている

濃淡をつけながら
ある刻には暗く
ある刻には明るく
世界を映し出す

その絵は
誰かの生活の中に溶け込み
様々な想いを描いている
まるで世界全体が
透明な美術館になったような
そんな感覚

誰かがその絵に触れたくて
手を差し伸べ
その奥にあるものを掴もうとしている
でも、あるのは
ひんやりとした固いガラスで
募らせる想いの欠片が
指先からだんだんと
重なり溶けてゆく

そんなとき
誰かは
どんな表情で
どんな想いで
向こうの景色を見つめているのか
ほのかな光と影が教えてくれる

また
誰かのいる世界も
ほかの「誰か」の絵の一部となって
景色を彩る

そうして
1枚のガラスが引いている境界線は
鏡のように
2つの世界を映し出す

誰かの(と)
横を通り過ぎてゆく人
となりで眠っている人
言葉を交わしている人
いる場所
いる時間
何気なく進んでいく刻の
すべてに物語がある

その物語は
誰かにとって
かけがえのないものであり
なくてはならない瞬間

そして
誰かのいる世界は
見ている景色は
紡ぐ物語は
曇天なのか快晴なのか
はたまた
豪雨なのか
その誰かにしか
分からないからこそ面白い

そんな誰かの想いとともに
今日の世界も
明日の世界も
ひとつひとつの織り成す物語が
ありふれた絵の中で
刻々と進んでゆく

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