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【小説】おとぎ話の世界で君ともう一度#10

第二幕 靴を落とした少女

6:エル

そういって、私は、このお屋敷の使用人になったのだった。

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そして、私がこのお屋敷で働き始めた日から数日。
私は、毎日のように働いた。
このお屋敷で使用人として働くことが決まったとき、2人の娘はとてもいやそうな顔をして母親に懇願していた。

娘1「お母様!どうなさったのですか?!どこか体調がすぐれないのですか?!」

継母「いいえ。わたくしは、体調など崩してはいませんよ。」

娘1「では!!どうしてこんな!!こんなシンデレラと似たネズミを使用人にするだなんてこと!!」

娘2「そうですよ。お母様!!こんな汚いネズミ2匹もこの家に住まわせては、この家が腐り果ててしまいますわ!!」

継母「いいですか2人とも。わたくしが決めたことです。2人ともわたくしが決めたことに口出しするのですか。それに。。。。」

と言って、継母は2人の娘にこそこそと何かを耳打ちしたようだった。

すると、2人の娘はにやりと笑い、急におとなしくなり、継母に懇願することは一切なくなったのだった。

そして、私は、掃除全般を任され、エラはというと、掃除を任されなくなった代わりに虐げられることが増えていった。でも、エラは、前より明るくなった気がした。なぜ、そんなに虐げられることが増えても、私を責めないのかエラに聞いてみたことがある。

「ねぇ。エラ。エラは、私がこの家に住むようになってから、お姉さんたちに意地悪されることが増えたじゃない?それなのになんで、私を責めないの??」

「え??私が、このお屋敷で暮らし始めてから今が一番楽しい。りうが居てくれる。今は、それが私が楽しいと思える一番の理由だよ。」

そういって、エラは今まで見た中での一番の笑顔を咲かせた。困ったように笑う癖は相変わらずだったけど。

私は、自分がこの世界に来たせいで、エラを傷つけてしまっているのかもしれないと思っていた。
そんな私に、エラは、笑顔を向けたのである。
私は、どうかこのままエラがずっと笑顔でいられるように、とそう願わずにはいられなかった。

そして私は、エラと一緒になって、丸まって寝たり、エラと一緒に話をしたりした。私の寝床は「あなたの寝室は、シンデレラと一緒のところでいいわね。」と継母に言われ、エラと一緒の部屋になった。
そう、あのぼろぼろの屋根裏部屋だ。

私は、このお屋敷の使用人になったからというものの、朝から晩まで働き詰めでぐったりと疲れて、家事が終わったらすぐに寝てしまっていた。
そんなある夜、私は、なぜかなかなか眠りにつけなかった。
エラは、隣で寝ている。
そして、ボーンと0時の鐘が鳴り響いた。
すると、この世界で初めて夜を越した日のようにエラが突如として、起き上った。
私は、あれは夢じゃなかったんだと恐怖で目をつむり眠ったふりをした。

そして、彼女がまた屋根裏部屋にある小さな窓を開け、白い鳥たちがそこに留まった。

白い鳥1「エル様。エル様。」

「久しぶりね。この娘(こ)が花壇の水やりを任されたおかげで、エラと会えることが少なくなってしまったわね。あなたたちは元気にしていたかしら?」

白い鳥2「はい。僕らは元気にしていましたよ。」

白い鳥1「エル様はいつも通りで何よりでございます。そして、エル様。
あと少しの辛抱でございますよ。」

「そうね。もう少しだわ。もう少しであの舞踏会が始まって。。。。」

そう彼女は言って、不気味にクスクスと笑い始めた。
私は、動揺してしまいカサッと布団のこする音を立ててしまった。

すると、2羽の白い鳥が

白い鳥2「エル様。あの娘。起きているかもしれません。」

そして、彼女は私にこう言った。

「あなた。起きているの?」

私はそっと目を開けた。

「お、お、起きています」

私は、彼女がよほど怖かったのか、どもりつつ敬語になってしまった。
そして、私は、ベットから足を起き上り、ベットから足を下ろした。

「そう。あなた、名前は?」

「りうです」

「りう。。。。ね」

「私とこの姿で会うのは初めてね。私はエルよ。よろしく。」

「こ、この姿ということは、あなたはエラではないの?」

「そうよ。私はエラの持つ2つ目の顔よ。そうね。。。。。何と言ったらいいかしら。あなたの世界で言うと2重人格っていうのかしらね。」

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