教師のリアル 〜本気の就職相談〜 5
(2.教師の仕事 担任編の続きの続きです)
○学習指導:授業作りにはマニュアルがある
勤務時間のうち、最も多くの時間を費やす「授業」。免許を取るために実習を経験したり、自分が小学校の時に受けた授業の記憶を辿ったりと、アプローチの仕方は様々にありますが、最も安心で確実なのは「教科書会社が作ったマニュアルに従うこと」です。教科書には通称「赤刷り」というマニュアル本がついています。教科書と同じレイアウトで、どこに気をつけて指導したらいいか、どんな流れで1時間を授業するかが赤い文字で記入されているものです。子どもへの質問(これを「発問」と言います)も記載されているので、最初はこのマニュアル通りに授業するのがセオリーです。ひょっとしたら、子どもの時に先生が持っている赤刷りを見て、「答えが載ってる!」と思った方もいるかもしれませんね。答えが載っているのは決してズルをするためではなく、正しい解答を瞬時に判断するためです。最近では黒板にどのようなことを書いたらいいかを解説した「板書編」というマニュアルをつける出版社も出てきました。個人的には、全社こうした流れになればいいと思っています。「どこで授業を受けても、一定のレベルが保証される」のが、公教育の一側面でもあると考えるからです。
ただ、マニュアルがあるとはいえ、その通り進むかというと現実は違います。実際には子どもたちがどう考え、どう答えに辿り着くかは、クラスの個性が出てくるものです。(これを、教育界では「児童の実態」と言います。)生徒指導のことを先に書きましたが、日頃の先生とのコミュニケーションも大きく関わります。先生と子どもたちの関係がうまくいっていないのに、授業がうまくいく、なんてことはレアケースと言っていいでしょう。
生徒指導と学習指導、この二つは(小学校教育においては)相互補完の関係にあるというのが私の実感です。どちらかがうまくいけば、もう一方も良い影響が出てきますし、その逆も然りです。だから、若い先生には、「子どもといっぱい関わってごらん。授業はうまくいかなくても、(最終的には)何とかなるよ。」と話しています。
○校務分掌:自分を活かせる、もう一つの場
今までは主に子どもと直接関わる仕事を書いてきましたが、校務分掌は、学校全体に関わる仕事です。これも地方によって様々な呼び名があると思いますが、中身は大きく違わないと思います。主なものを以下に挙げていきます。担任、担任外問わず関わるものになりますので、就職された暁には、ぜひ「これがやりたいです」というものが見つかるといいですね。
教務系(主に在籍管理やスケジュール調整に関わる仕事):転出入や教科書の配布、自治体からの調査依頼などを所管する仕事です。教頭先生や副校長、教務主任といった役割の人が兼ねることもあります。また、教材発注の窓口となる場合もあります。現在の私の仕事です。(詳しくは「3.教師の仕事 担任外編」で)
研究系(主に校内研修を担当する仕事):教師のスキルアップを目指すのがこの仕事です。「子どもたちの学ぶ力をどのようにつけていくか」という学校研究は、どの職場にもあります。子どもの学力を伸ばすために、「こんな授業を目指します」と校内の先生に授業を見せることもあります。
学級活動系(生徒指導や校内生活を担当する仕事):略して「学活」とも呼ばれます。校内生活、校外生活のきまりを作成したり、あいさつ運動を展開したりと、明るい学校を作るための仕事です。図書室の整備や、保健室の管理(保健の先生はここに所属することが多いです)、校庭や体育館の遊び割り当てなどを作るのもここです。
児童活動系(委員会活動やクラブ活動を担当する仕事):中学校の生徒会活動にも通じる、子どもたちが自主的に活動できる仕組みを作る部門です。多くは委員会とクラブに分かれますが、学校によっては「縦割り活動」といって、医学年交流の場を設けている場合があり、その活動はこの部門が所管することもあります。
行事系(運動会や卒業式など、行事を企画立案する仕事):前述の教務系と連携して、1年間にどんな行事をどのように実施していくかを考える部門です。学校全体に直結するので仕事としてはやや重たい印象ですが、前年度をベースにして今年はどうする、と考えていくことが多いようです。ただ、新型コロナウィルス感染症が蔓延したときなどは、対応が大変でした。
機器管理系(視聴覚機器や机、椅子などを管理する仕事):名前をつけるのに少し悩みましたが、学校によっては「視聴覚」とか「事務管理」とかになっていたり、事務官が一手に引き受けていたりするかもしれません。先ごろ導入された一人一台端末の管理や、教室用デジカメ、実物投影機など、学習に必要な電子機器のルール作りや管理を担当します。そのほか、児童の椅子や机の数の管理をしている場合もあります。
さて、以上で「教師の仕事 担任編」は終わりです。なるべく概論になるようにと思いましたが、ざっくりとでも仕事内容が伝わっていれば幸いです。次回は、「担任外の仕事」について書いていきます。
2023.8.9 あーる
0.はじめに
1.教師のお金
2.教師の仕事 担任編 ←今ここ
3.教師の仕事 担任外編
4.教師の仕事以外
5.おわりに