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赤ひげ(ドクター)つれづれ草 ⑧    ~地域共生全国ネット福岡大会に参加して~          亀井 克典


  2024.11.3、4の両日、私が共同代表を務める「NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク」全国大会が福岡で開催され、生寿会のスタッフとともに参加しました。昨年9月大会長として「愛と平和がつくる地域共生社会~ともに暮らし、ともに癒し、ともに生きる」をテーマに名古屋大会を開催してから早1年以上が過ぎました。名古屋大会では、多様性を認め合い、ともに生きる社会を築く前提として、人類愛を高めあい、限りある地球の資源や環境を守り、戦争のない平和な社会をめざすことの大切さを訴え、参加いただいた多くの皆様と2日間熱い議論を交わすことができました。
 残念ながらその後の世界は悪い方に転がり続けています。ウクライナだけでなく中東ガザ地区などで戦火は拡大し、核戦争の可能性がリアルに語られ、差別、分断、経済格差はますます進み、環境破壊、異常気象の進行はだれの目にも明らかとなっています。
 福岡大会の日程は台風が来ない11月の連休をわざわざ選んでリスク回避したのですが、まさかの台風21号襲来で大会前日の11月2日土曜日は新幹線が大混乱となり、2日に福岡行きの新幹線に乗車した私やスタッフは大変な目にあいました。結局福岡まで8時間以上かかってたどり着きましたが、環境危機の深刻さを身をもって体験しました。
 今回の福岡大会は「みんなで考える地域共生」をテーマに、日本各地での様々な草の根の取り組みなどが紹介され、コンパクトですが多彩で充実したプログラムで楽しい大会でしたが、開会にあたっての共同代表としてのあいさつで、「このままでは地域共生を語る前に地球が壊れてしまう」と強い危機感を参加者の皆様に訴えました。
~NGOピースボートの活動~
 福岡大会では、国際交流NGOピースボート共同代表の畠山澄子さんの特別講演「絶望と希望が隣り合わせのこの世界で:国境を越えてつながり、行動する」の座長を務めさせていただきました。
 畠山さんは埼玉県出身で1989年生まれですから私の娘より一つ下の若き平和運動のリーダーの一人です。17歳の時単身イタリアに留学し、80か国から集まった200人の生徒と共同生活を送る中で、「戦争を知らない国」出身の学生が企画した「戦争を体験している学生の証言を聞く会」で同世代の戦争体験者の学生の言葉に衝撃を受けたといいます。
 イタリアの学校を卒業後、ピースボート世界一周の旅の通訳ボランティアとして乗船しましたが、その時のクルーズから今も続いているのが、被爆者の方々と共に船旅を通じて世界各地に核兵器廃絶へのメッセージを届ける「ヒバクシャ地球一周:証言の航海」通称「おりづるプロジェクト」です。被爆体験者と4か月間地球一周の船旅を共にされ、核兵器廃絶に向けたヒバクシャの強い思いと行動に感銘を受け、自分もその一助になりたいと心に決めたそうです。ケンブリッジ大学、ペンシルベニア大学で学んだあと、ピースボートのスタッフとなり、現在は共同代表を務め、TBSサンデーモーニングのコメンテーターなどでもご活躍です。ちょうど直前に日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)にノーベル平和賞が授与されるというニュースが報道されたばかりであり、彼女は「本当にうれしい。高齢の被爆者の方々は、暑い日も、寒い日も自ら街頭に立ち続け、署名の呼びかけ、核兵器廃絶への訴えを続けてこられた。こうした地道な活動の積み重ねが世界の世論を動かし、広島、長崎以降いまだに核兵器が使われていないという抑止力につながっている。この思いを私たち若い世代も引き継いでいきたい」と話されていました。
 現在ピースボートでは、中東ガザで繰り返されている市民への大量殺戮に抗議して、船が世界各地の寄港地に着くたびに “Stop Killing Gaza(ガザを殺すな)” の横断幕を船体に掲げ、「ガザを見捨てない!野菜を届けようキャンペーン」を開始し、深刻な野菜不足に悩まされているガザ地区に野菜セットを届けるための寄付・募金活動を展開しています。
~第3次世界大戦は始まっているのか~
 私は「戦争を知らない子供たち」の世代ですが、両親、祖父母、おじ、おば、学校の先生は皆戦争体験者で、様々な体験をいつも聞かされていました。大学生の時、法事の際に、戦争体験者の親族達に「太平洋戦争が始まる直前の昭和14~5年ころ、名古屋の街はどんな様子だった?」と聞いたことがあります。皆口をそろえて「まあ普通だった。物資は少なくなって、きなくさい雰囲気になっていたけど、休みの日には松坂屋百貨店に行って、広小路をぶらぶらしていた。まさか5~6年後に街が焼け野原になって、お城まで燃えるとは思いもよらなかった」と言っていました。市民が日常生活に追われ、気づかないうちに戦争は忍び寄ってきます。
   後世歴史を振り返った時「2024年はすでに第3次世界大戦が始まった年だった」と言われるのではないかと私は危惧しています。そうならないためにも、若い世代とともに平和を願う草の根の運動を、市民一人ひとりがあきらめずに続けていくしかありません。

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