赤キップ免停~暴走の代償~

 大昔にスピード違反をしまして大変だった話を。尚、今のルールと違うよ、昔でもそんなことしてなかったぞという感想を持たれる方がおられるかもしれませんが、人の記憶のいい加減さも楽しんでいただければ良いかと。

 現場が夜始まりだったかで会社集合時間が遅かった。いつも朝に出勤するときは細い道裏道をせこせこ走ってたけど大きい道でも空いてる。それでまあ246ですよ。鉄道の下をくぐる長い直線がありましてね。VTEC車なんて乗ってると実力を試したくなる。

 エンジンルームを覗いたときにVTECのスプールバルブからオイルが漏れてた。このクルマちゃんと高回転用カムに切り替わってるのかなと疑問に思ってね。黒ヘッドB18Cだから可変吸気ポートの切り替わりもあってよく分かりにくい。

 試すチャンスだと思ってしまった。まわりに他のクルマなんて居なくて目の前に一直線。きっちり8000回転までまわしてあっというまにもう5速。いいクルマ買ったなと改めて満足する。90キロちょいで走っていた時に何かが居た。ネズミ取りさんだった…。

 誘導されて測られた速度を言われる。それでこの道60キロ制限だから30ちょいオーバーで免停ねとショッキングなひと言。ここで免許証取り上げられて(だったと思う)赤キップを渡されこれが今日から免許証の代わりねと言われる。これが後で問題に。
 今後の手続きを説明されて免停だけど講習受ければ当日だけの免停で済むよとか六角橋に行く必要があると聞く。
 罰金いくらになりますかと聞くとここでは言えないけど行った人は4~5万だったらしいよと、パチンコ屋であっちの方いくと換金出来るらしいけど分からんけどみたいな言い方。

 財布に赤キップ押し込んで出社。今だったらこんなおいしいネタみんなに喋りまくるけど、当時はまだ二社目に入って日が浅いのでこれは隠そうと思ってしまった。振休取る日に六角橋行って免許証回収すればバレないしわざわざ言うこと無いと。

 現場に行くと綺麗な最先端のオフィスビル。セキュリティも万全。そう嫌な予感。守衛さんに免許証見せないと入れないのだ!これはまずい。ここでも赤キップを隠そうとした。スピード違反するようなモラルの低い業者を中に入れたくないと思われるだろうと。

 これがもし今だったらすいませんね~赤キップもらっちゃいましてこれが免許証なんです~この資格者証写真と名前合ってるでしょ?これでいいですよね?と喋って乗り切ると思う。それができなかった。

 今持ってきてないんですで通してたら当然入れませんとなって、入るなら発注者(元請けの上)のご担当者が許可を出さないダメだと。で、このために別の場所から来てくださることになってしまった。

 広いロビーの片隅で一人待つことなる。当時はスマホなんて無いし携帯に暇潰し出来るアプリなんて入ってない。適当に手帳でも開いて見てるフリしてればいいのにずっと壁見てた。それをさっきの守衛さんに見られてしまって不憫に思われて雑誌を持ってきてくださった。こんなヤツの為に優しくしてくれなくてもいいのにと恐縮する。

 それほど待たずにご担当者が来られてすいませんお待たせして融通効かなくてご免なさいと言われる。さすが大会社の一流社員は違いますね。謝り倒して中に入り一緒に来てた先輩と合流する。そこで初めて実は免停で免許証が…と告白しそういうことか!とびっくりされる。

 帰社すると当然課長にも伝わっていて説明し、すいませんでしたと頭を下げた。前の会社のように激昂して怒鳴り付けるような人が居ない会社だ。まあ、普段笑ってる私のこの世の終わりみたいな表情で察したのか、入館で免許証要るって伝えてなかったもんねぇと言われてしまった。

 上司にもバレたので堂々と振休の予定をホワイトボードに書く。六角橋って何処だ?六角家近いならついでに行きたいなとか地図見てたら若いのが言う。振休取るなんて珍しいですね、地図なんか見ちゃっていいとこ行くんですか?と。完全にエロ目的だと決めつけた様子で言ってくる。二社目でも順当にエロキャラを築けている。しかし地図見てるだけで悶々としてるように見られるのは行き過ぎだな。

 そしてついに六角橋橋来ましたよ。六角橋の中での手続きはもう順番があやふや。
 講習は当然受けた。これは罰金と別に結構な金取られた。シミュレーターの実技もやった。ウイニングランみたいなポリゴンで覚えているのか3Dが妙にリアルに見える感じだった。加速したとき減速したときも謎の体感がある不思議な筐体。気持ち悪くなったら言ってくださいと説明された。確かに気持ち悪かった。

 あとは簡易裁判かな。あなたこれやりましたよねと地獄の閻魔様に言われてハイその通りですと言って速攻終了。
 罰金もこの日に宣告された記憶でなんと9万円!4~5万と言った警官よ、こういう時は高めに言うもんだぞ。
 
 晴れて免許証が戻ったが諸々で10万以上の出費が。運が悪かったとかあんな場所でネズミ取りなんてズルいぞとか思う人がほとんどかもしれないが、懲りたのでその後の運転でかなりのスピード違反に対する抑止効果が出た。もっと速いクルマに乗ってもちょっと性能試そうかなんてしなかった。スピード出しすぎて大事故起こしたら何にもならないからね。事故起こす前に止めてくれたんだよと。

 あと自分の何かあっても言わなきゃ分からないんだしこっそりリカバーすればいいという考えは非常に良くなかったと今更思う。
 結局このあと社長にもそれが目について、福知山線の事故起こした運転手と同じだよとまで言われた。あれだけの人が亡くなった事に例えられるのが衝撃的だったが、怒られたくない、ミスを表沙汰にしないで無理して取り返そうというのは危険なことだ。とくに建設業だと。

 1個ミスがバレたとしてもまわりの仲間はあなたを総スカンしたりしないよというのが分かってなかったんだろう。むしろコソコソ隠すヤツの方が好かれないよな。マイナスの部分があってもみんなで補い合えればいい。家庭的なブラック企業はこのへんの結束が固いから居心地が良かったりする…

 以上、車酔いまで表現出来る六角橋のシミュレーターは不思議という話でした。

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