火事で心配された話
最初の会社での新人時代に歌舞伎町で火事があった。今でも覚えている方が多いと思う。歳がバレるな。セクシー系のお店が入っている雑居ビルで多くの方が亡くなられた。それをテレビのニュースで見て大変だなと思って翌朝出社したらなんか先輩方の表情がいつもと違う。
「あーお前あのビル行ってなかったか良かった心配したぞ」と。それが一人や二人じゃない。会う人会う人に「生きてて良かった」と安堵される。わざと冗談で言ってる様子でもない。入社間もない自分を皆さんが心配してくれて無事を喜んでくれている。こんなにありがたい事は無い。でもちょっとまてよ。そんなにああいう店行くタイプだと思われてるの?これはまずいぞ。
当時はフレッシュマンらしく真面目でさわやかなイメージ戦略で日々過ごしていた。下ネタを言うことも無いし、それ系の話をされても乗らずに聞き役で抑えていた。奢ってくれそうになってもお腹痛いですって帰ってた。
どこかでイメージ戦略を失敗したのだろう。心当たりがあった。前に書いたnote「人は自分の顔を分かっていない」でとり上げたようにどんな顔で相手に接していたかの自覚がない。先輩方が下ネタを話されたときにもう興味津々な顔が出ていたのだろう。バレてた。
火事の件以降どうせエロいヤツと認知されてるなら隠して黙ってるの馬鹿らしいなと心境の変化が起こった。休憩中は皆さん大体サッカーの話、パチンコの話が多かったのだがこれが全く分からないので話に入れない。それでたまに下ネタの話になるときがあるが、これは喋りたいネタがあるし聞きたい事もある。話が尽きない。ちょっとずつエロ話をしていったら程なくエロキャラになれた。こうなると楽しい。
社会人の基本的なマナーで支持する政党の話や野球チームの話はタブーというのがある。応援している対象が違うとずっと平行線で対立して交わる事がないから。ところがエロ話は嗜好が違う人の話でも興味深いのでむしろ聞きたくなる。休憩時間のおしゃべりが終わり仕事に戻ってもエロ話が出来る距離感の人とは仕事がしやすい。人間関係のチート、ドーピングと言ってもいいくらいの効果がある。共通の敵の悪口、エロ話、どの道が空いてるかの話は間違いなく仲良くなる最短ルートだ。
実体験の話だけどどぎつくて人間性疑われそうだから雑誌で読んだとウソついてみるがこいつ本当にやった事言ってるなとバレてる。野暮だからそこはツッコまないで聞くみたいな謎の心理戦が楽しい。
エロ話にもレベルがあって話しているうちにどちらがより高いレベルのエロ話が出来るかバトルになることがある。普段抑えている欲望を言語化し勝利を得る。爽快。
行き着く所まで行くと何でも無いものをエロに結びつける想像力の世界が始まる。深めの泥道を歩いてるとき先輩が急にうれしそうに「ほら、この音聞いてみ!」と足踏みしたときは控えめに言って最高だと思った。その後先輩に「最近家で爪切ってても興奮して◯◯が…」という話をカマしたらゴミを見る目で「お前エロい事ばっか考えてんな!」と言われた。泥道の音で喜んでたあなたもなかなかだと思うよ!
転勤するときにそこの支店は若い人多くてみんな下ネタばっかり言ってるよという前情報を聞き楽しみにして行った。それがものすごく低レベルだった。もう単語そのものを言う事に満足してるから小学生レベル。ストーリー性も無いただの下品な言葉。ビートたけしの真似をしてる劇団ひとりの真似みたいな。あー気持ちいいなんつってバカヤロウ!まあ笑ってたけどね、いいヤツばっかりで。
ただエロキャラも良くて血気盛んな30代前半までだと思う。40、50近くになってもエロ話している人は尊敬されないし嫌悪感を抱かれる。正直グロい。自分はケンコバみたくポップに話してるつもりでも聞き手には生々しくて受け入れられない。ケンコバはプロフェッショナルだからこそ出来ているのだ。いっつもエロい事ばかり話しているそこそこの年齢の男性が独身だったりすると憐れみの目で見られる。これは避けたい。
2000年代始めに火事で心配されてエロくなった話でした。