二次会の幹事

 二次会と言っても結婚式じゃなくて会社の飲み会の二次会の話ね。

 忘年会の一次会の幹事をやらされると結構大変な思いをする。苦難を乗り越えて部長に締めの挨拶をしてもらい店員の時間オーバーだからお前ら早く出てけというプレッシャーの中、一本締めをみんなでして解放される。靴はいて店出ようとしてると「幹事さん次どこ行こう?」という予想外の声がかかる。ここからが重要。

 あなたは一次会の幹事を任命されていたので二次会の幹事をやることにはなっていない。これを本人がはっきり主張しないで「あ、どうしようかなでへへ…」なんて答えてしまうと相手にこいつ二次会の幹事もやる気なんだと思わせてしまう。はっきりと「私は一次会の幹事なんで」と言おう。「私は一次会の幹事なんで二次会の面倒はみません」まで言うと言い過ぎになる。理解してもらえればいい。私は会社で任命されて一次会の幹事として段取りしてきましたが二次会までは考えていませんでしたので夜の街に遅い時間に放りだされてもちんぷんかんぷんです、という態度が正直でいい。

 だいたい二次会はまだ飲みたい人、歌いたい人、食べたい人と様々な上にみんな酔ってるから統率がとれるわけがない。仲良しどうしで2~3グループにわかれたりするので全部の幹事なんて物理的に無理。一次会の店を出るとしばらく通りのじゃまになりながら路上でたむろするが一次会の幹事であるあなたは何もしなくてもいい。肝に銘じておきたいのは一次会の幹事の任務、店選んだり集金したり司会進行したりをやりとげたあなたを二次会の幹事をしなかったと責める人は居ないこと。休み明け月曜に呼び出されてお前なんで二次会の幹事しないんだ、あ?なんて怒られる事は無い。安心して。

 10分15分立ってるとじゃあカラオケ行きたい人~とかラーメン行く人~とか自然に言い出してバラバラになる。帰る人は付き合い悪いなんて責められる事もなく帰る。あなたは好きなルートを選べばいい。

 あなた自身が皆にどこどこ行く人~と言うのもアリ。夜の街に慣れていてみんなを引き連れるスキルがあればとてもいいことだ。知り合いの店に導いて儲けさせるのもいいだろう。ノープランで入れる店をひたすら探すのが意外と現実的。二次会での利用お断りとかいう店もあったりする。これは店の気持ち分かるね。

 なんとか入った二次会の店で皆疲れてきて話も尽きてお開きになったら次は3次会、ここは思いきって部長の行き付けに連れてってくださいよと積極的に行ってみる。スナックで大人の社交場の雰囲気を味わう。まあ普段いかつい部長がママ相手に他愛のないバカ話をしてるの聞くのは楽しい。早々にカラオケモードに入るから部長の歌を聞きつつあなたも歌える歌尽きるまで遠慮なく歌えばいい。声が出なくなってきたらそろそろ出るかとなるんでお会計。乾きもん食って歌うたい放題で3000円でいいんですか~とか言って再び夜の街へ。

 部長もあなたも電車が無いのでタクシーで帰ろうとはならず始発まで日高屋で飲み直そうとかいう展開になる。実はスナックまではもう一人居たけどそいつは歩いて帰れるので消えている。ということで部長とサシで通算4次会。

 もう10時間以上一緒にいるから偉い人という感覚が無くなってる。一緒に釣りとか行けそう。さんざん飲んでるのにビールで乾杯。瓶ビールだから酌み交わす感が出るね。二人とも元気が無いので無言。というか半分寝てる。なんか食いたかったら食いやとのお言葉を頂戴し一番安いラーメンを二人で食べる。昼飯なら5分で食ってるのを40分かけて食ってる。うまいので汁までいきかけたときふと壁の時計を見ると始発の5分前。安いお会計を済ませて店を出る。割り勘なのね。駅までゴミ臭い繁華街を歩き改札を通る。別れの挨拶をして部長は上りホームへ。下りホームから見ると部長ベンチに座って熟睡。ゆっくりお休みください。

 あなたが飲み会で酔っていたときの記憶をはっきり後でも覚えているタイプだとして、部長との距離が縮まったと思っても仕事上はちゃんと課長を通して接触するようにしよう。部長も人間だからあなたが仲良しと思われればあなたの案件の決裁が回ったときに優遇してくれるかもね。わからんけど。

 飲みのコミュニケーションが面倒と言われる風潮だけどあえて踏み込むのも面白いよという話でした。

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