おかしな講習会の話②〜大物幹部に急接近〜

 続き。
 講習会の講師が機密情報を他社の受講者にベラベラ喋るヤツだった。親会社の教育担当へ報告した。

 2時間くらいしたらメールが来た。なんと教育の部署のトップの方!

 お疲れさまです。
 今回の講習会で受講者を不安にさせるような事態が起きてしまい申し訳ございません。
 教育センター室として問題視しております。
 適正に対処いたしますのでご安心ください。
 ご連絡どうもありがとう。
             教育センター室長〇〇

 うわぁ…。どえらいビッグネームから返信もらってしまったよ…。この方は今でこそ教育の部署に収まっているが親会社の数々の部署で事業部長、本部長をつとめてきた大物。今でも各所に力を持っている政治家なのだ。
 そんな方にお前のとこの講習会イケてなかったぞゴルァとクレーム入れちまった。

 しょうがない。忘れよう。

 その後特にどうなったかとかは知らずに過ごしていたある日、この教育センター居室の内装工事が計画された。弱電を担当するのだが建築と一緒に調整する。
 超VIPのいる部屋だから不手際があってはならない。建築は邪魔をしないように全て夜間作業でやると言う。

 こちらは自分達の範疇だけちょちょっと作業出来ればいいから夜間は嫌だなと思ってた。それで端末の数や位置を確認しにお伺いしたら奥の重役室の扉が開いていて人影が見えた。教育センター室長だ!

 この時は日を改めることにして逃げようと思う反面、ここはひとつお近づきになってみるのも面白いかもと好奇心が湧いた。重役室を覗き込む。

「失礼いたします〇〇(自分の会社名)の〇〇と申しますが予定しております工事の調査で参りました」
「あーご苦労さま!いいよ!いいよ!やっちゃって」
「ありがとうございます。こちらの部屋は端末が机に1台で後は無線でしょうか」
「そうだね。〇〇さん(ウチのナンバー2)元気してる?最近顔見せないから」
「あーちょっとお恥ずかしながら不祥事がありまして…」
「知ってるよー、セクハラでしょ?まずいよね気をつけな!ガハハ!」

さてここで切り出すか…

「あのー実は私、半年くらい前にセンター長へ不躾なメールをお送りしておりまして…講習会で講師が企業秘密を…」
「あー!あの!そうだよね。後どうなったか言ってなかったな。今忙しい?」
「調査は終わりましたので問題ありません」
「じゃあ悪い、扉閉めて…座って座っていやーあなたがそうか!」
「あーはい…大変失礼を…」
「いや、まずは正直に報告をしてくれてありがとう。メールをもらってセンターで動き出してね」
「あ、そうだったんですか」
「あなた以外の参加者…ウチの子達からもメールが来た。みんなあの講師大丈夫かって心配して」
「やっぱりそうですよねぇ…」
「ただ皆自社内の事だから遠慮して何があったかハッキリしない。その点あなたが書いたアンケートは遠慮が無くあったことをストレートにぶつけていた。親会社に物申す!」
「申し訳ありません…どうかウチの幹部には内密に…」
「ガハハ!こっちは助かったんだよ?お礼を言わなきゃ」
「その後何があったんですか?」
「この部屋に問題の講師とそこの代表を呼んでヒアリングした。その席に座ってもらってね。あなたの指摘通り宿題の案内が悪かったという話をまずして」
「ほう、靴尖ってるチャラい人でした?」
「そうそう!でウチの会社としては機密事項をあなたに話した可能性があるが守秘義務の契約結んでるから問題ないはずですよねと」
「うわー…」
「はい、と言うもんだからじゃあなんでウチの社員が〇〇社(競合他社)は〇〇で〇〇を開発してるなんてみやげ話を講習会から持って帰れている?と」
「アハハ、かっちりハメに行ってますやん!」
「だろ?だから守秘義務守れないところとは契約結べない。ですから検収も出来ないと言った」
「えー、訴えられないですかね?」
「契約書を顧問弁護士に確認してもらったら守秘義務を守らない行為をした場合はウチの秘密でなくても契約不履行になると。しかも裁判なんて表沙汰にしてウチみたいな大会社相手に挑んだら他の仕事も来なくなる」
「ヒャ!」
「あの講習会の支払いは無しになって今後の契約も無しになった。結構な金額だからね。業者の精査によるグループ外キャッシュアウトの削減というテーマでセンターの誰かの手柄にしてそいつ出世させようと思ってる」
「あ、聞かなかったことにします!」
「とにかく今回はあなたが勇気を出してくれたおかげで教育センターが救われた。これが縁だから困ったことあれば頼りにしてくれよ!ガハハ!」
「早速ですが教育センター様の工事を日中にさせていただけませんか?」
「なんだそんなことか仕事熱心だ気に入った!欲がないね。好きなだけやってもらって構わないよ俺あっちこっち行って居ないから。みんなに言っとくよ」
「ありがとうございます」
「そういえば明日おたくの社長に会うよ」
「えっ!やめてくださいよ」
「ガハハ!大丈夫大丈夫。ありがとね!」

さて、思い掛けず大変な事になっていた。
さようならチャラ講師。
まだまだ続くんだよね…。

いいなと思ったら応援しよう!