レースゲームの挙動の歴史

 歴史を紐解くよ。2Dのレースゲームは挙動と言っても見たまんまなんで今回は割愛するね。
 初期の疑似3Dと呼ばれるゲームは出たときから完成されていたと言っても良く、ポリゴン3D時代になるまで長く同じような挙動だった。アーケードのポールポジション、ファミコンのF1レースが代表的。これは真っ直ぐ走っていた自車がカーブに入ると遠心力の表現で外側へ橫移動する。そのままだとコースアウトしてしまうので減速する。カーブで減速して直線で加速しての繰り返しは本物のカーレースさながらで楽しい。筐体、ゲーム機の性能が向上してオブジェクトの拡大/縮小が可能になり画面が派手になっても、基本の遠心力、橫移動、減速のシステムは変わらなかった。アウトラン、スーパーモナコGPの時代でも。
 そしてポリゴン時代に突入するとなるとバーチャレーシングですよ。これ以前にもポリゴンレースは有って2つほどタイトル浮かんでるけどポリゴンなのが売り以上ではなかったのよね。バーチャレーシングはスピード、フレームレート、サーキットの描写が段違いに進化してて世界が変わった。なにより疑似じゃない3Dだから作られた空間の中をクルマが高速で走ってる。ここはカーブだから外側に橫移動しましょうね、とは世界が違う!それで走った感覚はずっと滑るように走る。タイヤのスキール音はずっと聞こえてるしフォーミュラカーの割にグリップ走行出来てないような。高速で急カーブに入ってしまうと曲がりきれずにコースアウトする。ヘアピンカーブはしっかり減速して立ち上がりフル加速。楽しいったらありゃしない。どれだけ速度を落とせばどれだけの半径のコーナーを曲がれるか、作った人のセンスにかかっていて、当時のプログラムで物理計算をしていたのかは知らないが絶妙な味付けに仕上がっていた。ただ減速しないと曲がりきれないという2D時代からの呪縛が解かれずに続いたというのは注目するポイントかと思う。
 あ、今気付いたけどゲームの挙動文章で表現するの難しいね。大丈夫かな?
 さてポリゴン3Dはテクスチャーマッピングが付いてグラフィックがど派手に進化。セガはDAYTONA USAを発表、またしても急激な進化を遂げる。今から考えてもすごいがドリフトの挙動がゲームに取り入れられる。従来のゲームのようにしっかり減速してコーナーを曲がると遅くて敵に抜かれまくる。オーバルコースの最終コーナーがきついのだが、最適なタイミングでブレーキングしアクセルをふかしステアリングをきれば自車が斜めになり、減速しないでコーナーを曲がれる。なぜ最適ななどと具体性の無い書き方かと言うと良く分からなかったのだ。オーバルコースでこんなだからあと2つのロードコースなんてひどいもんで。パワフルなV8エンジンの自車が一回滑りだしたら煙が出るばかりで制御できない。うまい人はスイスイ走らせてるのに。ということで1994年、3Dゲーム大進化の年に挫折、ありがとうございました…
 で、DAYTONAと同時期のライバルと言えばみんな大好きリッジレーサー!プレステでハマった人も多いだろう。このゲーム挙動が傑作。今まで何回か書いた減速しないとカーブ曲がれないという疑似3D時代からの呪縛から解放してくれているのだ。普通に走っていればグリップ走行なのだが急ハンドルや急ブレーキで姿勢を乱すとDAYTONA同様ドリフト状態、スピン状態に陥る。DAYTONAのときはあらぬ方向に飛んで行ってしまったのがリッジの場合はコースに敷いてあるレールに乗るように自車が進んでいきコースアウトしないようになっているのだ!あのカーブきついなという箇所は自車を滑らせばレールに乗るからコースアウトして壁にぶつかることもない。360度回転させてもコースに沿って自車は勝手に進む。まあ、ずっと滑ってれば攻略できるとつまらないのでタイムアタックするにはグリップ走行でコーナー攻めないとねみたいなところの味付けが最高。長年のストレスとも言えるカーブ減速問題をゲーム的に解決した素晴らしさがその後も人気シリーズになった理由だろう。
 ゲーム志向のリッジの対極で出てきたのがグランツーリスモ。シミュレータの域まで来たこのゲームは物理計算をしているので本物のドライブテクニックを駆使して走らせる。今までの感覚でかっ飛ばしてコーナーへ突っ込むと曲がりきれない。びっくりするくらい曲がらない。色々攻略の情報を集めたりすると減速して荷重を移動してから曲がりましょうと。なんじゃそりゃ。こんな感じかなと減速したら多少曲がるようになった。でも遅くなるから敵に抜かれる。最終コーナーがきついコースだと抜かれたあと抜き返す猶予が無くて絶対1位になれない。それでどうするかと言うと、自動車メーカーのライセンスを取ってるゲームなので自車をぶつけてもクラッシュしない。壁にあたっても弾き返されるだけ。これを利用して急なカーブは減速しないで壁に突っ込んだ方が高速で抜けられるという。リアルシミュレータがリアルじゃなくなってる。まるでミニ四駆のコース。
 ミニ四駆系が酷かったのはセガツーリングカーチャンピオンシップ。これも荷重移動しなさいよというゲームだけど曲がらない。ずっと壁を擦りながら走る。デイトナ同様にドリフトするけど自車の先端を軸にして扇形に振られる。これが本当に気持ち悪い。アーケードでやりこんだ人はこんな楽しいゲームないと思うらしいけどやりこむのにお金がいくらあっても足りなかっただろうね。
 2000字こえたのでそろそろ終わるけど何が言いたいかと言うとレースゲームの歴史は曲がらないクルマを曲がらせる苦労の歴史。ゲーム性があれば楽しいけどただのストレスになると辛い。
 詳細忘れたがレースゲームの宣伝でドリキン土屋圭市にプレイしてもらおうという企画を見た。始めは難儀してるかと思ったがすぐに感覚を掴んで最速ラップを出していた。さすがプロはゲームでも速いんだ。プレイを終えたドリキンがひと言「本物のクルマもっと曲がるよ!?」と。私が長年感じていたジレンマをドリキンが言ってくれた!
 リアルな走り屋がタイトなコーナーをDC2みたいな回頭性のイイクルマで楽しんでいる一方、ゲーマーはリアルな挙動だというゲームで曲がれないコーナーにストレス感じまくってるってのは不健全だね。
 というわけで遠心力で橫に行くのはけっきょく南極のペンギンも一緒だよ!お後がよろしいようで…

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