6/1 遥か ~霊夢と魔理沙に捧げる物語~

~ある日の昼下がり~

「ゆっくり霊夢だよ」

「ゆっくり魔理沙だぜ」

「さて、今日はフリーフォールの歴史について……」

「……ん?ちょっと待って魔理沙」

「どうしたんだ?霊夢。小宮果穂がアイドルマスターシャイニーカラーズ公式4コマ第106話にて不良風の決め台詞を言っている時のような顔をして」

「いや素直に訝しむような顔って言いなさいよ!ほんとにオタクなんだから……じゃなくて、私が気になってるのは、ここって藤城のnoteなんじゃない?ってこと」

「おお、本当だな。色んなチャンネルで解説をしすぎて媒体の違いに気づかなかったぜ。たしかにここはYouTubeじゃなくてnoteだな」

「でしょ?ということは、藤城もここにいるのかしら。
おーい、藤城ー!出てきなさいよー!」


藤城「…………」



「お、なんだいるじゃないか。でもなにか様子が変だな。まるでアイドルマスターシャイニーカラーズ公式4コマ第195話にて恋鐘に痛いところを突かれたまみゆいさくトリオのような顔だ」

「いやだから普通に落ち込んでるって言いなさいってば……ほら、どうしたの藤城。なんだか元気ないじゃない」

藤城「…………ないんだ」



「ん?」



藤城「日記で書くことがもう、無いんだよォ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」


「「な、なんだって〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」」





霊夢「ほ、ほんとになんにも書くことが無くなっちゃったっていうの?」

藤城「うん……もうすっからかんだよ。さっきまでもずっと何を書こうか考えてはみたんだけど、なんにも浮かんでこないんだ」

魔理沙「なるほど、スランプってやつか……たしかに藤城は、これまで毎日日記を書いてきたもんな。書くことが無くなるのも無理はないぜ」

藤城「でしょ!?そうなんだ……最近は話題もどんどん少なくなってきて……もういっそ、ここらへんで日記を書くのをやめようかと思ったり……」

霊夢「ちょいちょいちょい!待ちなさいよ!あんた最初の頃はあんなに楽しそうに日記書いてたじゃない!しかもせっかくここまで続けてきたんだから、やめちゃうなんて勿体ないわよ!」

魔理沙「そうだぜ。それに私たちも藤城の日記を読むのが好きなんだ。一ファンとして、ここは止めさせてもらうぜ」

藤城「霊夢……魔理沙……ありがとう。でももう無理なんだ。ネタ切れもあるし、モチベーションが続かないっていうか……インスピレーションを湧かせるためのエネルギーが無いって言うか……」

霊夢「……あーもう!うだうだうだうだと、しょうがないわね……!分かったわよ!それなら私たちが、日記のネタ出しに協力してあげる!」

藤城「え……?」

魔理沙「そうだな。他ならぬ藤城のピンチだ。ここはいっちょ、助けになってやるとするか」

藤城「ほ、ほんとにいいのかい?」

霊夢「だから良いって言ってるでしょ!まだうだうだしてるんだったらぶん殴るわよ」

魔理沙「おお大変だ藤城。脳筋巫女が暴れ出す前に書き上げたほうがいいのぜ」

霊夢「な〜ん〜で〜す〜って〜〜!」

魔理沙「ギャーっ!ふ、藤城助けてくれーっ!」

藤城「霊夢……魔理沙…………ほ、本当にありがとう……!2人がそこまでしてくれるんだったら、俺書いてみるよ……!」

魔理沙「そんなことよりこっちをどうにか……って、どわーーーっ!!!」


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霊夢「それで……具体的には何を書いたら良いのかしら。」

藤城「うーん……そうだな……」

魔理沙の墓「…………」

霊夢「ちょっと魔理沙。あんたもいい加減こっち来て考えてよ」

墓から這い出した魔理沙「ったく、考えて欲しいならギロチンチョークなんてかけないで欲しいのぜ」

霊夢「もう済んだことでしょ。ほら、なんか名案はないわけ?」

魔理沙「そうだな……ここは一度原点に立ち返って、今日起こった出来事を書いてみるってのはどうだ?」

藤城「今日起こった出来事……」

霊夢「そうね。私もそれがいいと思うわ。他人の生活って意外と面白いし、それを藤城なりの目線で書くってのが日記の本来の姿よね」

藤城「うーん、でも今日あったことなぁ……」

魔理沙「例えば昨日のスケジュールを、朝から順に出してみればどうだ?」

藤城「そうだなぁ……まず起きるでしょ。朝ごはんを食べて、バイトに行って……帰って寝たよ」

霊夢「いやしょうもなっ」

魔理沙「うーん……ちょっと大雑把すぎるかもな。ご飯を食べてからバイトに行くまでとか、合間の時間もあるだろう?そこをもっと細かく見ていくとどうだ?」

藤城「えーと……あ!好きな曲が入ってるアルバムを最初から聴いてみたよ!その曲しか知らなかったから……」

魔理沙「おお、良いじゃないか。ちなみにどんなアルバムなんだ?」

藤城「レティクル座妄想

魔理沙「レティクル座妄想かぁ…………」

霊夢「なによ?そのアルバムだとダメなの?」

魔理沙「いや、ダメってことはないんだが……ちょっと一般ウケしないかも……」

藤城「ああ……」

霊夢「なによ!いいじゃないその、なんとか座?のアルバムだって!藤城の日記の魅力はそういう、好きなものを好きだって素直に書くところでしょ!ためしにそれで書いてみなさいな」

藤城「ええ!?でも、僕大槻ケンヂの作品に一家言持てるほど彼のことを知らないし……エッセイもまだ読んだことないし……」

魔理沙「いや待て藤城。霊夢は今いいことを言ったぞ。仮にレティクル座妄想や筋肉少女帯についての文章でなくとも、お前の好きな音楽や小説のことを書けばいいんだ。例えばほら、この前もポエトリーリーディングの紹介(https://note.com/lucky_capybara/n/n740c3ceecc94)とかしてただろう?」

藤城「そうかぁ……でもポエトリーリーディングの紹介(https://note.com/lucky_capybara/n/n94c61e8a6b09)も結局ウケてないし……」

魔理沙「何言ってるんだ藤城。ウケなんてどうでもいいじゃないか」

霊夢「あら魔理沙。さっきと言ってることが違うじゃない」

魔理沙「ああ。私も霊夢の言葉を聞いて目が覚めたぜ。こんな誰も読んでない場末の旅館に置いてある旅の思い出ノートみたいな日記、好きなように書けばいいってな」

藤城「結構言うなぁ……」

霊夢「でも魔理沙の言うことが正しいわね。どうせ誰にも読まれてないんだから、好きなことを好きなように書けばいいのよ」

魔理沙「そうだぜ。第一今だってこんな風に、自分の脳内にいるキャラクターとおままごとをしてるしな。」

藤城「べ、別にいいじゃないか!2人が僕のノゾミとカナエになってよ!」

魔理沙「タマエと桃子はどこへ行ったんだ」

霊夢「今度パチュリーと妖夢も連れてこなきゃかしらね……って、そんなことはどうでもよくて!つまりはあんたの好きにすれば良いってこと」

魔理沙「そうだぜ。好きなことを好きなように書くってのは、要はお前の内面を突き詰めることだ。そうして出来上がったその人らしさが詰まった文章っていうのは誰に見られなくても価値のあるものだと思うぜ」

藤城「二人とも……たしかにそうだね。なんだかさっきから、日記を書くにあたって大切なことをあらためて教えてもらっている気がするよ」

霊夢「さ、そうと決まれば何を書くか決めましょう。最近なにかハマってる作品とかないの?」

藤城「えっと、そうだな……シャニマスはずっと好きだし、アニメで言うと今期はスキップとローファーが凄くいいと思うし、漫画は最近だとアオアシとかラーメン発見伝とか……」

魔理沙「おおっいいぞ。どんどん出てくるな」

藤城「音楽だとamazarashiとかMOROHAもまだ書けてないな……初めて行ったライブハウスの話とかも……」

霊夢「いいじゃない!その意気よ!」

藤城「……あ、でもあの作品は最後まで読めてないから書けないか……あの作品も作者のインタビューとか読まなきゃだよなぁ……アニメ版があるならそっちもチェックしておきたいし……うう……」

霊夢「あれ?ちょ、ちょっと藤城……?」

藤城「…………駄目だ。やっぱり無理だよ二人とも」

霊夢「ええっ!?」

魔理沙「おいおい。いい感じだったのに突然どうしたんだ」

藤城「ごめん。でも良い文章っていうのはその事柄について徹底的に知るところから始まるんだ。今の僕にはそれを調べる時間も体力も無いって言うか……」

霊夢「なっ……!」

藤城「そうだよ。そもそも日記で書くことが無くなったのってそこから全部始まってるんだ。バイトをする時間を減らせたり、生活に余裕が出来たら僕だって……全部時間が無いのが悪い。僕が悪いんじゃn……」

殴る霊夢「バカーーーーーッッッ!!!!」

殴られた藤城「ギャフーーーっっっ!」

霊夢「バカバカバカ!!なによ!全部環境のせいにして!良いものが書けないのは、全部あんたの責任でしょう!?」

藤城「なっ……!」

霊夢「時間が無い?あんた何言ってんのよ!商業作家の中に一般職と兼業でやってる人がどれだけいるか知ってるでしょう!?その人たちより仕事もしてない、第一文章にお金だって発生してないあんたが、何を偉そうに言ってんのよ!」

藤城「そ、それは……」

霊夢「だいたいねぇ。そんなに生活の中で書くことが無いんだったら、小説でも書けばいいでしょう。外に刺激が無いなら、内側から出てくるもので塗り替えちゃえばいいのよ!それもしないでうじうじうだうだ、周りが、環境が悪いんだって、それじゃあんた、いつまで経っても変われないじゃない……!」

藤城「…………」

霊夢「……私はこんなあんた見たくなかった。日記をやめるなら好きにすればいい。でも……まだ書くなら。今度こそ言い訳せず、本気で書きなさいよ……じゃあね」

ギーッバタン(霊夢が退出する音)

霊夢が退出した様子

魔理沙「……やれやれ、言われちまったな」

藤城「…………」

魔理沙「霊夢も悪気があったわけじゃない。ただ……心配なんだよ。あいつなりにな」

藤城「……うん。分かってる」

魔理沙「そうか……ふふっ、なんだか親子みたいなのぜ」

藤城「親子?」

魔理沙「ああ。こういうのあるだろ?息子と喧嘩した後黙って部屋に帰っちまう父親、みたいなさ」

藤城「ああ、なるほど。ははっ、二人にはお世話になりっぱなしだし、たしかに親子かもね」

魔理沙「おいおい、ってことは私が母親なのか?」

藤城「うん。息子の味方でいてくれる良き母だよ」

魔理沙「まったく、冗談はよして欲しいのぜ。イメージとしてはどう考えても私が父親だろ?」

藤城「はははっ…………待てよ。父と母、か」

魔理沙「ん?」

藤城「……現実を、内側から塗り替える、か…………よし分かった。俺、小説書くよ」

魔理沙「ええ?」

藤城「霊夢の言う通り、俺が駄目だったんだ。忙しさに甘えて、何も見ようとしてこなかった……でも、それなら内側から出てくるもので勝負すればいいんだよな」

魔理沙「……ふふっ。そうか。何か掴んだんだな?
でも言っておくが、私が要求するハードルはなかなか高いぜ?それを超えられるかな?」

藤城「ははっ。お眼鏡にかなうものが書けるよう頑張るよ。よし、やるぞぉっ!」


物陰からそっと見守る霊夢

霊夢「まったく、世話が焼けるんだから……」



そして数日後……



藤城「はぁっはぁっ……二人ともー!書けたよー!」

魔理沙「お、ついに出来たか。待ちくたびれたぜ」

霊夢「どれどれ、あんたが書いた小説がどんなもんか見てやろうじゃないの」

藤城「はぁ、はぁ……うん!これが俺の……二人のおかげで書けた、俺の小説だよ!」




彼方』  作:藤城 圭

東京に出てきて、どのくらい経っただろう。
今日も空は遠い。
夢を追ってこの街に来たはずだったのに、それを初めて見つけた幼い頃の思い出が、あの日飛び出した故郷の景色よりずっと近くのものに感じるのは不思議なことだ。

父に憧れていた。
幼い自分にとって、家の全てを意のままにする父の姿はあまりに絶対的だった。今の自分にはそのあり方が正しいとは言いきれないが、それでも、あの頃の父は自分たちを守ってくれる何よりも強いもので、自分はその強さに、どうにかして認めてもらいたかった。
少年野球を始めたのもそういう理由だ。野球好きな父の正道に当てはまることで、彼にとっての自分というものの価値を高めようとした。結果、父は多いに喜んでくれたし、その晩には缶ビールを三本空けた後の赤ら顔のまま、薫陶を与えるといった態度でこう言った。
「まっすぐにやれ。よそ見はするな。へたくそでいい」
ごつごつした手で頭を撫でられながら言われたその言葉は、今でも自分の生きる指針になっている。

だからこそ、あの時の父の姿はショックだった。18の時だ。自分の進路のことで父と大喧嘩をした。映画の専門学校に通いたいという自分に、父はハッキリ「無理だ」と言い放った。本当になれると思ってるのか、ただの憧れなんだったら止めておけ……たしかに憧れだ。でもあの頃の自分にとって、それは確信を持った憧れだった。映画監督になりたい。自分の作った作品を世に知らしめたい。そう出来なければ死ぬしか無かったのだ。
父には生涯分からないことだろう。友人や家族、自分の店を頼りにしてくれる地域の人々。自己肯定の根拠を周囲の人間に置くことが出来た彼には。自分にはそれが出来なかった。自分を肯定するためには、自分で認められる何かを成すしかない。その気持ちは「親父には分からない」という言葉になって飛び出した。
胸ぐらに掴みかかってくる父の手、節くれだったその手をなんだか小さく感じた時、振り払われて尻もちをついた父の顔が、妙に哀れっぽく見えた時、自分の少年期は終わった。

出発の日の朝、母は見送りに来ない父への文句を言いながら、それでも笑顔で見送ってくれた。
「傷ついたって笑い飛ばして。傷つけるより全然いいね」
駅に向かう途中の桜並木の下で言われた言葉を、今でも覚えている。挫けそうになった時、あの母の笑顔に報いなければという純粋な思いが、何よりの原動力だった。

そうして、今。
自分はようやく完成した映画の完成試写会の舞台に立っている。ずっと望んでいた万雷の拍手の中、ふとこんなことを思った。
どれだけ自信をへし折られようとも、どれだけ周囲に流されそうになっても、ここまで自分が自分を信じ抜くことが出来たのは、結局、あの二人に自分の作品を見てもらいたかったからなのかもしれない。
自分を認めるなんて小さな欲はいつの間にか消え去って、そういう望みが今までの自分を突き動かしていたのではないか。
お辞儀をする目の端で彼らを探す。実家に送った招待チケットは破り捨てられてしまっただろうか。ろくに手紙も寄越さずにこんなもの送り付けて、と。
それでもいい。届かないのならば、何度でも作って送り付けてやる。
あの人に認められるために。あの人に報いるために。それだけのことに命をかける価値があると、ようやく証明出来たのだから。
顔を上げて、前を見る。故郷の空はまだ遥か遠く、あの頃望んだ景色にはまだ届かない。それでも。

いざ、行こう。


Fin






いや「遥か」のMVに出てくるあいつの小説かい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



ほんでこいつら誰!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?



パチュリー・ノーレッジ・・・紅魔館の図書館に引きこもっている魔法使い。病弱で日光を嫌い、身体能力としては人間に劣るが、火+水+木+金+土+日+月の元素を操り、精霊魔法を得意とする。別名「知識と日陰の少女」、「動かない大図書館」

パチュリーも来ちゃった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

え!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?

え!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?










あ、終わりです。

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