芳賀一也氏の主張の検証1 | 姫路ゆかた祭り2023を巡る混乱
※この記事はWebサイト「姫路ゆかたまつり2023を巡る混乱」 https://www.motohiko-yukata.net/ からの転載です。
2025年1月18日,元・兵庫県議会議員の竹内ひであき氏が亡くなりました。
竹内ひであき氏は生前より「さいとう元彦兵庫県知事を貶めるデマを流した」として責められ,不特定多数からの誹謗中傷・嫌がらせを受けていたことが報じられています。特に「2023年の姫路ゆかた祭りでの知事の行動に関して"でっちあげ"を行った」という言説が広がりを見せています。果たして,この言説は妥当なのでしょうか?
2024年9月10日の姫路ゆかた祭り奉賛会副会長・芳賀一也氏の投稿の内容は次の通りでした。
ゆかた祭りで、知事が高級呉服店を借り切った、ボランティアに罵声を飛ばした、今年のゆかたまつりは出禁だったというニュースが飛び交っているがこれらは誤りである。
その日の昼過ぎに、市の観光スポーツ局から電話があり、「知事がゆかたを借りたいといっている」ときいたので、西二階町の貸衣装屋を紹介した。
公民館で着替えてないので、地元のボランティアに怒鳴ったという事実がないのは明らかである。
老舗呉服屋を借り切ったという事実もない。
竹内議員の発言は一部、デマである。
さいとう知事を「出禁」にしたことはない。出禁にするなら、デマを拡散している竹内議員の方だ。取材もせず、煽りまくるマスコミも出禁にしたいほどだ。
当時,テレビ放送等でどのようなニュースが取り扱われていたかは,いまから調査するのはやや難しくなってしまいました。ただ,確かに,2024年のゆかた祭りにさいとう知事が不参加であったことをもって「出禁になったのではないか」ということを話題にしたテレビ番組は存在したようです。芳賀氏は,ゆかた祭りを運営するにあたって,誰に来賓として参加してもらうかを決めるプロセスに携わる立場にあったので,確かに「さいとう知事は出禁とした」という話は事実ではなかったのでしょう。
さいとう知事が着替えに使ったのは,高級呉服店ではなく貸衣装店というべきお店でした。またボランティアに罵声を飛ばしたという事象も発生していなさそうです。
ここまでは,問題ありません。
では,「竹内議員の発言は一部、デマである」という主張はどうでしょうか。
改めて,竹内氏の情報発信を見てみましょう。この時点で,竹内氏がブログにて発信していた内容は次の通りです。
「知事がみんなと一緒に着替えるのは嫌、プロでもない着付けは嫌だと急にわがままを言った」と関係者から聞いた
「県側から依頼していたのに,姫路市の担当にドタキャンを食らわせ怒らせた」という話もあった。
着付けに公費支出があったかどうかを調査したところ、支出が確認できた。
一読してわかる通り,竹内氏の情報発信は,芳賀氏の主張と矛盾しません。これはのちにわかることですが,どうやらこの時点で,芳賀氏は竹内氏のブログを閲覧していなかったようなのです。
それでは,芳賀氏が糾弾している竹内氏の発言とは何か。
それは,竹内氏の情報発信とほぼ同時に発表されたAERA dot.の記事の内容と思われます。
竹内氏が得た情報によると、当日の様子はこうなる。
会場入りした斎藤知事は、着替えのため地元の公民館に案内された。すでに数人が地元婦人会のボランティアの手を借り、浴衣の着付けをしていた。斎藤知事はこう言った。
「みんなと(一緒に)着替えるのは嫌だ」
「ちゃんとしたプロの着付けの人はいないのか」
激怒ぶりにあわてた事務方が地元の和装店に連絡、その和装店で一人だけ着付けをしてもらったという。
別途,検証を行いますが,確かにこの記述は実際に現場で起こったことと若干の齟齬があるようです。特に「着替えのために公民館に案内された」という記述は怪しいです。記事ではこの内容を,「竹内氏が得た情報」として紹介しています。この記述と事実の乖離をもって「竹内氏がデマを流した」という主張をする方が多いのです。
しかし,この記述は「竹内氏が得た情報をもとに記者が脚色も加えて再構成した情報」と見るべきではないでしょうか。竹内氏のブログでは,この記事へのリンクを張るとともに,改めて「自身がどのような情報を得たか」を述べています。竹内氏は「公民館でさいとう知事が激怒した」とは書いていません。この時点では事態の全体像を把握できるわけもなく,「この部分は事実と異なる」と指摘できる状況ではなかったと思われます。
竹内氏は,「ゆかた祭り」の会場でさいとう知事が大声で叱責をしたりするなどのパワハラを行ったとは主張していませんし,そのように認識もしていなかったことが伺えます。もしそのような認識があれば「パワハラ問題」として,追及を行ったはずですが,竹内氏はそれをしていないのです。竹内氏が主張し,問題視していたのは「知事のワガママに起因して公費支出が行われた」ことです。これを糾弾すべきかどうかは意見が分かれるかもしれませんが,公費支出が行われたことはエビデンスによる裏付けのある事実です。
果たして,このようにして行われた竹内氏の情報発信は「デマ」すなわち「政敵を陥れるための虚偽」だったのでしょうか。むしろ,情報が錯綜する中で,何が事実であり,取り上げるべき事項が何なのかを丁寧により分けながら,追及を行っていたと見るべきではないでしょうか。