ダウ90000第6回公演「旅館じゃないんだからさ」
はじめに
私はこの公演の千秋楽を観に行ってきた。初めて彼らの公演を観るという事になり、歓喜のあまり私は涙を流していた。7月に賞レースの影響でダウ90000にハマった私は、数ヶ月間(現在も続く)彼らを心の拠り所にして生きている。大学でメンタルを削られるような言葉を浴びせられ、その影響で自殺願望すら抱くようになった私にとって、ダウ90000は暖かい光のような存在である、と思っている。そんな彼らの公演は、一言で言うと「素晴らしい」に尽きる。19歳の私から出るのは上記のような月並みな感想でしかない。しかし、本当にその通りなのだ。この言葉に尽きてしまう。観劇中、私はハンカチと特典のカードを握りしめていた。目は常に泣き出してしまう直前の状態を維持していた。
そして千秋楽から数週間後、配信が販売され始めた。私は11月に誕生日を控えていたので、自分へのプレゼントとして配信を買った。その日から、少しずつ観始めた。
感想
2時間があっという間に過ぎ去る感覚がした。私達がよく知る固有名詞が矢継ぎ早に飛び交う中、物語が進んで行ったように感じた。私はメンバーの表情を細かく見ていた。その中で、序盤は比較的笑顔が多かった園田さんが、最後の辺りで中島さんの台詞を聞いた後に見せた表情に胸が締め付けられた。絞り出すように言った『クレジットカード...持ってないんだもん...』の台詞の辛さは相当なものだろう、と感情移入した。その後も暫く、そのままの表情でただ突っ立っているのを見るだけで涙が少し出た。道上さんが会計をして、中島さんが住所変更をして、その後飯原さんと2人帰って行くのを見る事しか出来ない。私が彼の立場なら、何も出来ない故のこの苦しさに、きっと耐えられないだろうな、と思った。また、一向にポイントカードを更新しない園田さんに対して道上さんが声を荒げるシーンが印象的だった。
後半に入って少しした辺りの上原さんと吉原さんのやり取りの中の台詞の一つである、『このように、言わなくて良いことも沢山あるんですよ』の声色にずっしりとした何かを感じた。そして、ドキッともした。普段は明るい彼女から出る、あのような何処か暗いトーンの声が好きだ。勿論、普段の彼女も好きだ。そして、何よりも私はこの台詞に共感できる部分を感じた。確かに、言わないことで生まれる幸せも世の中にあるし、その逆もある。言わなくて良いことを言ってしまい、その結果良くない展開を何度も招いた経験を持つ私には、刺さるものがあった。
私が演劇を通して一番印象に残った台詞が、中島さんの『ごめん、本当に...忘れて欲しい』である。これを現地で聞いた時、私は心臓をナイフでぐさりと刺されたような感触を覚えた。その口調も、怒って荒げたものではなく、園田さんを傷つけないように、と細心の注意を払った上での、申し訳なさとほんのりした優しさを孕んだ声色に聞こえた。ただ強く突き放すよりも、よっぽど堪えるだろうなと思う。優しさは時に、何よりも恐ろしい凶器になり得ると私は考えている。彼女の言葉は、最後の淡い温もりのつもりが、聞いた相手にとっては超高温の何かになってしまった。こんな事を私は想像した。
そして私が何よりもここで書きたいことがある。忽那さんである。私は忽那さんが大好きで、観劇中も彼女の可愛らしさに癒されていた。あのトーンで紡がれる台詞の数々。他のメンバーの人間関係には一切関係ないが、しっかりインパクトを残していく。私が好きな台詞は、一番最後の『無くならないで下さい』である。舞台であるTSUTAYAに対しての台詞だと思っているが、それ以上の意味を持った深い台詞だと考えている。
最後に
私はこの公演を観て良かったと思っている。むしろ、観なかった方が後悔していたことだろう。来年5月の演劇公演は、大阪の公演に行く計画を立てている。その為にはお金を貯めるだけでなく、チケット購入を成功させる必要がある。
そして、配信が終わってしまった今思うのは、このような世界観を書き上げる蓮見さんの想像力、語彙力、その他もろもろの凄さである。まだ27歳の彼は、一体どんな人生を歩んで来たのか。一体どれ程の多種多様な人物に出会い、関わって来たのか。ダウ90000のコントや演劇等を知る度、私は彼に問うてみたくなる。『旅館じゃないんだからさ』で描かれる出来事がそっくりそのまま現実で起こる確率はほぼ0に近いだろう。しかし、私が知らないだけで、もしかしたらすでに何処かでは起きているかもしれない。私は、劇中の8人が、虚構の中だけでなく、リアルの世界で生きているような錯覚を起こしたのだ。
私は将来芸人志望であり、その時にダウ90000に会って、胸に抱えている思いを全て伝える事が夢の一つである。また、今回の公演の感想を書いた手紙を彼らに送る予定だ。
ダウ90000様へ。
無くならないで下さい。