マロン日記#37【女神様、最後のビンタ】ビンタ資料動画56発☆4ファイル☆
2015年12月下旬──
年の瀬目前、私とマロンさんは食品工場のピッキング作業を終えた。
バイト納め、聖地コンビニ裏へ移動。
さて、ビンタ納めか。
撮影していないビンタも含めて、この3ヶ月で1000発は優に越えている。
私はマロンさんのおててを見ながら感慨深さに浸った──
「マロンさん、ちょっとだけ手をつないでもいいすか?」
「……いいけど、ちょっとだけね」
車内には和楽器バンドの『地球最期のラブソング』が流れる。
「今日でバイトも、ビンタも終わりですね」
「そうだね、あたしは結構楽しかったよ」
「マジすか?」
「うん、楽しかった」
よかった。最後にマロンさんからこんな言葉が聞けただけでも嬉しい。
しかし、マロンさんのおてては本当にとろっとろの、ふわっふわだ。
このマシュマロ質感で張られるビンタは最高だった。
感極まってきた私は、普通の手つなぎから、指を絡ませた『恋人つなぎ』につなぎ方を変えた。
「……ちょっと、調子にのんな」
「いいじゃないすかぁ、最後なんだし」
「お金取るよ」
「さっきのつなぎ方は無料で、これは課金ですか?」
「当たり前じゃん」
「じゃあ戻しまーす」
つなぎ方を戻そうとした時、マロンさんが指に力を込めた。
「もういいよ、サービスしとく」
暫く無言、マロンさんの柔らかく飲める手のひらのメモリータイム。
「マロンさん、今度一回デートしません? 友達として」
「は? すらいむさんにそんな時間ないし、こづかいもないし、そもそもあたしの事なんて好きじゃないじゃん」
「……ご名答」
「すらいむさんは、あたしの手が好きで、あたしの手でビンタを張られるのが好きって、わかってるから最後にサービスしてあげてるの」
そう告げた後、きゅっと、マロンさんの指に力が入った。
柔らかい手のひらが更に密着して、まるで私の手の中へ沈みこんでくる感覚に胸がドクン──と、高鳴った。
何もかも理解してくれているマロンさんに出会えて本当によかったと、心から思える。
「はい、大好きなビンタの時間がなくなるから、そろそろやろっか?」
絡めた指をほどこうとしたマロンさん。その時、私は無意識に力を込めた。
「なに?」
「もう少しだけつないでいたいです」
「ビンタいらないの?」
「それは、いります」
「もぉ……この曲が終わるまでね」
いつか見た夕焼けは、あんなに綺麗だったのに──
恋なんて呼ぶには遠回りしすぎたよ
そして、なにもかもが、手遅れの灰になった後で──
僕は今更、
君が好きだって、
君が好きなんだって、
言え──
たよ♪
曲が終わり、私とマロンさんは同時に手を離した。
「じゃあ始めよっか」
マロンさんは袖をまくってビンタの準備を始めた。
この温度差……ビンタだけで繋がった、特殊な関係性だからこその温度差だ。
「どうやる? とりあえず一発づつ?」
「うん」
「いきま~す」
マロンさんは両腕をぐっと前に出して準備する。
私の脳裏にホテルでの強打が過った。
「こわっ、こわこわこわ」
「態勢が……よいしょっと。オッケー」
ゴン!
「痛っ! 痛~い」
パン! すりすり……パン! すりすり……パン!
マロンさんは小声で「(カメラの映像が)乱れてない?」と言って続ける。
すりすり……パン! すりすり……パン!
「ストップ~」
やっぱりまだ耳が少し痛いな。それでももうマロンさんにビンタを張られることはないんだ、耐えろ耳!
次、ファーストクラスビンタをリクエスト。
「どうやるの? これ?」
マロンさんは左手で右ホペタを固定した。
「うん」
「いきま~す」
「はい」
パン! もみもみ……パン! もみもみ……パン! もみもみ……パン!
「それの早いやつって出来ますか?」
「え? どういうの?」
「軽くでいいんで、連発」
「ええっ? どうやって?」
「パンパンパンパンって」
「え? 両手?」
「いや、押さえながら」
「こうこうこう、だよね」
マロンさんは片手を振りながら確認する。
パン!パン!パン!パン!パン!
「い、痛えぇ……」
「ははっ!」
痛いけど、押さえているマロンさんの手のひらが気持ちいい。
ここで日差しが気になったのでポジションを交代することに。
「押さえて……左。うん」
「は?」
「あ、押さえて右」
「だけ? こう?」
右のホペタを押さえて左ホペタを張るマロンさん。
もみもみ……パン!
何度か張って、ふと手を止めた。
マロンさんの様子に気付いたわたしは目を開けた。
リアウインドを覗き込んでいる。
「んん?」
「車、大丈夫かな。見てないよねと思って」
もみもみ……パン! もみもみ……パン!
「もう今日は終わったら早く帰ろ」
帰りたくないなぁ……。
もみもみ……パン! もみもみ……パン!
「逆も出来ますか?」
「ん~?」
マロンさんは手を逆にして、左手で張り始めた。
もみもみ……パン! もみもみ……パン!
「ストップ~、サンクス」
「次、右だけで」
「右だけ?」
「お願いします」
ぐに、ぐに……パン! ぐにゅ、ぐに……パン!
とろっとろの手のひらで、ホペタをほぐす時の感触、本当に気持ちいい。
密着するマロンさんの手のひら、ビンタを張るマロンさんの手のひら──
これが最後のビンタ。味わおう。
「ラスト~」
パァアアン!
「あ、痛ぇ……はは」
「ふふっ」
笑うマロンさん、カワイイ。
最後のビンタは強烈ビンタで締めくくってくれたんだ。
ビンタの撮影が終わり、少し談笑していると、カップルが車の近くで何やらイチャイチャしだした。
このカップルが行ってから車を降りようとしたその時──
「……え⁉」
なんと、カップルがキスを始めた。
「マジか……」
マロンさんは少し笑みを浮かべながらカップルのキスシーンを注視する。
「若いね~、人目もはばからずに、もうあんなこと出来ないわ」
そう言うマロンさんを私は少しからかってみることにした。
「僕らもします? もう今日で会えないんだし」
「は? するわけないじゃん。バーカ」
「ですよね、じゃあ僕らは恒例のアレで締めますか」
「えー、さっきいっぱい張ったじゃん」
「はい、どうぞ」
「もぉ、これで最後だからね!」
パァン!
ラストマロンビンタ。
ホペタがジンジンする。
ごちそうさまでした。
「じゃあ、ありがとうございました。またどこかで会えたら」
私はマロンさんに握手を求めた。
彼女は私の手を握り、最後に一言こう告げた。
「永遠にさようなら」
完。
【マロンビンタ資料動画】
4ファイル 7発 + 12発 + 18発(右)7発(左)+12発(右)
合計:56発
打ち手の姿 : アリ
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