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私なりのsilent(2)

(2話あたりを、思ったままに)

湊斗はなぜ始めからコンポタを出さなかったのだろう。
いつも真っ先に相手の気持ちを汲み取る人なのに。
想と会ってしまっただろう紬が、コンポタを求めるほどの情緒ではないと思いたかった?

コンポタの出番がないほうがいい、と紬の様子を探ったのだろうか。
コーヒーかココア、この2択でとどまれる精神状態であってほしかったのだろうか。

考えすぎかな。もっとシンプルでいいのかな。
電話越しの紬の反応だけで何があったのかを察するくらいの湊斗なのに、買ったコンポタは出さない。
どことなく湊斗らしくない。

3年前、仕事で精神的に追い込まれてた紬が欲しがったのはコンポタ。そこから始まった関係。
今の紬があの時と同じようにコンポタを求める。

湊斗からすれば、3年自分が隣りにいた自負や築いてきた礎があるはず。
自信はずっとなくても、積み重ねた月日がある。

紬の前に現れた存在は、固めた地盤をあっけなく脆くしていく。
「今、紬が想と再会したら」湊斗が抱えていた不安。
かつての親友と、その親友がかつて大好きだった恋人との再会。

確実に紬の心を動かした再会。
その再会は想の心も動かしてることをじきに知る。

再会をずっと想像していたのに、想像以上だったことが、現実として起こる。
かつての親友が自分からも紬からも去った本当の理由。
それを知った紬の気持ちが自分から離れていく不安。

あの時、コンポタのような支えが必要だったのは、湊斗のほうかもしれない。

もう紬には会ってほしくないと思う奈々だって、私利私欲のためだけではなかったと思う。
聞こえなくなっていく想を支えた。
ようやく静かに穏やかに暮らしてる今の想を、一番近くで見てきた。

感情に身をまかせて、想が手話をぶつける女の子の存在。
奈々には読めてしまう想の手話。涙の理由。
友人だなんて思ってない奈々の気持ち、なぜ想は見ないふりを続けるのか。
奈々が知るのは、今でも想の心を占めている、想がイヤホンを拾った女の子。

自分のためにも、想のためにも、想の心を乱す相手ならもう会わないでほしかった。
イヤホンを返すためだけなら、もう会ってほしくなかった。


  「イヤホンを返したい」
そのままにできなかった紬のイヤホン。
高校生の頃に交換したものとは違う。
音楽好きな紬だから選ぶ、高価なイヤホン。

8年音沙汰なしでも、SNSでつながることができれば
その距離は一瞬で縮まる。会う約束だってできる。
想と紬が再び繋がるきっかけとなった湊斗。
これも巡り合わせなのだろうか。

  「佐倉くん」「見かけて」
突き動かされるように湊斗が訪ねた想の実家。
もし湊斗が行かなければ?
もし萌が湊斗の様子に違和感を感じて想の連絡先を教えなかったら?
想が紬と再会しても、イヤホンを返しそびれても、
返す約束を作るすべはなかった。

想に会う。
新しいスカートを履く。
イヤリングをつける。
まるで好きな人に会いにいくかのように。

紬は湊斗のことをちゃんと大好きだった。
3年間1番好きな人だった。
新しいスカートもイヤリングも特別な意味は少しだけ、「好きだった人」に会うため少しお洒落をしただけ。

なんて思ってたけど、あの時はまだ2話。
紬がスカートを履いたのはこの時しかない。
イヤリングを着けてるのもこの時だけ。
十分に特別じゃないか、紬!
でもね。
それはわかる、だって大好きだった人。
なのに突然会えなくなった人。
元気にしてるのか、ずっと気になっていた人。

すぐスカートに気がついた湊斗。
気がつく湊斗が特別すごいわけじゃない。
3年一緒にいる彼女。いつもラフなジーパンやつなぎばかり着てる彼女がスカートを履く。
それだけで「特別な日」だとわかる。
彼女の「特別な日」に会っていたのは、昔彼女が大好きだった、昔の親友。

この後の紬の行動力は、まっすぐさそのもの。
手話教室にすぐ通ったのは、想に心が傾いたからじゃない。
想があの時見せた手話らしきものは、まったく理解できなかった。
次はちゃんとわかるようになりたいと思った。
ただ、想と話したかった。


シナリオブックには紬が通う手話教室のやりとりや経過がわかりやすく書かれていて面白い。
手話が「ペラペラ」になるのを目指したのに、
「ペラくらい」とすぐハードル下げちゃうあたり、すごく紬らしい。
想が知ったら即突っ込まれそうなかんじがいい。

想とまた会う約束ができた紬が「やる気満々」で授業を受けるところも。
 「決まってる通りに行けば会えるんです
            約束すごすぎます」
会いたくて会えない8年の重みが伝わる、約束の尊さ。

「発表」した手話はいいけど、会話となると難しい。
手話が通じる大切さを肌身で感じる。
  「次会う時はペラペラになっとくから」
下げたハードル、ポジティブにまた上げるのも紬らしい。

他にも2話はドラマになかった描写がたくさんある。
とても大切な言葉たち。
  「好きになってごめんね
      俺じゃなきゃよかったね」
すごく好きなのに、別れを決めた想の気持ち。

想からイヤホンを受け取った別れ際。
昔のように想が振り返るのを少し待つ紬、
紬が反対に歩き出してから時間差で振り返る想、
2人の「だよね」と「だよな」。
8年前と同じようにはいかない再会した2人の距離。

紬の言動は誰から見てもわかりやすい。
想は気持ちが表に出てこないだけに難しい。
シナリオブックが伝えている「想の本音」に触れて初めて知ることが沢山ある。


8年かかった。だとしても、
「好きな人がいる」
の本当の意味を、紬が受け取れてよかった。
2人で一緒に泣くことができてよかった。

2話はつらくて苦しい涙の後、切ないけど温かくもある涙で、心がポカポカした。
頑なだった想のガードが、紬に会うたび少しずつ解けていくのが嬉しかった。

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