エッセイ#62『25cm』

 靴がボロボロになったので新しいスニーカーを買いに行った。
 向かった先は無印良品。買うのは、私が世界で一番シンプルなスニーカーだと信じて止まない「疲れにくい スニーカー」だ。商品名にもなっている「疲れにくい」が本当かはさておき、世界で一番シンプルなスニーカーであることは、紛れもない事実である。

 買ったことがある人ならわかると思うが、「疲れにくい スニーカー」はサイズが全体的に小さい。店舗に並ぶ商品は軒並み23cm台ばかりだ。
 私の足のサイズは成人男性にしては小さいものの、流石に23cmには入らない。だいたい26〜26.5cmくらいだ。しかし、どれだけ探しても該当のサイズは見当たらない。最も大きいもので25cmである。

 試しに25cmの靴を今履いているものの隣に並べてみた。するとどうだろう。驚く程にピッタリだ。確かに今の靴は少々ぶかぶかで、フィット感に欠ける。今までこれは靴紐が緩いことに原因があると考えていたが、どうやら本当にサイズの合わない靴を履き続けていたようだ。疲れにくくなかったのもそのためだろうか。
 ということは、私の足のサイズは25cmなのだろうか。そんなはずがない、何たって成人男性だ。26cmだってかなり小さい方なのに、まさかそれよりも1cmも小さいだなんて。
 きっとこれは何かの間違いだ。遠近法だの膨張色だのの関係でそう見えてしまっているだけで、実際には26cmはある。成人男性だもの。
 百聞は一見に如かず。損でも良いので購入することにした。家まで待てず、駅の待合室で履いてみると、丁度ぴったしのサイズであった。キツくも緩くもない。
 どうやら私の足のサイズは25cmで決まりのようだ。
 成人男性なのに。


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