エッセイ#66『綺麗な名前』
大学を卒業するタイミングで、同級生カップルが結婚を発表した。
その時、苗字が変わった側の人が変更後の名前で文章を作っていた。これだけだとイメージしづらいと思うので例を挙げると、もしその人が「賀来賢人」だった場合、「賀び来る賢い人」みたいな感じだ。賀来賢人であることに深い意味はないが、賀来賢人以外に良い例が思い付かなかったので賀来賢人を用いることにした。
いいな〜、と思った。カッケェ〜、と思った。「名前は『世界で一番短い美しい歌』です。」みたいなことを金八が言っていた記憶がある。正直、金八は世代でもなければそんなに好きでもないのだが、この言葉には感銘を受けた。
物語のある名前を聞いた時、自分だったらどんな風になるのだろう、と頭の中で歌を作ってみた。するとどうだろう、詳しいことは書けないが、どう足掻いても「神視点」になってしまうのだ。私自身を表しているというよりも、困窮を極めた村人を救う神様のような名前なのだ。雰囲気だけを伝えると「枯大地雨降」みたいな名前である。
友人や芸能人の名前で試してみても、中々綺麗な歌にはならない。苗字が変わった側の元の苗字が悪いという訳ではないのだが、相手方の苗字は大変素晴らしいものだと感心した。そして「賀来」も素敵である。