[ドラマレビュー・エピソードピックアップ]警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜[シーズン1 ・1、2話]
連続放火事件
ポイント● このエピソードでは冬彦と寅三の出会いが描かれる
あらすじ
なんでも相談室にキャリア警官の小早川冬彦が赴任してきた。初仕事は徘徊老人のお世話。
ひとり乗り気の冬彦がいそいそと事情を聞きにいくと、その老婆はいつも公園でぼーっとしているらしい。
同じ頃、周囲では不審火が相次いでいた。その公園でもボヤ騒ぎがあったため徘徊老人が目撃しているのではと聞き込みをするが、彼女は認知症だった。
冬彦は直近の不審火を放火と断定、ピロマニア(快楽的放火犯) の犯行として捜査を進める。
そんな中、裏カジノの元締め組織、赤龍会の構成員が焼死し、警察内部にスパイがいるのではという疑惑が持ち上がり・・・。
なお、このエピソードのみ2話にまたがっている。
冬彦の優れた犯罪プロファイリング能力が発揮されるエピソード
シリーズ全編を通して、冬彦は優秀な犯罪プロファイラーとして描かれているが、それが明らかになるのがこの最初のエピソードである。
冬彦は一連の現場を調べ、不審火が同一犯の仕業であることを突き止める。
更に、犯人の行動パターンから職種を絞り、聞き込み調査を開始するとそれらしき人物が浮上してきて・・・。
キーパーソンは迷子の子供:示唆される冬彦の子供時代と物語の核
一連の事件で重要な鍵を握ることになるのがよく迷子になる近所の子供、さやかちゃんである。
両親とも不在がちでよく家を抜け出してはなんでも相談室に連れてこられるさやかちゃんのなにげない行動で事件は解決する。
作者がこの子供をキーパーソンにした意図は、実は冬彦の子供時代の示唆ではないだろうか。
さやかちゃんの両親は不仲で彼女の世話を押し付けあう。母親は勝手に家を抜け出したさやかちゃんを叱り、ご近所さんからどんな目で見られるか、と世間体を気にする。
寅三はそんな一家を「見かけだけ立派で中身ぐちゃぐちゃ」だと見抜き、さやかちゃんが寂しさから家出を繰り返すのだと両親を説教する。
両親は改心し、家族としてやり直すことを誓う。
このことから明らかなように、寅三はまっとうで温かな家庭で育った人物である。子供の心の痛みに共感し、寄り添うことができる人物。
一方で冬彦は明るいが、感情が欠落しているように見える。人からの批判を恐れぬ、エリートらしからぬ図太さは、強靭な精神によるというより、他人の感情に共感できないがゆえに見える。
いい意味でも悪い意味でも共感能力がないのだ。つまり明るいサイコパス。
そういう人格が形成されやすいのはどのような環境か。さやかちゃんの家のような、子供の感情に寄り添うことのない家庭だろう。
推測ではあるが、そういう冷たい家庭で育った冬彦にはいい意味でも悪い意味でも人間的な感情がない。おそらくは捜査もゲーム感覚。
しかし、そんな彼が感情と共感の塊、寅三と出会って変わってゆく。そんな物語の幕開けとしてのエピソードになっている。
まとめ
物語の幕開けにふさわしい重厚なエピソードとなっている。冬彦の秀逸な犯罪プロファイリング能力や、ただの放火事件に暴力団が絡む複雑なプロットなど、見どころ満載だ。
また、ドラマでは描かれないが放火犯の苦しい境遇を描き、ただの快楽犯罪者にしないところも好感が持てる。
なんといっても最大の見どころは冬彦が寅三に惹かれてゆく過程。自分にないものを見出し、バディとして彼女から何かを掴み取ろうとする。
ふたりの関係性の、人間的な意味での進展を予感させる素晴らしいエピソードとなっている。
ミステリ好きにはもちろん、ヒューマンドラマ好きにもオススメしたい作品です。
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