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[ドラマレビュー] 『シェイムレス〜俺たちに恥はない』シーズン4:フランクの病を通して人間とはなにかが描かれるシリアスなシーズン(アメリカ 2014)

フランクの健康問題から始まる今シーズンは、人生を謳歌する子供たちと病に苦しむフランクの対比が鮮やかに描かれる。 
作品のコアにいたフランクは体調不良でなりをひそめ、代わりにフィオナに代わって家長の役割を引き受けたリップの大活躍が見られる今シーズン。
前シーズンよりエロは控えめで、ギャラガー家は次々災難に襲われる。

トーンとしては死がテーマだったシーズン2に近いが、イアン不在、リップとデビーがフィオナを拒絶するため、殺伐とした雰囲気。また、誰にも見舞われず、ひとり静かに死にゆくフランクを見るのも辛い。
精神状態が良くないときに観るのはやめた方がいい、シリアスなシーズンです。

あらすじ


長年の暴飲、麻薬乱用が祟り、体を壊したフランクは肝臓のドナーを探すがなかなか見つからない。
アルコールの禁断症状と、腎不全、肝硬変、食道穿孔などの体の不調に苦しむフランクだが、自業自得と子供たちは一蹴。だれも気にかけない中で唯一、三男カールだけが寄り添って看病する。

一方で正社員の座を勝ち取ったフィオナはようやく「普通の幸せ」を掴む。光熱費の支払いや、家事や、兄弟と親の世話でいっぱいいっぱいで、本来あってしかるべき青春を逃したフィオナに訪れた普通の日々。
妊娠に成功したベロニカと共に充実した日々を過ごすが、たった一度の過ちがすべてを破壊し・・・。

登場人物

フランク・ギャラガー(ウィリアム・メイシー):父。アルコール中毒で無職。
フィオナ・ギャラガー(エミー・ロッサム):長女。共依存症の世話焼き。
フィリップ・ギャラガー(ジェレミー・ホワイト):長男。通称リップ。大学生。
イアン・ギャラガー(キャメロン・モナハン):次男。ゲイ。軍人を夢見ている。
カール・ギャラガー(イーサン・カトスキー):三男。サイコパス傾向アリ。
デビー・ギャラガー(エマ・ケニー):次女。父曰く、「天使みたいな子」。反抗期に突入。
リアム・ギャラガー(ブレンドン・シムズ):四男。2歳。みんなのアイドル。
サミ:フランクの隠し子。長女。
チャッキー:サミの子供。

ベロニカ:仲のいいご近所さん。元看護師。不妊症。
ケビン :ベロニカの彼氏。フランクの行きつけのバー、『アリバイ』の店主。絶対浮気しないマン。

ミッキー・ミルコヴィッチ(ノエル・フィッシャー):近所の不良。イアンの彼氏。
マンディ・ミルコヴィッチ:ミッキーの妹。
モリー:マンディの妹。

シーラ・ジャクソン:潔癖症で広場恐怖症のご近所さん。フランクと不倫。
カレン・ジャクソン:シーラの娘。セックス依存症。
ジョディ・シルバーマン:カレンの夫。タトゥーの彫り師。
ハイミー・ジャクソン:カレンの子供。ダウン症。

マイク:フィオナの上司で新しい彼氏。
ロビー:マイクの兄。アルコール依存症。

スタッフ

原作 ポール・アボット
監督 ジョン・ウェルズ
脚本 ジョン・ウェルズ、ナンシー・ピメンタル、エイタン・フランクル、シーラ・キャラガン、デイビー・ホームズ、ミミ・リーダー、マーク・マイロッド

フランクの言動を通し、人間の弱さ、不完全さがよく表現されている

長年の飲酒が祟り、フランクの肝臓は、喀血したときにはもはや限界寸前となっていた。フランクは医師に、治療で治る見込みはなく、移植しかないと告げられるが、移植待ちの患者が年間一万五千人以上いるのに提供はその三分の一以下だと言われ、絶望する。

しかし、親族がドナーになれる場合もあると聞いて今まで連絡も取っていなかった長女(モニカ以外の女性との子供) を訪ね、同情を買ってドナーになってもらうことに成功するが、ドナーがいても手術には一千万円以上必要だった。

そこで、怪我をして保険金をせしめることを画策し、成功するが、保険金が下りるまでなんと一年半もかかるという。
更に悪いことに、長女の肝臓はフランクにマッチせず、移植は不可能だった。落胆したフランクはネイティブ・アメリカンの健康法を試してみることにするが・・・。

人間は弱い。弱くていい。

ここで思い出してほしいのは、これまでのシーズンでフランクが臓器移植に関して吐いたセリフである。

臓器移植なんざ自然に反する。他人の臓器をもらってまで生きようとするなんて欲張りじゃないか?
神のご意思は人間が自分の運命を受け入れることだ。自分の臓器がダメになったら死に時なのさ。
それなのにみんなもっといいものを欲しがる。
        (シーズン2・3話)

彼は確かにそう言って心臓移植を待つ女性に臓器提供の知らせの電話を取り継がずにそのまま死なせた。

しかし、いざ自分のこととなるとこれだけのことをする。生きたい、苦しみたくない、という思いでどんなことも試そうとする。

これこそ人間である。
死を宣告されて心穏やかに死ねるか?綺麗に死ねるか? そんなわけがない。
醜く、もがいてもがいて生きようとするのが人間である。
誰だって死にたくないし、苦しみたくないし、幸せに生きたい。ここを描けるのが一流の作家だと思う。

ガンだと言われて、不治の病だと言われて、はいそうですかと受け入れられる人間などいない。
闘病の苦痛を黙って耐え忍べる人もいない。
なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのかと運命を呪い、理不尽と不公平に怒り、病と死に恐怖し、絶望する。それが人間である。そしてそれでいい。人間は不完全で弱いから。

ここをすっ飛ばして「美しく潔い死」だけを描く作品は、だから一番好きになれない。
死と病は醜く、人間の本性を剥き出しにするものだ。それを、『シェイムレス』は見事に描いている。

リップの受難

念願のキャンパスライフを手に入れたリップだったが、常に金欠でバイトに明け暮れる日々。さらに、周りは中流以上のエリートばかりで馴染めない上、得意だった勉強でも挫折を味わう。
そんな日々に嫌気が差して、一度は大学をやめようとするが、なんとか持ち堪えて踏みとどまる。
しかし、順調だったフィオナのうっかりミスで大事件が発生。リップは更なる苦境に立たされることになる。

リップ、フィオナの荷物を半分背負うことを決意する

その事件の重大性から一度はフィオナを拒絶したリップはしかし、これまで自分がいかに彼女に甘えていたかに気づく。リップにとってフィオナは頼れる姉というより母親だった。だから、母親としての完璧な役割を果たすことを期待し、それが裏切られたから失望した。

しかし、成熟したリップは、そもそもフィオナに母親としての責任はないことに気づく。自分の夢、青春、進学を犠牲にして自分たちを育ててくれたのがどれだけありがたかったかを知る。
そして、フィオナを許す。
それと同時にフィオナがひとりで背負ってきた荷物を半分引き受けることを決意するのである。

このフィオナとリップの和解シーンは本当に感動した。ここがフィオナにとっての人生のターニングポイントとなり、やがて自分の人生を生きられるようになるだろう。

まとめ 軌道修正に成功

恋愛話に終始した昨シーズンとは異なり、人間性について掘り下げた内容が多かった。
特に、寝たきりのフランクとせわしなく動くリップ、子供がえりしたフランクと成熟してゆくリップの対比の鮮やかさ、フィオナからのバトンをしっかりと受け取ったリップが印象的なシーズンだった。

フィオナとマイクのロマンスが主軸となるだろうという予想が見事に裏切られた感じである。
全体にふわふわしていてライトだったシーズン3 とのバランスもいい。

来シーズンはイアンの病気とミッキーとの関係性が間違いなく大きなテーマのひとつとなるだろう。
シーズン3は若干迷走しかけた印象だったが軌道修正がお見事。
ヘビーだが、引き締まっていいシーズンだった。

次に期待!

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