初めてのトケノミクス
はじめに
Project LUCKと書く人
Project LUCKメンバーの佐藤です!Project LUCKというのは、株式会社マーキュリー(代表取締役:都木聡)の中で立ち上げたプロジェクトです。そのコアメンバーが日々、自分たちが学んだことや読者の皆さんとコミュニケーションをとりたいと思い、さまざまな記事を書いています。
今回のテーマ
暗号資産の価値を理解する上で重要となるのが、トークンエコノミクス(トケノミクス)です。トケノミクスとは、暗号資産における経済システムの設計を指し、トークンの発行方法、総供給量、流通の仕組みなどを包括的に示すものです。本記事では、代表的な暗号資産であるビットコインとイーサリアムを中心に、トケノミクスの基本的な仕組みについて解説します。
トケノミクスの基本概念
トークン発行の仕組み
暗号資産における「発行」とは、新しいトークンが市場に供給されることを指します。この発行方式は、各プロジェクトによって異なり、経済的な特性を決定づける重要な要素となっています。発行方式は大きく分けて、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)によるマイニング方式、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)によるステーキング報酬方式、リップル(XRP)などの暗号資産でみられる初期発行後の追加発行なし方式などが存在します。各方式には独自のメリットとデメリットがあり、プロジェクトの目的に応じて選択されています。
発行量の重要性
トークンの発行量は、その暗号資産の価値に直接的な影響を与えます。経済学の基本原理である需要と供給の法則に従い、発行量が限定的である場合、需要が一定以上であれば価値の上昇が期待できます。一方、無限発行の場合は、需要に応じて供給量を調整できるという利点がありますが、適切なバランスを保つための仕組みが必要となります。
ビットコインの発行システム
具体的な発行量の推移
ビットコインの総発行量は2100万枚に設定されています。発行の仕組みを時系列で見ていきましょう:
2009年(開始時):1ブロックあたり50BTC
2012年(第1回半減期):25BTC
2016年(第2回半減期):12.5BTC
2020年(第3回半減期):6.25BTC
2024年4月(第4回半減期):3.125BTC
このように約4年ごとに報酬が半分になっていきます。2024年11月現在、すでに総供給量の約1978万BTCが発行済みで、残りは約120万BTC程度となっています。
マイニングと報酬の仕組み
ビットコインは約10分ごとにブロックが生成され、その都度新しいビットコインが発行されます。例えば、現在の報酬3.125BTCの場合:
1日あたりの発行量:約450BTC(3.125BTC × 6回 × 24時間)
1年あたりの発行量:約164,250BTC
2140年頃に発行が終了した後は、取引手数料のみがマイナーへの報酬となります。現在でも、取引が混雑する時期には1取引あたり数千円から数万円の手数料が発生することがあり、この手数料がマイニング報酬とは別のマイナーの収入源となっています。
プルーフ・オブ・ワークについてはこちらで詳しく解説しています。
イーサリアムのトケノミクス
柔軟な発行システム
イーサリアムは、2022年9月のアップデート以降、発行量が大きく変更されました。現在の仕組みでは:
ステーキング参加者への報酬として新規発行
ネットワークの利用状況に応じて発行量が変動
取引手数料の一部を焼却(バーン)し現在の発行量から削除することで、実質的な供給量を調整
ステーキングするとどうなるの?👇
わかりやすい手数料償却の仕組み
イーサリアムの取引手数料は以下の2つに分かれています:
基本手数料:ネットワークの混雑状況に応じて変動する基本料金
この手数料は完全に焼却(バーン)される
例:混雑時には数千円、通常時で数百円程度
チップ(優先手数料):任意で追加できる優先料金
この部分はバリデータ(承認者)への報酬となる
例:基本手数料とは別に、数百円程度を上乗せ可能
焼却(バーン)の具体例:
1回の取引で基本手数料が0.01ETHの場合、この0.01ETHは完全に焼却
1日に100万回の取引があり、平均手数料が0.01ETHの場合、1日で10,000ETHが焼却
新規発行量よりも焼却量が多い場合、イーサリアムの総供給量は減少
イーサリアムについてこちら
その他のアルトコインのトケノミクス
一般的な発行方式
多くのアルトコインは、ビットコインに似た限定発行方式を採用しています。例えば、ライトコイン(LTC)は8400万枚、カルダノ(ADA)は450億枚という上限を設定しています。これは、トークンの価値を維持するための一般的なアプローチとなっています。
また、初期発行時に総供給量の大部分を発行し、その後は緩やかに追加発行を行う方式や、特定の条件下でのみ追加発行を認める方式など、様々な発行方法が存在します。
カルダノ(ADA)の詳しい解説はこちら👇
システム維持の課題
多くのプロジェクトでは、発行上限に達した後のシステム維持について、具体的な計画がまだ明確になっていません。ビットコインのように取引手数料での維持を目指すプロジェクトが多いものの、実現可能性については今後の検証が必要です。
トケノミクスの展望と課題
新しい発行方式や経済モデルの実験が続けられており、より効率的で持続可能なシステムの開発が期待されています。特に、DeFi(分散型金融)の発展に伴い、トークンの発行と流通に関する革新的なメカニズムが次々と提案されています。
例えば、動的な発行量調整、複数トークンの相互作用を考慮した経済設計、より洗練された手数料モデルなど、様々な実験が行われています。これらの取り組みは、暗号資産エコシステム全体の発展に貢献することが期待されています。