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Project LUCK 暗号資産探索〜マティック(MATIC)編〜

はじめに

Project LUCKと書く人

Project LUCKメンバーの松永です!Project LUCKというのは、株式会社マーキュリー(代表取締役:都木聡)の中で立ち上げたプロジェクトです。そのコアメンバーが日々、自分たちが学んだことや読者の皆さんとコミュニケーションをとりたいと思い、さまざまな記事を書いています。

今回のテーマ

今回は、Project LUCKの 暗号資産探索と題して、ブロックチェーン上のトランザクション(以後、TX)速度を向上させ、コストを削減することを目指すイーサリアムのセカンドレイヤープロジェクトである【MATIC(マティック)】についてご説明したいと思います!


【MATIC(マティック)】って何?

【MATIC(マティック)】を語る上で説明する必要があるのが【Polygon(ポリゴン)】となります。【Polygon(ポリゴン)】とは、イーサリアムのセカンドレイヤーの1つで、イーサリアムとの相互運用性を持ちながら、イーサリアムと同様にDApps(分散型アプリ)などの開発ができるブロックチェーンとなります。その【Polygon(ポリゴン)】の基軸通貨が【MATIC(マティック)】トークンとなり、DApps内での決済やネットワーク手数料の支払いなどに用いられています。

【Polygon(ポリゴン)】は、2021年2月に【MATIC(マティック)】から改称されましたが、基軸通貨の方は名称が変わらずに、【MATIC(マティック)】と呼ばれています。日本では、2022年6月に国内市場への初上場を果たし、【MATIC(マティック)】を取り扱う仮想通貨取引所は続々と増加傾向にある状態です。(この記事では【MATIC(マティック)】として説明していきます。)

【MATIC(マティック)】の特徴

イーサリアムを補完するレイヤーII技術

【MATIC(マティック)】は、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するための【レイヤー II ソリューション】と呼ばれます。

そもそもスケーラビリティとは、コンピューターにおいてのリソース(動作実行に必要な処理能力)の追加により、小規模から大規模なものへと拡張できる能力のことを指します。その中で起こるイーサリアムの【スケーラビリティ”問題”】は、その拡張が原因で、ユーザー数増加に伴うネットワーク全体のノードの検証作業が増加することにより、ブロックチェーン上での取引処理遅延や手数料の高騰が起きてしまう問題となります。

【MATIC(マティック)】は、イーサリアムのメインネットワーク(レイヤーI、以後L1)とは別に、サイドチェーン(レイヤーII、以後L2)を保持し、そこでTXを処理しています。サイドチェーンは、イーサリアムのネットワークと互換性があり、必要に応じてメインネットワークとデータをやり取りが可能となります。このようにして、イーサリアムのネットワークの負荷を軽減し、スケーラビリティを向上させていくのです。

PoS採用での迅速な取引

【MATIC(マティック)】は、コインの保有量と保有期間に応じた取引承認が行われるPoS(プルーフ・オブ・ステーク)を採用しています。PoSは、ビットコイン(BTC)などで採用されているPoW(プルーフ・オブ・ワーク)における、マイニングの電力消費量が膨大になった問題を解決するためのシステムとなります。

このシステムについて、【MATIC(マティック)】は、イーサリアム上のサイドチェーンとして機能しますが、直接TXへの書き込みは行わず、スパンのみをイーサリアムに書き込み、その後同期する形となります。また、PoSの仕様上、ブロックへの書き込みはステーク量で決定される形となります。(ただし、チェーンの運用には2つの役割を持つノード:Heimdall(※1) と Bor(※2) が必要になります。Polygon上の全てのノードに公開する【セントリーノード】と、そのセントリーノードにのみ情報公開を行う【バリデータノード】)

この仕様により、MATICを長期的に多く保有するほど取引承認の強い権限が付与されやすくなり、ブロックチェーンへの接続が速くなるため、迅速な処理、取引が可能となるのです。これは、イーサリアムの処理速度は1秒あたり15件ですが、【MATIC(マティック)】では1秒あたり6万5千件であることからもいかに迅速な取引かわかるでしょう。

※1 Heimdall:”Tendermint”をベースに作成されたコンセンサスレイヤーであり、イーサリアムレイヤーと並行して稼働する。イーサリアム上にデプロイされたステーキングコントラクトを監視し、Polygon上のチェックポイントをイーサリアム上にコミットする役割を果たす。”Heimdall”ノードは”Bor”(後述)が持っている情報を参照しながら、新しいチェックポイントの期間(=スパン)を提案する。現在の”Bor”のブロック番号が現在のスパンの間にある時、”Heimdall”は新しいスパンを提案できる。
※2 Bor:Go Ethereum(Geth)ベースの実行レイヤーであり、”Heimdall”ノードに対して現在のチェーン情報を提供する。イーサリアムとの状態同期の更新の役割も果たし、各スプリント開始ごとにステートの変更をコミットさせる。ブロックの生成を担当する。ブロックの生成に失敗→バックアッププロデューサーブロックを生成する。上記の場合、フォークする可能性がある。フォークする場合は難易度の高いブロックからフォークブロックが生成される。

ガス代が安い:手数料が安価

上記で述べたように、【MATIC(マティック)】のメインネットであるイーサリアムは【スケーラビリティ”問題”】を長らくの課題としていますが、それに対し、【MATIC(マティック)】では、TX処理にサイドチェーンを活用することで、セキュリティを保ちながら取引速度の向上と手数料の削減を同時に実現しています。

また、【MATIC(マティック)】では、世界で初めてイーサリアムに完全対応したスケーリングソリューションである<zkEVM>を発表しています。<zkEVM>は、”zero-knowledge Ethereum Virtual Machine”の略で、イーサリアムのセキュリティを継承しつつ、ゼロ知識(zero-knowledge)証明(※1)を活用することで、取引コスト削減と情報処理能力の大幅な向上を同時実現する技術のことを指します。

(※1 「ゼロ知識証明」とは、ある人が他の人に、自分の持っている命題が真であることを伝えるために、真であること以外の何の知識も伝えることなく証明するやりとりを言います。暗号資産(ブロックチェーン)では送金者、受取人、送金額などの取引内容を第三者に明かすことなく、その取引に対応する演算が確かに行われたことを示します。

「ゼロ知識署名」の特徴には主に【スケーラビリティ】向上と【秘匿性】向上があります。

【スケーラビリティ】向上機能では、まず複数のTXを一つの纏まりにし("Rollup"という)、その有効性を「ゼロ知識証明」の技術を用いて証明します。その後、TXの塊とその有効性証明をまとめてL1ブロックチェーンに提出します。L1ブロックチェーンでは、提出された上述のTXは既に有効性が証明されているため、検証者はその中身まで再度確認するという必要がなく、多くのTXを一括で検証することが可能となります。これによって検証にかかるスピード向上とコストの大幅な削減が実現可能となります。

また、【秘匿性】向上機能では、必要以上に情報を提供しないという点で、データに関する詳細情報の閲覧リスクや、企業の重要データの取り扱いなどにおいて、秘匿性に加え透明性を確保するものとなります。

出展:Plus Web3 『【L2ブロックチェーンの未来】ゼロ知識証明の概念を基礎から解説!』

【MATIC(マティック)】POLアップデート

暗号資産Polygonの開発企業Polygon Labs(ポリゴンラボ)は7月18日、コミュニティの承認を受けて、9月4日に現行のMATICトークンを、新たな【POL(Polygon Ecosystem Token)】トークンへの移行予定を発表しました。

MATICとPOLは、Ethereumネットワーク上とPolygonネットワークの両方で流通するため、以降は次のように表現します。

  • Ethereum上のMATIC:MATIC(Ethereum)

  • Polygon上のMATIC:MATIC(Polygon)

  • Ethereum上のPOL:POL(Ethereum)

  • Polygon上のPOL:POL(Polygon)

MATIC(Polygon)からPOL(Polygon)への移行により、Polygon上ではPOLでトランザクション手数料を支払ったり、ステーキングが可能となります。なお、MATICからPOLへの移行比率は1:1です。移行後、POLはMATICに代わって、ポリゴンのメインチェーン「Polygon PoS」でガス料金(手数料)の支払いとステーキングを行うことが出来るようになります。

なお、POLトークンへの移行は、ゼロ知識ベースの レイヤー II エコシステムを強化し、独自トークンの実用性を高めることを目指す大規模アップグレード「ポリゴン2.0」の一環として行われるものとなります。POLは、現在のコミュニティ・コンセンサスによると、将来的には、【ブロック生成】、【ゼロ知識証明生成】、【データ可用性】などで幅広い機能を持つことが出来るとされています。

引用

polygon.technology(Web3, Aggregated)

・Coinpost(『ポリゴン大型アップグレード、MATICからPOLのトークン移行は9月上旬実施へ』, A.Yamada, 2024/07/22 14:39)

polygon.technology(『Save the Date: MATIC → POL Migration Coming September 4th. Everything You Need to Know』, Polygon Labs, July 18th 2024)

・polygon.technology(『Polygon Announces The World’s First Zero-Knowledge (ZK) Scaling Solution Fully Compatible with Ethereum』, Polygon Labs, July 20th 2022)

・cryptonews(『仮想通貨ポリゴン(Polygon/MATIC)の今後【2024年、2025年、2030年価格予想】』, Hiroshi O.Shunsuke S., Aug 27th 2024)

https://jp.cryptonews.com/price-predictions/polygon-price-prediction/

・NRI(『コラムテクニカルエンジニアの視点 Web3の実現の鍵となるパブリック・ブロックチェーンの高速化(後編)』, 2023/10/26)

・Plus Web3(【L2ブロックチェーンの未来】ゼロ知識証明の概念を基礎から解説!, 2023-02-24 執筆, 2023-07-09再編集


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