仮想通貨(暗号資産)は「通貨」と言えるのか?
はじめに
Project LUCKと書く人
Project LUCKメンバーの中西です。Project LUCKというのは、株式会社マーキュリー(代表取締役:都木聡)の中で立ち上げたプロジェクトです。
そのコアメンバーが日々、自分たちが学んだことや読者の皆さんとコミュニケーションをとりたいと思い、さまざまな記事を書いています。
今回のテーマ
今回のテーマは、「仮想通貨(暗号資産)は「通貨」と言えるのか?」です。仮想通貨(暗号資産)って正直どんなものなのかよくわからないって人が大半だと思います。
単語だけ浮いてる感じで実際どんなものなのかが見えてこないんですよね…
そこで、そもそも通貨はどのようなもので、どんな機能を持つのか、という部分から深掘りしていきます。
1. そもそも「通貨」とは?
「通貨」とは、「価値尺度機能」、「交換機能」、「価値貯蔵機能」を持ち、商品取引を媒介する手段として、人々の間に広く流通しているものを指します。
と言っても、正直何がなんだかわからないですよね…
そこで、それぞれの機能について具体例を交えながら解説していきます。
1.1 価値尺度機能
例えば、通貨が存在せず、物々交換によって社会が成り立っているとします。
この社会では、農家と漁師が米と魚を交換する際、「米◯kgと魚△匹を交換する」という交換比率を設定しなければなりません。
取引量が少ないならこれで十分かもしれませんが、現実世界ではさまざまな種類の物が取引されています。
交換される物すべての組み合わせに対して、交換比率を設定するのは流石に大変ですよね…
そこで、「価値尺度機能」を持つ通貨を導入してみます。
そうすると、「米1kg◯円」、「魚1匹△円」というように、自分で値付けを行えるようになりました。
「通貨」が「価値を測るものさし」となり、あらゆる物の価値の比較が簡単にできるようになるため、人々は数多くの取引を行うようになります。
1.2 交換機能
今回も、物々交換によって成り立っている社会を考えてみます。
この社会では、取引を成立させるために、お互いの交換したい物が一致している相手を見つけなければなりません。
たくさんの人の中からそんな人を見つけるのは大変ですよね…
そこで、「交換機能」を持つ通貨を導入してみます。
そうすると、お互いの交換したい物が一致していなくても、通貨を介して取引が成立するようになりました。
このように、取引を媒介する機能を持つ「通貨」を導入することで、人々はより簡単に欲しいものを手に入れることができます。
1.3 価値貯蔵機能
例えば、米や魚は時間が経つと腐ってしまってその価値が完全になくなってしまいます。
これでは、人々がさまざまな取引を通じて豊かな暮らしを実現することはできませんよね?
したがって、「通貨」は時間経過などによって、その価値を大きく毀損しないという性質を持つ必要があります。
2. 暗号資産は「通貨」ではない?
ここまで「通貨」の機能について説明してきました。
次は、暗号資産(仮想通貨)、特にビットコインについて、それぞれの機能を評価してみます。
2.1 価値尺度機能に対する評価
まずは、「価値尺度機能」について考えてみます。
例えば、2024年の1月を考えてみると、ビットコインはおよそ15%ほどの値動きがありました。
仮にモノの値段がすべてビットコインで表示されていたとします。
たった1か月でここまで大きく値段が動いてしまうと、値札の示す価値が次々に変わってしまうため、安心して取引することは難しいはずです。
「通貨」が価値の尺度として機能するためには、価値が安定していなければなりません。
したがって、この点においてビットコインは、「通貨」として機能していないことになります。
2.2 交換機能に対する評価
次に「交換機能」について考えてみましょう。
ビットコインで支払いできる店はなくはないですが、様々な場所で普及しているとは言い難く、広く人々に受け入れられているとは言えません。
また、先ほども述べたように値動きが激しいため、普段の買い物で使うのは難しそうです。
以上の理由から、ビットコインはこの点においても「通貨」として機能していないと判断できます。
2.3 価値貯蔵機能に対する評価
最後に「価値保存機能」はどうでしょうか?
ビットコインは、2024年1月29日現在、1BTCは600万円以上で取引されており、価格変動のリスクを投資のチャンスと考える投資家からは、格好の投資対象と認識されています。
一方、価格変動を投資のチャンスであると考えていない人にとっては、安定した「価値保存機能」を持つものとして認識できないかもしれません。
このような状況を考えれば、ビットコインの「価値保存機能」は部分的にしか機能していないと判断できます。
3. 暗号資産が高い値段で取引される理由とは?
前章で紹介したように、暗号資産(仮想通貨)は「通貨」としての役割を果たしていません。
では、なぜ高い値段で取引されているのでしょうか?
参議院から発表されたレポート「通貨の将来と仮想通貨の意義 ~デジタル化とブロックチェーンがもたらすもの~ 」の中では、暗号資産(仮想通貨)の価値は「一般的受容性」に由来していると記載されています。
「一般的受容性」とは、「社会で広く信用され、受け入れられていること」を示す言葉です。
つまり、暗号資産(仮想通貨)が高い値段で取引される理由は、多くの人が「暗号資産には価値がある」と信じているからだと言えます。
人々の信頼が価値に直結すると聞くと、少し違和感を覚えるかもしれませんが、これは私たちが普段使っているお札にも言えることです。
例えば、一万円札の原価はおよそ20円ほどですが、人々がこの「紙」に一万円の価値があると信じているため、あらゆる物やサービスを購入することができます。
このように、人々の信頼によって本源的価値のないものに「価値」が生まれるのです。
※厳密には、法定通貨に無制限の強制通用力がある点で異なりますが、ここでは割愛します。
余談ですが、本レポートでは、「一般的受容性」の源泉として、以下の3つの要素が挙げられています。
つまり、暗号資産(仮想通貨)に対する人々の信頼は、上記3つの要素で構成されているということです。
今回の記事では取り上げませんが、かなり詳細に論じられているので、気になる方はぜひ読んでみてください。
4. おわりに
今回の記事では、「なぜ暗号資産(仮想通貨)が高い値段で取引されるのか?」について、通貨はどのようなもので、どんな機能を持つのか、という部分から深掘りしてきました。
最後にポイントをまとめてみます。
少しだけ言葉が難しかったかもしれませんが、普段あまり触れることのない「一般受容性」などの概念は調べていてとても面白かったので、ぜひ自分でも調べてみてください。
自分たちが普段何気なく使っている「通貨」が、どのように成立しているのかを深く理解することができると思います。
参考文献
通貨の将来と仮想通貨の意義 ~デジタル化とブロックチェーンがもたらすもの~
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?