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『スオミの話をしよう』の感想

三谷幸喜監督、脚本の『スオミの話をしよう』を見てきました。
正直、あまり面白くありませんでした。
いくつかの場面でクスリとしてしまうやり取りはありましたが、全編を物語が通してうまく流れていないと感じてしまいました。

私が勝手に考える、面白く感じられない理由を挙げていきます。
「勝手に言ってらぁ」という気持ちで読んでいただけたらと思います。
また、私は三谷幸喜作品が大好きで、三谷さん自身も大好きでエッセイ集も毎回購入しています。
そんな大ファンが少しこじらせたと思ってい頂けると嬉しいです。

①長回し
三谷さんは舞台も多く手掛けているので、映画では毎回カットを割らない長回しのシーンがあります。
今回の『スオミ』も長回しを多用していましたが、それが作品の面白さにプラスになっていないように感じました。
たとえば三谷さんの作品で『有頂天ホテル』があります。『有頂天ホテル』はリアルタイムでお話が進んでいきます。時間の経過を秒にまでこだわって創られた脚本が、長回しの映像の中で活きていました。
しかし今回は、長回しによる面白さへの加点部分はありませんでした。
これならばカットを細かく割って各シーンでのベストを撮った方が良いのではないかと思いました。
また映画全体の流れとして、夫が増える度にスオミとのエピソードが挟まれることで全体のテンポも悪かったと思います。
また、夫たちのシーンのほとんどが富豪の家のリビングで進むの代わり映えのない映像になっていました。
エピソードシーンとリビングシーンを交互に見せることで飽きさせないようにしたのかなと思いましたが、あまりうまくいっていないと感じました。

長回しは全てを写してしまうので、どうしても全体的に重く冗長に感じてしまいました。
その点で言うと『有頂天ホテル』は長回しのシーンが多くても、各シーンでの主役が変わり場面も変わるのでテンポの良い素晴らしい映画だと言えます。

②稽古
三谷さんはこの撮影のために1ヶ月の稽古期間を設けたとインタビューで語っていました。
しかし、私が見る限り役者の会話にテンポ感や、リズム感があまり感じられませんでした。
簡単に言えば、大変失礼ではありますが、笑えるシーンが少なかったです。
今回のキャストで三谷幸喜作品の常連組が少ないことは原因の一つだと思います。
特に、5人の夫役の中では小林隆さん以外はさほどコメディー作品には出ておらず会話やリアクションの間が一般的なドラマや映画と同じになっていたと思います。
夫間のやり取りがうまくいっていない事により、リビングシーンが笑えなくなり、先ほど述べたエピソードシーンとリビングシーンの対比がうまくいかず映画全体のテンポが悪くなったのだと思います。
なので今回、稽古期間を設けた理由はリビングシーンのコメディー部分を強化するためなのかと邪推しています。

舞台での三谷さんは役者が慣れることを嫌います。
そのためイタズラを仕掛けて舞台での新鮮さを保つそうですが、その習慣が悪いほうに出たのかなと思いました。
インタビューでは役者をびっくりさせるため・笑わせるために、小道具に細工したり、メイクをこっそり変更したと言っていました。
それらが映画の中で小手先で笑いを取ろうとしているように見えてしまいました。
これならば、本番一発の緊張感の中で余計なことはしない演技合戦のほうが良いと感じました。

私は舞台を見ることが好きなので、舞台の手法を映画に取りいえることに違和感は感じません。
しかし、映画と舞台はやっぱり異なるものなので、舞台の手法そのままでなく、かみ砕いて再構築して映画に取り組んでほしいと思います。

③CM
CMでは、今回の映画は「ミステリー」として扱っています。
本当にこれはミステリーなのかなと思いました。
失踪事件の真相は大体の人は感づいたと思います。
ミステリーというには謎の部分が薄かったですね。
また、スオミという人物がミステリーなのだとしたら「ただ相手に合わせてしまう」ということは肩透かしだと思いました。
ミステリーというならば、もうすこし謎は謎として提示してほしいですし、真相部分は力業でもいいので納得させてほしいと思いました。

また、今回のCMでは「元夫が5人、スオミの人格がバラバラ」などが流れていましたが、これは映画本編の根幹部分、重要部分のネタバレではないかと思います。
今回の映画では瀬戸さんが演じるキャラクターが最も観客に近い存在だと思います。
なのでそのキャラが初めて知った事実が観客も初めて知った事実であることがこの映画を見る上での面白いポイントだと思います。
しかし、あのCMを観たせいで「5人夫がいるんだな、メンバーはこの人たちだな、この順番で再婚したんだな」と分かった状態で見てしまうので、瀬戸さんがリアクションをしても「知ってるよ」となってしまいます。
これは映画を見ることによる驚きや笑いなど心が揺れるポイントをつぶすことに繋がるのではないかと思います。
CMでどこまで伝えるのかは難しいと思いますがもうすこしなんとかなったのではと思っています。

いろいろと感想を述べてきました。
しかし私は三谷さんの大ファンなので『スオミの話をしよう』のBlu-rayが発売されたら買いますし、映画を撮ったら見に行きます。
まだまだ創作の意欲は尽きていないとおっしゃっていたので、これからも応援していきます。





ここからは無駄話と与太話


私の中のイマジナリー三谷幸喜ならば今回の『スオミ』はこうするのではないかという妄想をここから書きます。
なので、共感性羞恥を強く感じてしまう方はこれ以上は読まないことをお勧めします。


『スオミ』の終盤のスオミと5人の夫が対面するシーンは賛否はあると思いますが私は少し笑いました。
一人一人に合わせてキャラクターを変えていく様子は面白かったです。
また、舞台の三谷さんは天才的だと思う作品はかなり多いです。
「12人の優しい日本人」「笑いの大学」「オケピ!」「バッドニュース☆グッドタイミング」「コンフィダント・絆」「90ミニッツ」「おのれナポレオン」「ショー・マスト・ゴーオン」などがあります。まだまだあります。
これらすべてに共通するわけではありませんが、三谷作品で多いのが主人公や主人公周辺の人物があたふたしたり、困っていたり、じたばたしています。
自分に降りかかった困難を一生懸命どうにかしようとしている様子が面白くその姿にワクワクします。
なので『スオミ』が夫たちの前でキャラクターを変化させている姿はとても面白いと感じました。
なので、私は映画全編にわたってスオミさんにあたふたさせたほうがいいのではと考えています。


映画の舞台はリビングではなく広く動きが取れる場所がいいと思い、夫の出版記念パーティーの会場とします。
(登場人物の職業は大体同じで、遠藤さんだけパーティー会場の料理人かなと思います)

妄想あらすじ
会場スタッフと戸塚さんと宮澤さんが会場の準備をしているところに西島さんと瀬戸さんが現れます。
「パーティーを中止しろ」と怪文書が詩人のもとに送られ、心配した戸塚さんがこの二人を極秘で呼びました。
別室にて長澤さんは宮澤さんから「会場に西島さんが来た」と伝えられ、そのことを知らなかった長澤さんは驚きます。
長澤さんは過去の夫たちには別々のキャラクターで接しておりそのことを知られたくなかったのです。
長澤さんが会場から帰りたいと言っても坂東さん帰ることを許されない状況になります。
さらにここから、小林さんが捜査の応援として現れ、松坂さんが出版記念パーティーを盛り上げるインフルエンサーのユーチューバーとして現れて、遠藤さんが料理人として会場に姿を現して長澤さんがどんどん窮地に陥りそして、という感じはどうでしょうか。
ラストは夫たち5人と長澤さんだけが残り『スオミ』の最後のシーンと同じやり取りをし、最後の最後に長澤さんが限界になり感情が爆発して新たな激しめのキャラになり「これが本当のわたしだ」的なところで富豪の元を去っていく。そして、最後のミュージカルシーンに突入でおしまい。

妄想シーン
・長澤さんと宮澤さんは元夫が二人以上同時にいるところには近づかないように逃げたり、人の陰に隠れたり、相手の気をそらしたり
・戸塚さんが長澤さんのキャラ変を見て驚く
・戸塚さんを長澤さん陣営に巻き込む
・なぜか瀬戸さんだけ長澤さんを正面から見ることができない
・最初の怪文書の差出人が小林さんで「だって会いたかったんだもん」とか言い出す
・元夫同士の会話がなんか嚙み合わない
・元夫のマウントの取り合い とか

いかがでしょうか。
私の妄想『スオミ』です。
気持ち悪いですね。

こんな妄想をしてしまうくらい三谷さんの作品が好きだということです。







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