2025年 第23回JJMO本選の解答速報、解説

JJMOも侮るなかれ、結構難しかったです。
来年は人生最後のJJMOを受けられるのですが、その分JMOを受けられる回数が減るのでどうしたものか…

(注意)
問題文はありません。
また、全体的に、考え方の部分でいつもより解答に近づいている、というかほぼ答えが出ているので、途中まで見て自分で解くことをお勧めします。
2/16現在、1,2,3,5問目は完全に解けていますが、まだ4は解けていません。






1問目の考え方

2024年JMO本選3問目に似ていますね。

まず、めいいっぱいの長さの横線or縦線で覆うことができ、このとき印をつけた良い点の個数は2×2025=4050となります。
これより最適な解は中々思いつきませんので、ひとまずはこれが最適ということにしておきましょう。

少なくとも1つの集合(線分)に含まれるような
最適化では、含み得る集合の種類が多い点よりも、なるべく含まれにくい点を考えてみましょう。

ある良い点Pについて、それを含むような線分を取るには、それと同じ行もしくは列にある2つの良い点であり、Pを挟むような位置にある必要があります。

なので、(a,b)なる点を挟む線分の個数はa(2026-a)+b(2026-b)であり、これはa,bが1か2025、すなわち四隅のとき最小になります。

なので、四隅、さらにそれを除いた内側の正方形の四隅、さらに…というような点について考察してみましょう。

これらを踏まえて、解答を作っていきましょう。


1問目の解答

対角線上にある良い点全てに印を付けると条件を満たし、このとき印をつけた点の個数は、2×2025-1=4049となる。

以降、これが最適であることを示す。

良い点を以下のように4049個の集合に分割する。



黒丸が良い点、黒実線枠が各集合

それぞれの集合は、ちょうど1つずつ対角線上の良い点を含み、そのような点を各集合の「代表元」と呼称する。
ある集合Aの代表元であるような点Pについて、それを含むような線分を取るには、それと同じ行もしくは列にある2つの良い点であり、Pを挟むような位置にある必要があり、これを満たすには、集合Aに印が付いた良い点が少なくとも1つ存在する必要がある。

よって、印をつけた点は4049個以上であり、答えは4049。…(答)

コメント…
予想の最適解よりも、さらに最適な解が存在しましたね。
予想の解では、真ん中の十字形の集合に2つの印のついた点がありますが、最適解ではクロス部分に1つだけ印をつけています。

また、考え方における方針と解答の方針がかけ離れているのでは?と思うかもしれませんが、より内側の正方形で各集合を切り取ると、元の方針から派生したものであるとわかるかと思います。

2問目の考え方

ある頂点の数をxとすると、その隣の頂点の数は1/x(x≠0)or1-xということですね。

ここで、この2つはどちらも双対的なものであることに気づくかと思います。
すなわち、これら2つの関数はf(f(x))=xを満たすのです。

これは、足し算掛け算に交換法則が成り立つことに由来します。

繰り返し、つまり同じ関数が続くことでこういった性質が発揮されるということで、連続した鎖で分解してみます。

同じ関数の鎖が偶数個連続すれば何も起こらず、奇数個連続したときだけ関数が作用すると言えます。

これらを踏まえて、解答を作っていきます。

2問目の解答


ある頂点に書かれている数をxとし、関数f,gを

f(x)=1-x
g(x)=1/x(x≠0)

とすると、xにf,gを計2025回合成した数が、またxとなる。

ここで、f(f(x))=xおよびg(g(x))=xより、f,gのうち一方が奇数回連続して合成された部分はそれぞれf,gと書き換え、偶数回連続して合成された部分は消し去っても値は変化しない。

2025は奇数のため、f,gを交互に奇数回合成する場合のみ考えれば良い。

f(x)=1-x…①
g(x)=1/x(x≠0)…②
f(g(f(x)))=1-1/(1-x)=x/(x-1)(x≠1)…③
g(f(g(x)))=1/(1-1/x)=x/(x-1)(x≠0,1)…④

ここで、f(g(f(g(x))))=g(f(g(f(x))))=xより、4つ以上の関数を合成する場合は考えなくても良い。

①=xを満たすとき、x=1/2
②=xを満たすとき、x=±1
③=xを満たすとき、x=0,2
④を満たすとき、x=2

となる。
1/2,±1については、それのみの単一の数字を全ての頂点に書けば条件を満たす。

0については、ある1つの頂点に0を書き、他の2024個の頂点には全て1を書けば条件を満たす。

また、2については、ある1つの頂点に2を書き、他の2024個の頂点には全て-1を書けば条件を満たし、十分性は示された。

よって、答えは1/2,±1,0,2…(答)

コメント…g(f(x))=1/1-x,f(g(x))=1-1/xなどの関数を2回合成するともとに戻るという性質は、メビウス変換や行列について知っていると気づきやすいかも?
ちなみに、偶数個の合成だとしても、1/1-x=xや1-1/x=xは実数解が存在しないため、考察無用だったかも?

3問目の考え方

自由度は7であり、特に平行四辺形ABCDおよび対角線上のEによって状況が一意的に定まります。


示すべき命題から逆算してみます。

CP=CP',CQ=CQから、C中心の回転合同の構図が垣間見えます。

PQ'=P'Qを示すために、あと不足している条件は、∠PCP'=∠QCQ'のみです。

P',Q'は説明にはもう必要ないので、これを使わずに式を表すと、∠BCP=∠QCDとなります。

設定にある共円の条件からは新たな共円はあまり見つからず、Eが対角線AC上にあるという条件が角度に取り入れにくいことが分かります。
さらに、Cは対角線ACに点Eが存在することと、さっきの角度の条件の説明にしか使われてないので、うまく追い出したいところです。

そこでCが、△ABEの外接円、△ADEの外接円の根軸上にあると捉えることで条件を言いかえてあげましょう。

同時に、角度の条件∠BCP=∠QCDにもCが含まれているので、Cを含まない角度で表したいところです。

これらを踏まえて、解答を作っていきます。


3問目の解答

まず、

補題…∠BCP=∠QCD

を示す。

図1
補題の証明、補助線と補助円を引いた

□ABEPの外接円と直線BCの、Bでない交点、□ADEQの外接円と直線CDの、Dでない交点を、それぞれF,Gとする。

このとき、□ABFP,□ADGQは等脚台形となり、AB=PF=DC,AD=QP=BCより、□BCGQ,□CDPFも等脚台形となる。

よって、
∠BCP=∠FDP…①
∠QCD=∠QBG…②
を満たす。

ここで、□ABEPの外接円と□ADEQの外接円の2円の根軸である直線AE上に点Cが存在するため、根心の存在の逆より4点BFGDは共円であり、

∠FBG=∠FDG…③

を満たす。

③および平行四辺形の性質∠ABC=∠CDAより、

∠ABC-∠FBG=∠CDA-∠FDG
∠QBG=∠FDP

これと①②より、補題は示された。




本題に戻る。


図2
補題を踏まえた本題の図

補題より、
2∠BCP=2∠QCD
∠PCP'=∠QCQ'
∠PCP'-∠PCQ=∠QCQ'-∠PCQ
∠P'CQ=∠PCQ'

また、PC=PC'およびQC=Q'Cより、△PCQ'≡△P'CQであり、P'Q=PQ'は示された。…(答)


コメント…本問のようにあからさまに前半後半に分けられた問題は、大体「前半だけだと題意があまり面白くない形になって締まりが悪い…」「題意をそのまま書いたら逆に辿りやすい…」という意図があるような気がします。

平行線と円の問題は、等脚台形が現れやすいです。

4問目の考え方(模索中)





4問目の解答(模索中)





5問目の考え方

大小関係に関する場合の数ですね。

書き込む側の自由度が高いので、書き込む側として、そのような(s,t,i)の個数を最小化する試みを考えてみます。

なるべく条件を満たす大小関係を逃れようと、逃れようとしてみても、1→2→…→i→1と、ぐるっと一周する比較のせいで、どうしてもそのような(s,t,i)が生じるかと思います。

つまり、この問題の肝はぐるっと一周する中には必ず条件を満たすような(s,t,i)が存在するということです。

実際に、紙iにはm(i-1)+1以上mi以下の、m個の整数を書くことで、どのような一周ぐるっとの中にも、条件を満たす組(s,t,i)はちょうど1つ存在し、その個数がm²という最適値になっています。

なので、ぐるっと一周するようなn個の(s,t,i)の組を、m²個用意して、それぞれに少なくとも1つ条件を満たすものが存在すると示すことができそうです。

(s,t,i)という組に、紙iのグループの頂点sと、紙i+1のグループの頂点tを結んでいくような辺のイメージがあるので、グラフ理論的な表現が可能そうですね。

これらを踏まえて、解答を作っていきます。


5問目の解答

以下の補題を示す。

補題…それぞれの要素数がmであるような頂点集合Ai(i=1,2,…,n)について、AiからA_(i+1)への2部完全グラフ(有向グラフ)をKiとする。
また、K₁,K₂,…,Knの和グラフをXとする。
このとき、Xには、以下の条件を満たすような、互いに素なm²個のグラフSj(1≦j≦m²)による分割が存在する。

・どのSjについても、Kiそれぞれから1つずつ辺を取った辺数nのグラフであり、連結な1つのサイクルである。



数学的帰納法を用いて示す。

(i)n=2の場合
S₁={(x,y)|x∈A₁,y∈A₂}、S₂={(y,x)|x∈A₁,y∈A₂}
とすることで条件を満たす。

(ii)n=k(k≧2)で補題を満たすときの、n=k+1の場合

n=kのとき、Sj(j=1,2,…,m²)が条件を満たすとする。

ここで、m²個の1以上m以下の整数a_(x,y)
(x,yは1以上m以下の整数)は、m×mのx行目y列目にa_(x,y)を書き込んで得られる方陣について、各行および各列に書き込んだm個の数が相異なるようなものとする。
このようなa_(x,y)は少なくとも1つ存在することが、よく知られている。


すると、以下のようにグラフS'jをとることで、n=k+1のときにも補題を満たすことが示される。
ただし、頂点集合Ai(i=1,2,…,n)のm個の元はそれぞれ、1以上m以下の各整数でラベリングされているものとする。

・Sjの辺のうち、Akの頂点xとA₁の頂点yを結ぶようなものを削除する。
そして、Akの頂点xとA_(k+1)の頂点a_(x,y)、およびA_(k+1)の頂点a_(x,y)とA₁の頂点yを辺で結んだものをS'jとする。


(i),(ii)より、補題は示された。


本題に戻る。

紙iに書き込まれたm個の実数全てからなる集合をAiとする。
紙に書き込んだmn個の実数全体を頂点集合に持ち、組(s,t,i)(s∈Ai,t∈A_(i+1))を辺(s,t)として持つようなグラフを考える。

このとき、補題より、以下の条件を満たす、互いに素なm²個のグラフSj(1≦j≦m²)が存在する。

・どのSjについても、Kiそれぞれから1つずつ辺を取った辺数nのグラフであり、連結な1つのサイクルである。

ここで、各Sjについて、それに含まれるn個の辺(s,t,i)のうち、明らかに少なくとも1つはs≦tである。

よって、m²個のグラフSjから1つずつ、相異なる(s,t,i)でありs≦tなるものを取ることができ、題意は示された。…(答)


コメント…本解におけるa_(x,y)はラテン方陣と呼ばれ、有名な組み合わせ論の題材です。
a_(x,y)として具体的なもの(例えば(x+y)modmとか)を取れば帰納法を使わずに解けたかもしれませんが、本質的な工夫ではないためこうして抽象的に解きました。


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