2020年度IMOロシア大会1問目の解答、解説
幾何の問題です。
私はこういったキモい(褒め言葉)角度の問題の、謎解き感が大好きでして、2021年度ロシア大会3問目、2018年度ルーマニア大会6問目、2018年度春合宿1問目、2014年度南アフリカ大会3問目、2004年度ギリシャ大会5問目の解説もいずれ上げようと思います。
問題
凸四角形ABCDの内部に点Pがあり、以下の等式を満たしている。
∠PAD:∠PBA:∠DPA=1:2:3=∠CBP:∠BAP:∠BPC
このとき、∠ADPの二等分線、∠PCBの二等分線および線分ABの垂直二等分線が1点で交わることを示せ。
考え方
条件はA⇔B、C⇔Dに関して対称的であることがうかがえます。
自由度は三角形1つ分で、もっと言うと⊿ABPが自由に動き、1辺両端角で△APC,△BPDすなわちC,Dが一意的に定まることが分かります。
また、角度の問題では珍しい3倍角があります。
逆に、3倍角をそのまま放っておいても扱いに困るということで、分割してやろうと思います。
やみくもに分割するのではなく、こういった難角問題では、
1…平行
2…直交
3…共円条件
4…接弦定理
5…二等辺三角形
などを作るようにして補助線だったりを引くのが典型です。
以上のことを踏まえて、解答を作っていきます。
解答
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辺BC,DA上にそれぞれ点E,Fを、
∠BPE:∠EPC=∠APF:∠FPD=1:2
なるようにとる。
すると、上図のように、
∠BAP:∠PBE:∠BPE:∠EPC:∠PEC
=∠ABP:∠PAF:∠APF:∠FPD:∠PFD
=2:1:1:2:2
となる。
∠BAP=∠PECおよび∠ABP=∠PFDより、5点A,B,E,F,Pは、ある円O上に存在する。
また、∠EPC=∠PECおよび∠FPD=∠PFDより、⊿ECP,⊿FPDは二等辺三角形のため、
∠ADP,∠PCBの二等分線はそれぞれ線分FP,PEの垂直二等分線である。
線分AB,FP,PEの垂直二等分線は全てOを通るため、これらは1点Oで交わり、題意は示された。…(答)
感想
あまり見ない角度の比という条件に面を喰らいましたが、補助線1発の問題でした。
角度の条件から共円を作ったら、その円から別の角度の条件を取り出す(円周角の定理など)ために使うことが多いですが、1点で交わることを示すために使えるということに気付かされました。