1986年IMOポーランド大会5問目の解答、解説
条件が分かれている関数方程式の問題です。
数オリの関数方程式の中でも、かなり戦略的な問題かと思います。
問題
関数f:ℝ₀→ℝ₀であり、以下の3条件を同時に満たすようなものをすべて求めよ。
(i)任意のx,y∈ℝ₀について、f(xf(y))f(y)=f(x+y)
(ii)f(2)=0
(iii)0≦x<2なる任意のxについて、f(x)≠0
考え方
とりあえず(ii)を(i)に代入してみます(値がそのまま示されている条件はとりま代入するのがキホン)。
yに代入すると、かなり単純な式
f(x+2)=0
が得られます。
これは、2≦xなる任意のxについてf(x)=0であることを意味し、条件(ⅲ)と対になっていることがうかがえます。
つまり、x=2を境に、f(x)の値が非ゼロとゼロで分かれているのです。
さらに条件(i)において、左辺が関数値のみの積からなる単項式となっているので、0と積に関する諸性質が使えそうです。
これらをふまえて、解答を作っていきましょう。
解答
y=2を(i)に代入すると、(ii)より、
f(xf(2))f(2)=0=f(x+2)
上記の式と(ⅲ)を組み合わせると
f(x)=0⇔x≧2…①
が成り立つ。
改めて、(ⅰ)において0≦y<2とすると、0<f(y)より、f(xf(y))=0⇔f(x+y)=0。
①より、
xf(y)≧2⇔x+y≧2
f(y)>0より、
x≧2/f(y)⇔x≧2-y
2/f(y),2-yは非負実数であり、xは任意の非負実数を取り得るため、
2/f(y)=2-y
f(y)=2/(2-y)
よって、fの解の候補は、
f(x)=2/(2-x)(0≦x<2)
0(2≦x)…(答)
のみとなる。
以降は、実際にこれが条件(i)(ii)(ⅲ)を満たすfの解であることを示す。
明らかに(ii)(iii)は満たされるため、(ⅰ)について確認する。
(a)0≦x+y<2である場合
0≦y<2より、
f(2x/(2-y))(2/(2-y))=2/(2-x-y)
f(2x/(2-y))=(2-y)/(2-x-y)
0≦x+y<2から2x/(2-y)<2を示すことができ、
f(2x/(2-y))=2/(2-2x/(2-y))=(2-y)/(2-x-y)
よって、0≦x+y<2の場合、条件(ⅰ)が満たされる。
(b)2≦x+yの場合
f(xf(y))f(y)=f(x+y)=0…②
以降、背理法を用いて②式が成り立つことを示す。
f(xf(y)),f(y)>0と仮定して矛盾を導く。
f(y)>0より、0≦y<2かつf(y)=2/(2-y)である。
f(xf(y))>0より、0≦xf(y)<2であり、
0≦xf(y)<2
0≦2x/(2-y)<2
0≦2x/<2(2-y)
x+y<2
しかし、これはx+y≧2であることに矛盾する。
よって仮定は間違っており、②式は成り立つ。
(a)(b)より、fの十分性は示された。
感想
x≧a⇔x≧bからa=bを示すという方法は関数方程式以外の分野でも使える、便利な手法です。
今回のように、元は不等式なんてなく自分で不等式をこしらえて上記を使うという場合が多いです。