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『フェイク・マッスル』異色のマッスルミステリーはボディビルの世界がよくわかる良書

筋トレ界隈だけでない話題作『フェイク・マッスル』を読みました。
前評判が高い本でしたが、読後感としては新鮮な感じを受けました。
ネタバレのない形で感想を書いてみたいと思います。


薬物が蔓延するボディビル業界の闇

ざっくり内容について説明すると、「ミステリーを読んでいるつもりで、読み終わったらボディビル業界(の闇)について詳しくなっていた」そんな内容です。
ミステリーのトリックはそれほど深いものでもなく、全体の話としても複雑ではないですが、ボディビル業界やお薬の話、体を鍛えることについての軽い知識は身につくと思います。
これは新しい小説のあり方ではないかと思います。
ボディビル業界にある闇の部分(薬物汚染)について、疑惑を追うという内容なので、小説を読んでいたら、いつの間にかボディビル業界の闇について詳しくなったぜ!
となれます。

ご当地小説に近い手法

ご当地小説ってありますよね。
特定の地域を舞台にして、そこで物語が進行するあれは元々その地域をPRするものではないと思いますが、読むことでその地域に詳しくなる、行きたくなるという内容のもの。
それに近い内容ですね。
こういった小説という手法でその業界の表部分だけでは無い裏部分まで描くというのはあくまでフィクションという小説の前提でありつつ、ノンフィクションの部分を描くというのは企業小説ではありましたが、いろんな分野で応用できるものですよね。
ボディビル業界の闇の部分というのはよくYouTube上でもトレーニングをしている人に対する疑惑として話題になったり、なぜ大会(団体)によって筋肉のつき方が違うのだろう、という疑問が生じることがあると思いますが、その理由がよくわかる内容となっています。

どういった人に読んで欲しいか

筋力トレーニングを始めようとして情報収集を行うと、ボディビルやフィジークといったボディメイキングの大会に関する情報に接する機会が多くなると思います。
そうすると「あいつはステロイドを使っている」「いや検査のある大会に出ているのだから使っていない」「昔は使っていた」などの意見に遭遇して、一体何が真実なのかわからなくなる、といった事態に陥ることがあります。
一般的にスポーツをする方にとってステロイドを使用するといったことは考えられないことでしょう。
ステロイドなんて一部の社会主義国が自分の国の権威を示すために選手に使わせている、私もそのように思っておりました。
それがボディメイク業界では公然と行われている可能性がある。
そもそも日本では個人的な所持、使用は違法ではない。
なぜそのようなことになってしまうのか、知りたい方はぜひ読んでみてください。
単なるミステリー好きの方については・・・読む必要はないかもしてません❤️

避けては通れないアナボリックステロイドの誘惑

いわゆる「マッチョ」というのは一般的にあまり好意的に見られることは多くありません。
女性がマッチョを見て"キモい"というのはある意味自然な感想です。
見た目として筋肉がモリモリして、筋肉の境目がくっきり分かれるほど体脂肪を減らしている状態というのは見慣れない方についてはあまり気持ちのよいものではないでしょう。
ただ、自身がトレーニングを行っている方ですと、経験から筋肉が簡単につくものではなく、ある程度の期間が必要であることがわかってきていますので、だからこそ筋肉がついてくるとそれまでの苦労が報われた、ひとしお嬉しく感じます。
そういう立場の人がマッチョな人を見ると「これだけの肉体を作るにはかなりのトレーニング量を積んできたのだろう。その上、体脂肪を減少させるためには食べたいものを何ヶ月も我慢してたどり着いたのだろう」として自らのトレーニング、減量の体験と重ね合わせた上でマッチョを見ることになりますので、見方が違うのです。
そのようにしてみていた筋肉が、実はアナボリックステロイドによってそれほどの苦労もなく作られたものだとしたら・・・裏切られた気持ちになり、憎悪に近い感情を抱くことになることもあるかもしれません。
でも、楽に筋肉をつけられるのであれば自分も使ってみたい、そういう悪魔の囁きを少なからず思い浮かぶこともあると思います。
最初は健康になりたくて、合わせて体つきも良くなればいいな、として始めた筋力トレーニングが途中で目的が筋肉ムキムキになるためにはアナボリックステロイドを使用して健康を害してもいい、という思考になってしまうのは本末転倒ですね。
この小説はそういったことに気づかせてくれるかもしれません。


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