海外鉄道の録音撮影旅―7度目の渡韓編― その3
~2024年11月6日(水)から12日(火)にかけ、韓国の鉄道旅行をしてきました。
電車の録音や撮影を趣味とする人間の、一風変わった旅行記をお読みいただけたらと思います。~
前回の記事はこちら↓
4号線のトングリを撮影した後は、録音もしたい。
3日目の朝、スマートフォンを開けて運用を確認すると、何と4本もトングリが走っているではないか。
4号線を走るKORAILの341000系トングリは、341X26編成から341X30編成までの5本が在籍していた。
341X26編成は、制御機器が宇進産電製のIGBT-VVVF改造されているものの、他の341X27編成から341X30編成までは登場時の宇進産電製GTO-VVVFが搭載されている。
私は未更新のGTOが好きなので、運用入りしていた3本の未更新車のうち1本を録音すべく、早々にホテルを出た。
前日は西海線を使って4号線を目指したが、今回はまた違ったルートで訪れることにした。
まずはホテル脇の地下道に入り、仁川1号線の乗り場を目指した。
ここから、수인・분단선(水仁・盆唐線 スイン・ブンダン線)の乗換駅の원인재(源仁斎 ウォニンジェ)駅まで乗車した。
水仁・盆唐線は、ソウル市内の清涼里と仁川を結ぶ路線であるが、南側の郊外をぐるっと遠回りして走るので、全区間乗り通すことは通常無い。
日本でいえば、大部分地下を走る武蔵野線のようなものだ。
오이도(烏耳島 オイド)駅と한대앞(漢大前)駅の間で4号線と線路を共有しているので、そのまま4号線の区間に入れる。
10分少々待って、やって来た왕십리(往十里 ワンシムニ)行きの普通列車に乗り込んだ。
烏耳島到着前に運用サイトを開くと、ちょうど烏耳島行きの341X26編成が近くまで迫っていることが分かった。
こちらは概ね定刻で走っているものの、341X26編成は都心での混雑で5分ほど遅延していた。
烏耳島の次の정왕(正往 チョンワン)という駅は、日差しとは逆方向ながら、とても良い角度で撮影できる。
そこで、際どいタイミングではありながら、正往で撮影してみようと思った。
ところが、こちらが正往に到着すると同時に、341X26編成も入線してきてしまったため、撮影は失敗に終わった。
仕方なく、隣の신길온천(新吉温泉 シンギルオンチョン)駅で別の列車でも撮影しようと訪れたものの、程なくして目的のトングリである341X28編成がやって来る時刻となり、空振りに終わった。
341X28編成は烏耳島到着後、一旦車庫の方へ引き上げていった。
引き上げると言っても、烏耳島の場合は2つのパターンがある。
1つ目は、駅北方にある車庫へ入るパターンだ。
この場合は、そのまま運用を終えて午後または翌日以降まで留置される場合もある。
もう1つは、水仁線の월곶(月串 ウォルゴッ)という駅まで回送するパターンだ。
月串は烏耳島から2つ目の駅で、車庫は無いものの折返し用の設備があるため、ほぼ必ず次の運用にも入る。
この2つのパターンは、烏耳島を発車する時に区別がつく。
前者の場合、駅を出てすぐ左に分岐するため、発車後すぐに加速を中断する。
一方後者は、そのまま2駅先まで走るため、そのまま最高速度まで加速して去っていく。
今回は2つ目のパターンだったため、じき列車が折り返してくるであろうことが予想された。
さて、およそ15分後、予想通り341X28編成の回送がやって来た。
ドアが開いた瞬間に車内へ入り、録音に最も適した座席を確保した。
特に録音方法に関して述べてこなかったが、実は車両や場所選びが重要である。
電車の場合、録音はモーター(電動機)の近くで行う。
多くの場合、モーターが搭載されている車両は編成の一部なので、必ず当該の車両を選ぶ必要がある。
トングリの場合は、10両中6両がモーターを搭載しているので、その車両を予め調べて選んでおく。
モーターは、動力車の走り装置である台車に搭載されており、概ね車両の両端に1対ずつ設置されている。
即ち、動力車の車端部付近で録音を行うこととなる。
録音機材自体は非常に小さいので、荷物の中に入れて足下に置くか、着席状態ならば足と足の間に置いて荷物で目隠しする。
韓国では車端部が優先座席となっており、必要とする方以外は絶対に座らないのがルールなので、それ以外で最も台車に近い座席に機材をセットする。
この状態で終点まで乗り通すと、始発駅から終着駅まで録音が完了しているという、そういう話である。
何も機材を手に持って何かする訳ではないので、乗っている間は本を読んだり景色を見たり、何をしていたって良い。
大声で会話する人たちに遭遇すると録り直しを考えるけれども、特段苦労している訳ではないので、時間さえあれば諦めがつく。
そんな感じで、この日は丸一日、時間が許す限りトングリに身を捧げようと思う。
烏耳島から終点の仏岩山までは、定刻であればおよそ2時間である。
ところが、4号線は常にダイヤが混乱しており、終点に着くまでに少なくとも5分は遅れる。
私が乗った列車も、仏岩山には10分遅れて到着した。
ここで一旦改札を出て、折返しの341X28編成に乗り込んだ。
折返し列車は、烏耳島ではなく、途中の안산(安山 アンサン)までの運転であった。
実は、4号線と一括りに言ってきたものの、実際には4路線もの路線を統合した愛称である。
東側から順に、ソウル交通公社진접선(榛接線 チンジョブ線)、ソウル交通公社4号線、韓国鉄道公社과천선(果川線 クァチョン線)、韓国鉄道公社안산선(安山線 アンサン線)となっており、これらをひっくるめて首都圏電鉄4号線という風に呼んでいる。
名前から何となく予想がつきそうだが、これから向かう安山は殆ど烏耳島に近く、朝降りた新吉温泉の隣駅である。
そのため、昼前に仏岩山を出発し、安山に着いたのは14時前であった。
ここから結局、あと1往復半も341X28編成に乗り続けた。
最後の烏耳島発仏岩山行きは、すっかり日も落ちて全区間真っ暗であった。
はるばる韓国まで来ておいて、いくら何でもこんな1日の使い方はどうかと思われる読者もおられるかと思われるが、私は何だかんだ列車に乗っている時が一番落ち着く。
ホテルへ戻れなくなるといけないので、さすがに最後の烏耳島行きは見送ったものの、できるならばトングリの車内で一晩明かしたい気持ちであった。
~その4へ続く~
★2024年11月8日の行程★