日本の慢性咳嗽の原因
慢性咳嗽の原因疾患について読んでみました。
<Background>
慢性咳嗽は呼吸器疾患の最もありふれた症状である。
咳によって生活の質は下がり、社会からみても大きな負担となっている。
<Methods>
2年間の調査期間中に8週間以上続く咳(=慢性咳嗽)があり、日本咳嗽学会に加盟するクリニックや病院を受診した患者を登録した。
<Results>
まず379人が登録し、慢性咳嗽の定義を満たさない患者は除外され、最終的に334人が対象となった。201人が単一疾患が原因で、113人が複数の原因疾患を持っていた。
咳喘息が92人と最も多く、副鼻腔気管支症候群は36人、アトピー咳嗽は31人、胃食道逆流症は10人であった。診断するまでに最も長く時間を要したのは副鼻腔気管支症候群で、治療成功率が低いのは胃食道逆流症であった。
<Conclusions>
慢性咳嗽の原因トップ3は咳喘息、副鼻腔気管支症候群、アトピー咳嗽で、それらの重複も見られた。また難治性の胃食道逆流症関連の咳嗽は、治療に抵抗性であることがわかった。
<感想>
かすがい内科には、8週間以上と長く咳が続いて困っている方が多く受診されます。実感としては、当院は咳喘息がもう少し多く、一方で副鼻腔気管支症候群は少なめです。
この論文のデータは総合病院を受診された方も登録されているため、当院の患者さんの層とはやや異なるのだろうと考えました。
副鼻腔気管支症候群が診断までに時間を要する、というのはまさにその通りで、理由として、①胸部レントゲンでは気管支拡張やびまん性汎細気管支炎など肺病変がわからない、②呼吸器内科医は耳鼻科領域まで目が行き届かず慢性副鼻腔炎に気づかない、などがあるのでしょうか。
特に②は自分も要注意です。
当院にはCTがあるため胸部や副鼻腔を撮像することで、原因のはっきりしない慢性咳嗽、とくに副鼻腔気管支症候群の診断に役立ちそうです。
胃食道逆流関連の慢性咳嗽は治療抵抗性のケースがあるようですが、治療薬が有効でないのか、あるいは胃酸逆流と症状が一致しない「機能性胸焼け」という病態があるからでしょうか。また、非びらん性胃食道逆流症(NERD)は上部消化管内視鏡検査で粘膜所見を認めないという点は注意が必要です。
慢性咳嗽の原因疾患が重複するケースもあるとのことでした。その場合は、治療を組み合わせて行う必要があります。
明日から改めて咳の診療を深く考えていこうと思います。
愛知県春日井市
かすがい内科 咳と頭痛と生活習慣病
院長 山下 有己