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難治性慢性咳嗽に対するSivopixant
Randomised trial of the P2X3 receptor antagonist sivopixant for refractory chronic cough
Randomised trial of the P2X3 receptor antagonist sivopixant for refractory chronic cough
P2X3受容体拮抗薬のGefapixant(リフヌア)は2022年から日本で使用できます。Gefapixantは味覚障害が高率に生じるため使いにくさがあり、限定的に治療抵抗性あるいは原因不明の慢性咳嗽に処方します。SivopixantはGefapixantの副作用を改良したP2X3受容体拮抗薬で、論文について以下に記載します。
<Background>
プリン受容体のサブタイプP2X3は咳反射と関連があり、プリン受容体の三量体バージョンであるP2X2/3は味覚障害と関連することがわかっている。最新の難治性咳嗽治療薬gefapixantはP2X3受容体に対する選択性が低いため味覚障害の副作用が多いが、新たに開発されたsivopixantは咳反射と関連のあるP2X3に対して高い選択性がある。
<Methods>
第2a相ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー多施設共同試験において、難治性慢性咳嗽や原因不明の慢性咳嗽の患者にsivopixant 150mgまたはプラセボを1日1回2週間投与し、2~3週間のウォッシュアウト期間を経て、プラセボまたはsivopixantを2週間内服にクロスオーバーする試験を行った(Figure 1)。sivopixantの有効性と安全性を評価した。
<Result>
無作為化された31人の患者のうち、sivopixant先行群15人、プラセボ先行群15人が試験を完遂した。2週間の治療後、主要評価項目である単位時間あたりの咳回数はベースラインから-31.6%(p=0.0546)、副次評価項目である24時間あたりの咳回数は-30.9%(p=0.0386)であった。また、Sivopixantは日常生活の質を改善した。有害事象はsivopixantが12.9%、プラセボが3.2%に認めた。軽度の味覚障害はsivopixant投与中に2人(6.5%)認めた。
<Conclusions>
Sivopixantは難治性慢性咳嗽あるいは原因不明の慢性咳嗽の患者において、味覚障害の副作用頻度は低く、咳嗽頻度を減らし、日常生活の質を改善した。
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女性がやや多く、喘息45%、咳喘息32%、鼻炎19%、胃食道逆流症16%、原因不明19%
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<感想>
当院には咳嗽を主訴とする方が多く受診します。慢性咳嗽や遷延性咳嗽の方の割合が多く、喘息や咳喘息、逆流性食道炎、副鼻腔気管支症候群、アトピー咳嗽が多いです。問診や身体診察、検査などで仮の診断をし、特異的治療を数週間施行したのちの効果判定で確定診断としています。8割程度の方は特異的治療で著効するのですが、症状が残存する、あるいはほとんど改善しない、という方が少数いらっしゃいます。そのような方は胸部CTによる精査や、複数の特異的治療を数カ月を行います。それでも思うように改善が得られず咳が続き、最終的に治療の選択肢がなくなった場合に、非特異的な鎮咳薬を提案することになります。
今までは非特異的な鎮咳薬は中枢性鎮咳薬(デキストロメトルファン、コデイン等)、末梢に作用する麦門冬湯、中枢に作用する医療用麻薬(モルヒネ等)しかありませんでしたが、P2X3受容体拮抗薬のGefapixsantが2022年に登場したことで、選択肢が増えました。
今回のSivopixantは、P2X3受容体拮抗薬Gefapixantの副作用で問題となっている味覚障害を改善しています。非特異的治療は極力避けるべきとされますが、前述したように特異的治療に反応のない方や、原因不明の方に対する鎮咳薬として重宝する可能性を秘めています。商品化を待ちます。
愛知県春日井市
かすがい内科 咳と頭痛と生活習慣病
院長 山下 有己