京大理系経済学部とは(実態編)
前回は京都大学経済学部の理型入試について解説した。ところで私は一つ誤解を招くような表現を用いている。それは「京大理系経済学部」である。どういうことかというと、京大に理系経済学部など存在しないということだ。ますます訳が分からないかもしれないが以下で詳しく説明する。
カリキュラム
まず皆さん、特に京大理系経済に受験しようと考えている人に必ず知っておいてほしいことがある。それは文系経済と理系経済の間には制度上何の違いもないことだ。つまり文系経済と理系経済は全く同じ授業をとることになる。だから理系らしいことはできないと考えた方がいい。残念ながら実験もフィールドワークもない(むしろ楽ちんでいいという考え方もある)。ただ数学に関しては般教こと全学部共通科目でそれらしいことはできるようになっている。
数学
経済学部において最もメジャーな数学の授業は「数学基礎A・B」である。この授業では前期で高校の数学Ⅲの範囲を扱い、後期で行列や偏微分など大学一年生レベルの数学を学ぶ。もちろん前期は多くの学生がこれを履修する。なかには理型入試の人でこれをとる人もいる(楽だから)。
一方で理系の学生に勧められるのは、「線形代数学A・B」「微分積分学A・B」である。この授業は他の理系学部と全く同じ内容の授業である。というか経済学部で開講されない授業なので、他の学部のクラスの中に交じって受けるという形になる。驚くべきことに文型入試でこれをとる猛者も存在する。
この授業には続編の「線形代数学続論」「微分積分学続論Ⅰ・Ⅱ」が存在する。理系学生が二年次で履修するこの授業だが、残念ながら経済学部生はこれをとっても卒業単位には算入されない。とるのは自由なので勉強したい人はどうぞ、というのが経済学部の主張だ。これこそ私が理系学生に経済学部をお勧めしきれない理由だ。
データ科学分野選択
経済学部には申し訳程度だが、理系的進路が用意されている。それはデータ科学分野選択である。これは本来経済学部生が二年次に履修する第二外国語中級の授業をとらず、その代わりにデータ分析や数理統計、人工知能の授業をとることができる制度である。といっても4コマ分だけなのでどこまで有効かはわからない。
雰囲気
そもそも「理系経済学部」が存在しないのでその雰囲気について述べられるかは怪しいが、ここでは主に理系数学(線形代数学、微分積分学)を履修している人たちについて述べる。
理系数学履修者の結束
理系数学を履修する人の人数は私の肌感覚では一学年30人前後だ。数が少ないのでその分、というにはささやかだが、若干の連帯感がある。そして私の知る限り真面目に授業を受けているものが多い。ただし理系数学のクラスは大学に数十個あるので、同じ授業をとっている確率はかなり低い。したがって課題等で直接的に助け合うことはできないが、授業内容に関して分からないことがあれば快く教えてくれる。ただ、一番の難関は仲間探しかもしれない。
数学基礎をとっていない疎外感
これは人によって感じる度合いが異なるだろうが、私はほんの少しだが感じた。数学基礎はほとんどの文系経済学生と裏切者である理系だが理系数学をとっていない人が履修する授業で課題等で協力する場面も多いと聞いた。また複数クラス合同なので別のクラスの友達もできる。正直うらやましい。私も数学のわからないところを教えてあげて、ちやほやされたい人生だった。
おわりに
これで実態が伝えられたかはあまり自信がない。当初想定していたより、ずいぶんシステマチックな話になってしまった。ただパラ経と呼ばれろくに勉強をせずに遊び歩いているという印象が強い京大経済学部にもこんなまじめな人種がいるのだと、はっきり主張しておきたい。
もう一つ強調しておきたいのが、もし数学を本気で勉強したいなら理学部が最も良いということである(三年生の専門分野の選択で数少ない数学科の枠を勝ち取れるのならば、だが)。
自分はまだ知らないことも多く、今後の進路についてはまだよくわからない。もし有識者がいるなら教えてほしい。拙い文章だが、最後まで読んでくれてありがとう。それでは。