古宮#01. 宗廟〜ユネスコ世界文化遺産に登録された朝鮮王室の霊廟〜
今回は、宗廟(종묘)のイベント「廟見礼2019」を観に行ったときの様子をご紹介したいと思います。
宗廟とは李氏朝鮮王室の祖先祭祀場だった場所で、ユネスコ世界文化遺産に登録されています。
宗廟(종묘)
宗廟は、ソウル市鐘路区(종로구)に位置します。地下鉄の最寄り駅は「鍾路3街(종로3가)」で、11番出口から徒歩6分ほどで到着します。
宗廟(종묘)は、李氏朝鮮の歴代王および王妃(没後に称号を与えられた王と王妃も含む)と功臣の位牌(神位)を祀り、祭祀を行なっていた場所です。
朝鮮王朝の太祖李成桂が、漢陽(한양)を都と決めてからすぐに建設を開始し、1395年に完成しました。
…宮廷の左側の東に宗廟を、右側の西に社稷壇を置く古代中国の都城計画の原則に基づいて、景福宮の左側であるここに宗廟を建立しました。
その後、王朝が続いて、奉安しなければならない神主(※)が増えていき、数回にわたって建物の増築が行われて今の姿になりました。
…(省略)…現在、正殿の神室19間には太祖をはじめ、王と王妃の神主が合わせて49位、永寧殿の神室16間には34位が安置されています。王位を追われた燕山君と光海君の神主は宗廟に祀られませんでした。
宗廟大祭は、国で最も大きい祭祀として正殿で1年に5回、永寧殿では1年に2回行われ、王が自ら主管しました。
…宗廟は1995年にユネスコの世界文化遺産に、また、宗廟祭礼と宗廟祭礼楽は2001年に人類の交渉および無形遺産に関する傑作に登録されています。
(現地案内板より一部抜粋。加筆あり)
(※)ここでいう神主は神社に使える神職ではなく、「御魂」「神となった魂で宗廟の主」という意で使われています。
◆宗廟を歩く
入り口の門をくぐると、緑豊かな空間が広がります。ソウル市街の中心部にありますが、落ち着きのあるお寺の庭を歩いているような、爽やかな気分になります。
道の中央にある石畳の通りは「神路(신로)」と呼ばれ、宗廟に眠る王や王妃の霊魂が通る道とされています。観光に来た際は、歩かないように気を付けましょう。
Please do not walk on this pathway. This is for the spirits.
ちなみに、この3つの道の右側(東側)は王が通る道、左側は世子(王の跡継ぎ)が通る道だそうです。
◆廟見礼(묘현례)2019
「조선의 세자빈 혼례를 고하다(朝鮮の世子嬪、婚礼を告げる)」
この日は、廟見礼2019というイベントが行われていました。世子嬪とは皇太子の妃で、次代の王妃です。
この文言だけだと意味が分かりづらいですが、英語では以下のように書かれているので、ご先祖様に婚礼を告げる祭祀だということが分かります。
”Crown Princess of Joseon
Reports her marriage to ancestors at Jongmyo Shrine”
宗廟は非常に厳粛な場所だったため、普段は王室の女性も立ち入ることが許されなかったそうです。そんなしきたりの中で、唯一、女性が入れたのが婚礼の時で、ご先祖様へ婚礼をご報告する儀式が行われました。
その儀式が「廟見礼(묘현례)」で、イベントではその様子を観ることができました。
小学生の兄妹が遊んでいる所に昔の服装をしたお爺さんが現れて、廟見礼の様子を説明するという演出になっています。
舞台となっているのは、第19代王粛宗(숙종)の時代で、廟見礼は正殿にて行われました。
正殿は東西に長く伸びた建築様式で、同時代の単一木造建築物としては、世界最大規だそうです。
写真からも分かる通り、とにかく広いです。広大すぎて、演者が遠~~くの方で、ちょこまか動いています。本当に、遠い。
王の粛宗と世子の景宗(경종)がご先祖様に挨拶します。
景宗は宮中ドラマ『トンイ』などに登場し、朝鮮三大悪女としても有名な張禧嬪(장희빈)の息子です。
この廟見礼2019では、景宗と端懿嬪(단의빈)の婚姻が舞台となっています。
中央からやって来るのは、粛宗の王妃である仁顕(인현)王后です。
その後ろから歩いて来る、紺色の衣装を纏った女性が端懿嬪です。
最後に、ふたりの小学生に説明していたお爺さんは、実は朝鮮王朝太祖の李成桂だったというオチで終わります。
ちなみに、演者は市民から募ったそうです。こういう機会が一般に開かれているのはいいですね。楽しい思い出になりそうです。
◆斎宮(재궁)
正殿以外にも宗廟内には祭祀に関する建物がいくつかありました。その中でも、ここではふたつだけご紹介します。
まずは、祭祀の前に王や世子が身なりを整えた、斎宮(재궁)といわれる建物です。こちらには、祭祀の前に王が心の準備をする部屋もありました。
◆典祀庁(전사청)
次は、食事を準備する典祀庁(전사청)という建物です。
◆◆◆
自然に囲まれ、都心にあるとは思えないような穏やかな風が吹き、気持ちのいい散歩になりました。
廟見礼は毎年開催されていたので、自由に旅行ができるようになったら、また再開されるかもしれません。ご興味のある方は、ぜひ調べて行ってみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?