ややこしかった年齢が変わるかも②
前回の続きです。
社会における人間関係の構築に年齢が重要な役割を果たす韓国では、年齢の計算方法が3通りもあり、特に外国人にとっては複雑でややこしいということをお伝えしました。
今回は、それが来年から統一されるかもしれないというニュースです。
◆2023年には満年齢への統一を目指す
2022年4月11日、大統領職引受委員会(※대통령직인수위)は「大統領選での公約に従い、法的・社会的年齢の計算方法を『満年齢』に統一する法案を推進する」と明らかにしました。
同委員会のイ・ヨンホ(李容鎬・이용호)幹事は、「法的・社会的年齢の計算方法が統一されていないことで、社会福祉サービスなどの行政サービスを利用したり、各種契約を締結または解釈する際に年齢の計算方法に対する混乱や揉め事が続き、不必要な社会的・経済的費用が発生してきた」と指摘しました。
法案が可決されれば、とし年齢(年年齢/연 나이)に基づく青少年保護法や兵役法の改正も行われる見通しです。
◆期待される効果
この韓国の年齢問題は外国人だからややこしかったわけではなく、韓国人にとっても厄介な社会問題だったようです。
実際に起きている問題を挙げると、子どもを持つ場合、幼稚園や就学関連のお知らせを受け取ったり書類を作成する際に、該当事項における我が子の年齢が分からず(どの計算方法で割り出すべきか分からず)、担任の先生に確認するといったことが起きているそうです。
イ幹事は、「日常生活で満年齢が定着すれば、法令が特定の年齢層にだけ適用される場合や行政・医療サービスを受ける際に生じる混乱を最小限に食い止められる」とし、「国際関係でも誤解が生じず、各種契約における年齢解釈のいざこざも解消されるため、法的紛争や不必要な費用が大幅に減少し、社会全般で肯定的な効果をもたらすことが期待される」と説明しました。
◆反対意見
このような見解を聞くと改正するのは当然で、むしろなぜ複数の計算方法を採用していたのかと疑問にすら感じますが、反対意見も一定数あるようです。
例えば「韓国文化として定着しているので変える必要はない」、「現行で上手く使い分けされているので不便は感じていない」、「国際的な場面での不都合が指摘されているが、外国人との会話で年齢を尋ねることはない」、「大概の人は外国では満年齢を使っていると認識しているし、それで不便は感じない」、「統一して得られるメリットは大きくないと思う」というものがありました。なかには、満年齢に統一すると就学時期(韓国は3月入学)を巡る論争が起きるのではと憂慮する意見もありました。
周りの韓国人はというと、「今まで問題を感じたことはないけれど、統一するならしてもいいんじゃない?」という意見が大半でした。ちなみに在韓外国人の友人は賛成でした。
◆韓国特有の言葉遣いと呼称文化
私は計算する面倒がなくなるので基本的には賛成ですが、社会生活の中で浸透するには障壁もあり、見方を変えると、満年齢が当たり前のように使われる社会になると、韓国特有の言葉遣いや呼称文化に些か変化が生じるのではないかと考えています。
関連記事を漁っている中で、以下の意見がありました。
観光業に携わるAさんは、「外国では年齢により呼称が変わることはないので満年齢を使うのに不便はないが、相手の年齢によって呼称が変わる韓国文化には合わないだろう」とし、「どちらにしても年齢を聞いたところで各々考える基準が異なるので、年の代わりに何年生まれか聞いて確認する」と話しました。
韓国では、相手が年上か年下か、または同い年かによって言葉遣いと呼称が変わります。1年でも先に生まれた人には敬語を使い、呼ぶ時は、~お姉さん(언니/누나)、~お兄さん(오빠/형)、~先輩(선배님)、~先生(선생님)などを使います。
これが同級生になるとため口になり、互いに名前で呼ぶようになります。特に学生時代に年齢を確認するのはこのためです。
しかし往々にして、この「同い年」は「同じ学年」を意味します。そのため年齢を聞いて同い年だと思っていた人が、実は早生まれで学年は上だったということも起こり得ます(※)。私もありました。同い年だと盛り上がった後に、実は学年が違ったと分かったときの気まずさよ・・・。
社会人になると、敬語を使うのがマナーです。呼称には役職名(~部長、~課長)や職種(~教授、~作家)のほかに、~先生と呼ぶことが多いですが、このときにも年齢が関わってきます。なぜなら最後に「様」を付けるかどうかが変わるからです。
一般的には、呼称の最後に「様」という意味の「ニム(님)」を付けて、ブジャンニム(部長様)、キョスニム(教授様)、ソンセンニム(先生様)と呼びます。しかし相手が同い年や年下であれば、このニムを省いて呼んでも構いません(ただし相手の立場が上であれば、年下でもニムを付けて呼びます)。
このような慣習を鑑みると、「韓国文化には合わない」という意見は納得がいきます。
満年齢に統一されることで、社会文化的にどのような変化が起きるのか、それとも起きないのか、個人的には気になるところです。
◆◆◆
大統領選挙での公約ということで、この法案が可決される可能性は高いと思います。
84年早生まれの私は、韓国の年齢で今年40代に入りました。しかし実年齢は38歳なので、この法案が適用されると再び30代に戻ります。
「年齢なんて関係ないし、年を取るのも素敵だよね!」なんて考える一方で、30代に戻ることを嬉しく感じる自分もいます。どんな言葉で飾っても、結局は若い方がいいと思っているようです。
やっぱり、ただの数字とは割り切れない年齢・・・。
ではでは。
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