ビートを刻むてんとう虫と、そんなてんとう虫に憧れた猿
1.ビートを刻むてんとう虫
そうですね。「初めてビートルズを聴いたのはいつなのか」というのは、かなり難しい質問ですので、お答えしかねます。
しかしながら、ビートルズという名前が、カブトムシやてんとう虫などの甲虫から来ていると知った瞬間は覚えています。確か中学1年の時でした。なんだかロックバンドのわりには、可愛らしい名前を付けたものだと思ったのです。特に、てんとう虫のあの丸いフォルムを想像したため、そのような感想を持ちました。
はい、「なぜカブトムシじゃないのか」という疑問は、至極当然のことと思いますよ。「beetle=カブトムシ」という訳は私もよく見掛けますから。しかし 、beetle は正式には「甲虫類」を指す言葉で、カブトムシだけを意味するわけではないのですよ。また、当時の私は、何かの本に「てんとう虫=lady beetle」と書いてあるのを見掛けたわけで、それ以降、私にとっては、てんとう虫を指す言葉になったのです。
実は、今回の題名もカブトムシにするかてんとう虫にするか、非常に悩みました。結論としては、ご覧の通りてんとう虫にしたわけですが、その理由は、当時の私にとってビートルはてんとう虫だったという一点に尽きます。
そういえば、話が少し逸れてしまいますが、兄が小学2年生の時に作った俳句には、カブトムシが登場していました。
10歳やそこらで、四面楚歌なんていう難しい言葉を一体どこで覚えたのでしょうか。「この句は全く大したものだ」と、未だに親の自慢のネタになっています。定期的に聞く話なので、もちろん私も覚えてしまったわけです。まさか、この note に登場するとは、数分前まで想像もしていませんでしたがーー。
大変失礼しました。
話が大きく脱線してしまいましたね。
ビートルズの名前ですよね。
そうそう、それと同時に知ったことがもう一つあります。
実は、てんとう虫、もとい甲虫のスペルは「beetle」であり、「beatle」ではないということです。 そうなると、必然的に「”bea”tle とは何ぞや」という話になるわけですよ。調べてみると、どうやら「ビート(拍子)」と掛けているという話じゃないですか。これを知った時は、なんともまあ素敵なネーミングなのだろうと思ったものです。
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ええ、好きな曲はいろいろありますよ。ありきたりな返答ですが、時期によって異なるので、これが一番というのは、一概には言えません。
ただ、強いて言うと、『Your Mother Should Know』でしょうか。常に、お気に入り曲のトップ5には入ると思います。この曲の不思議なところは、聴けば聴くほど、聴きたくなるという点です。
もう一つ、こちらも常に上位に食い込む『She’s Leaving Home』も非常に美しい楽曲なので、ぜひ聴いていただきたいところです。ちなみに、聴く時は、歌詞をじっくりと追っていただきたいと思います。物語と、そこに登場する人々の想いが、音楽を通じて、体中に響き渡るように伝わります。
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正直、私としましては、そこまで自分をビートルズ好きだと意識したことはありません。世界中を見てくださいよ。私よりもビートルズを心の底から熱狂的に愛している方々は山のようにいるのですから。
でも、改めて考えてみると、昔から長旅に出る際は、必ずビートルズの曲を持参していましたし、リバプールへ旅行に行った時は大興奮し、ロンドンのアビーロードを訪れた際には心の底から感動しました。学生の頃はお金がなかったので、就職してすぐにボックスセットを購入し、すべての曲をコンピュータとスマホに入れ、これでいつでもどこでも好きなときにビートルズが聴けるのだと嬉しくなったものです。
ということは、好きは好きなのでしょうね。はい、否定はしません。
2.そんなてんとう虫に憧れた猿
ほんの2、3年前だったと思うんです、彼らの音楽を初めて聴いたのは。韓国では有名なバンドらしいので、ひょっとすると、それ以前にもどこかで耳にしていたのかもしれませんが、流石に覚えてはいませんね。
グループ名の Jannabi(잔나비)は、韓国語で「猿」という意味ですが、メンバー全員申年生まれということでこの名前にしたそうです。ちなみに、普段の会話で猿と言いたいときは「원숭이(ウォンスンイ)」となりますので、お間違えのないようによろしくお願いいたします。
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ええ、もう聴いた瞬間に思いましたよ。
なんだか、ビートルズっぽい曲を歌うなって。
だから、彼らの音楽に惹かれた理由は、意外に簡単なんです。
私も、彼らも、このビートを刻むてんとう虫に恋をした仲間だったから、ということでしょう。
この MONKEY HOTEL なんて、ビートルズの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』を思い出させるじゃないですか。
なんて訊くあたりが、まさにそうです。
でも、彼らは猿ですから「またお越しください」と言いつつも、次に来るときは「バナナを持ってきて」というのですから、なんだか可愛らしくて、笑ってしまいます。
また、この元気で愉快な猿たちは、どこか切なく、懐かしい、心に染みる歌も歌うのです。
ご紹介したい曲はたくさんありますが、長くなりすぎるのもあれなので、今回はこの曲で終わりにしたいと思います。
『나는 볼 수 없던 이야기(僕が知ることのできない話)』
どんな話なのでしょうか。ただ正直なところ、私は話の内容よりも、この歌の「時の流れ」の方が、妙に心に引っかかってしまうのです。
「風が吹く」のは、時の流れを意味しているのでしょう。「今までできなかった話をしてほしい」と、今、言えるのも、時の流れを表している気がします。でも、なぜ、時を「時間たち」という複数形にしたのでしょうか。
何よりも不思議なのは、この曲を聴いて、時間はないのだと感じたことです。まるで、歌詞を批判しているように聞こえるかもしれませんが、決してそうではありません。むしろ、時間というものを、歌が表現する静寂の中に感じるからこそ、それが存在しないことに気づかされるのです。