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韓国語#14.おやじギャグで韓国語を学ぶ
どこの国でも、おやじというのはギャグを言ってしまうものなのでしょうか。それとも言語がそうであるように、日本と韓国は文化的にも近いため、そのような傾向が生まれるのでしょうか。
韓国にもおやじギャグがあり、「アジェゲグ(아재 개그)」といわれています。
아재(アジェ):おじさん(아저씨のこと)
개그(ゲグ):ギャグ
ただ、どうやら英語圏でもおやじギャグは存在し、Dad jokes といわれているらしいことを知ると、やはり世界共通なのかもしれないとも思ってしまいます。
下手すれば、現場を凍りつかせ、怪訝な顔をされかねないおやじギャグ。しかし、それは母国語だからなのかもしれません。
外国語で、私の場合はそれが韓国語だったわけですが、このアジェゲグに出会ったときは、それはもう感動したものです。おもしろい、おもしろくないという次元を超えて、韓国語ならではのギャグが理解できたということが感動だったのです。
ということで今回は、覚えていても恐らく役には立たないけれど、それでも知っているとおもしろいアジェゲグを3つほどご紹介したいと思います。また、その中でギャグを解説するという、ある意味でタブーを冒してしまいますが、もうこればっかりは仕方ありません。
楽しんでいただけると幸いです。
1.우리 앞으로 만나지 말자. 뒤로 만나자.
A:우리 앞으로 만나지 말자.
A:僕たち、これからは会わないようにしよう。
(⇒ 僕たち、前で会わないようにしよう)
B:그래, 그럼 뒤로 만나자.
B:そうね、じゃあ、後ろで会いましょう。
ここでのポイントは「앞으로(アップロ)」です。
앞(アㇷ゚)は「前」という意味ですが、「~で」という意味の 로(ロ)が付いて 앞으로 になると、未来を表す「これから」という意味になります。
そして、この 앞으로 を「これから」ではなく「前で」と読むことで、「前ではなく後ろで会いましょう」というギャグになるのです。
もし今後、好きな人に「앞으로 만나지 말자(これからは会わないようにしよう)」と言われたら、落ち着いて平静を装いつつ「그럼, 뒤로 만나자.(じゃあ、後ろで会いましょう)」と返してみましょう。
ひょっとしたら、ギャグが通じて機会が好転するかもしれませんーーし、しないかもしれません。
우리(ウリ):私たち、僕たち
앞으로(アップロ):これから、前で
뒤로(トゥイロ):後ろで
만나다(マンナダ):会う
動詞の語幹+자:~しよう
動詞の語幹+지 말자:~しないでおこう、しないようにしよう
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2.나 이제 말 안 할래. 소할래.
나 이제 말 안 할래. 소할래.
私、もう話さないようにする。牛するようにする。
(⇒ 私、もう馬しないようにする。牛するようにする)
ここでのポイントは「말(マㇽ)」です。
말(マㇽ)は「言葉、話」という意味がありますが、ここでは 「する」という意味の 하다(ハダ)と合わせて「話す」という言葉で使われています。
また、この 말 は「言葉、話」以外にも、「馬」という意味があります。よって、「馬しない」からその代わりに「牛する」というギャグになるわけです。
ちなみに、「牛する」と訳した 소하다(ソハダ)は「肉食ではなく菜食にする」という意味の単語ですが、普段使われることはほとんどありません。
나(ナ):私
이제(イジェ):もう、今
말(マㇽ):言葉、話、馬、(月末、文末などの)末
소(ソ):牛
하다(ハダ):する
말하다(マラダ):話す
소하다(ソハダ):肉食ではなく菜食にする
안+動詞:動詞の否定
動詞の語幹+ㄹ래:~する(するつもり)
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3.소가 죽으면? 다이소
最後は日本とも関係のある、なぞなぞ要素の強いおやじギャグです。
A:소가 죽으면?
A:牛が死んだら?
B:다이소
B:ダイソー
ダイソー(DAISO)は韓国にもあります。駅構内や街中、スーパーの一角などあらゆるところに出店しているため、知らない人はいないのではないでしょうか。
先ほどもありましたが、소(ソ)は「牛」という意味です。そして、死ぬを英語でいうと「die」なので、牛が死ぬ → Die 소 → 다이소(ダイソー)となるわけです。
ちなみに、ダイソーはあらゆるモノを売っていることから「すべてある」という意味の「다 있어(タ イッソ)」と掛けていわれることもあります。
다 있어(タ イッソ)= 다이소(ダイソー)
全部ある=ダイソー
소(ソ):牛
가(ガ):~が
죽다(チュッタ):死ぬ
名詞・動詞の語幹+(이・으)면:もし~なら(仮定)
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◆◆◆
初めて教えてもらったアジェゲグが、最初のギャグでした。ある日突然、斜め前の席にいた同僚から、SNSのカカオトークでこう言われたのです。
우리 앞으로 만나지 말자. 뒤로 만나자. 히히
私たち、これから会わないようにしましょう。後ろで会いましょう。ひひ。
最初の文章に驚いたものの、後ろの文章を見てすぐにギャグだということが分かり、その瞬間にとても感動したのを覚えています。
それからというもの、韓国人の友人や他の同僚に使いまくりました。嫌がられようとも、しつこいと思われようとも、お構いなしです。つまり、それくらい韓国語のギャグを理解したということが嬉しかったのです。
ギャグのレベルとしては、「布団が吹っ飛んだ」レベルです。
今思うと、この全く以ておもしろくないギャグを事あるごとに言ってくる外国人をうざがることもなく、いや、実際にはうざかったのかもしれませんが、そのような素振りを見せることもなく付き合ってくれ、さらには「こんなギャグもあるよ」と教えてくれた友人たちには、心から感謝です。