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ネズミのふりをするイノシシは後悔した~ただタクシーに乗っただけなのに~
1.「失礼ですが、何年生ですか?」
そういえば、ひとりでタクシーに乗るのはいつ振りだろうーー。
行き先を伝えたところまでは、大したことなかったのです。
それが、私が日本人だということを知ると、「久しぶりに日本語が話せて嬉しい」と言いながら色々と質問してくる運転手さんと話しているうちに、やっぱりバスにすれば良かったと、少しばかり後悔したのです。
韓国では年齢を尋ねるときに、「몇 년생이세요?(何年生まれですか)」という表現をよく使います。しかし、これを直訳すると「何年生ですか」となることから、本来は年齢を訊くはずが学年を聞いてしまうという間違いをする韓国人は多いです。
そして、この運転手さんもまた、その例外ではありませんでした。
「失礼ですが、何年生ですか?」
初対面の人に年齢を訊くのは、韓国ではよくあることです。
しかし、「84年生まれ」と言う私に、「じゃあ、子(ねずみ)年だね」と返してきたことを考えると、年齢ではなく干支を知りたかっただけなのかもしれません。
日本と同じように、韓国でも干支を使います。そのため、このような会話は決して珍しくはなく、しかし個人的には干支にはさほど興味はないため、適当に相槌を打ちつつも話の大半は聞き流していました。
この会話に、積極的に加わりたくなかった一番の理由はこれです。
「子年は来年からの3年間、運気がすごく悪いよ」
これは統計学だからと言いつつも、来年以降の私の運勢をあれやこれやと自信満々に話してくるのを聞いていると、当たるとか当たらないとか、そういうことではなく、つい数分前に出会った人に、しかも訊いてもいない運勢について、なぜここまで言われなければならないのかという疑問ばかりが、頭を過ったのです。
考えるのは、「早く目的地に到着しないかなあ・・・」ということ。
しかし、これまでもタクシーに乗車している間ずっと話し掛けられることは何度もあり、また、干支を訊いては積極的に助言してくる人も初めてではなく、こういう人は親切心でやっていることが多いというのも経験上分かっていました。良い人生を過ごしてほしいと願う、一種の人助けの精神です。
だから、できる限り、適当にやり過ごそうと思ったのです。
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2.タクシーの運転手には言わない秘密
それでもやはり、聞けば聞くほど思います。
「干支だけで人生を語られては、たまったじゃないーー」
干支に対する恨みなんて一切無いにもかかわらず、干支が嫌いになってしまいそうです。正直不快な気持ちにはなるものの、そんな心を守ってくれる秘密が私にはありました。
それは、実は私は子年ではなく亥(いのしし)年だということです。
韓国では四柱(사주)と呼ばれる、所謂「四柱推命」を見てくれる場所が多くあり、年末になると新年の運勢を占うために利用する人が少なくありません。
私も仲の良いオンニ(お姉さん)と一緒に見てもらったことがあるのですが、そのときに言われたのです。
「あなたは子年ではなく亥年よ」
四柱では陰暦を用います。
となると、干支も陰暦に従って変わりそうですが、干支が切り替わる日付は毎年変わるそうで、例えば陰暦の1月生まれであったとしても、必ずしも干支は新年を迎えているわけではないのだそうです。
実際、2月生まれの私は陰暦では1月生まれになります。しかし、生まれた日付にはまだ干支は新年を迎えていなかったため、亥年になるそうです。
そんなこともあり、よくこう言われました。
「あなたは84年生まれだけど、83年生まれの人と一緒だからね」
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3.秘密なんてものはすぐにばれる
目の前にいる運転手さんがどれだけ私の運勢を一生懸命に語っても、それは私ではないのです。だからイラつく必要はないし、ただ楽しく会話をしていれば良いのです。
しかし、そんな期待はすぐに裏切られてしまいます。
「84年の何月生まれですか?」
誕生月を伝えたとしても、干支が亥年なのはバレないだろうと思っていましたが、2月生まれだと知った途端に、運転手さんはこう言いました。
「それじゃあ亥年だよ。あなたは亥年の12月生まれだと思う」
あら、よくご存じで・・・。
どうやらこの方は、私が思っていた以上に干支(いや、干支の占い?)に詳しいようで、亥年と分かってからは、先ほどまで言っていたことの訂正が次々に入ることになりました。
まず、子年とは異なり、亥年の運勢はこれから3年間上がり調子だそうです。また、亥は寅(とら)、卯(うさぎ)、未(ひつじ)との相性が良く、巳(へび)と自分と同じ亥とは相性が悪いそうです。
そして、私の人生の苦労度は「中の上」で、どちらかというと、人よりは少し苦労が多い人生を歩んでいるそうです。ちなみに、運転手さん自身は、浮き沈みの激しい波乱万丈な人生だと言っていました。
さらには、私は若いときに結婚すると離婚する可能性が高いため、晩婚が良いとも言われました。
そんなことを聞きながら、これではイライラが増してしまうという危機感を覚えましたが、干支ひとつで人生の苦労度まで語ってしまうことには正直感心しましたし、また、結婚については四柱で聞いたことのある内容だったので、可笑しくて笑ってしまいました。
この人は、タクシードライバーの姿をした占い師なのか?
なんかうける。
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◆◆◆
重たい荷物があったためタクシー移動はバスよりも楽だったものの、家に着いた途端に、それまでの疲れがどっとやって来ました。
「うーむ。運転手さんは良い人だったし、会話も楽しくなかったわけではないけれど・・・。ああ、それでもやっぱりバスにすれば良かったなあ」
ということで、しばらくはひとりでタクシーに乗るのは控えようと思った次第です。