京畿道高陽市の幸州山城〜文禄・慶長の役の舞台を散歩する〜
もう2年ほど前になるのでしょうか、京畿道(경기도)高陽市(고양시)に日帰りで行ってきました。
高陽市には、文禄・慶長の役(韓国語では「壬辰倭乱」)の戦場となった幸州山城(행주산성)があり、現在は漢江を眺める自然豊かな公園となっています。
ということで、今回はこの幸州山城をご紹介したいと思います。
幸州山城(행주산성)
ソウルからは意外に近く、新村(신촌)から幸州山城入口(행주산성입구)まではバスで20分ほどしか掛かりません。本当に近い。
ソウル市内から近く、四季の移り変わりを楽しむことができることから、特に春から秋に掛けての気候の良い時期には多くの人が訪れるそうです。
バスから降りて案内の示す方へ歩いていくと、10分弱で幸州山城の入り口に到着します。
門の端にチケット売り場らしきものがありますが、入場料は無料でした。
観覧時間に関しては、夏季(3月〜10月)が9時〜18時、冬季(11月〜2月)が9時〜17時までなので、行かれる方は前もってご確認いただくことをおすすめします。入場は観覧時間が終わる1時間前まで可能です。
幸州山城は名前の通り山を利用した城です。
山とはいえ、登るのはさほど大変ではありません。頂上までは舗装された道を行くことになるので、お散歩感覚で楽しめます。
◆権慄将軍と幸州の戦い
門を通って最初に見えるのが、こちらの権慄(권율/クォン・ユル)の像である忠荘公権慄都元師銅像です。
文禄・慶長の役は、文禄1年(1592年)と慶長2年(1597年)の2度にわたる豊臣秀吉と朝鮮および中国・明の連合軍との戦いです。
なかでも「幸州山城の戦い」は文禄2年(1593年)2月12日に幸州山城で行われた戦闘のことを指し、その際山城にて朝鮮軍を指揮していたのが権慄将軍です。
パンフレットの案内によると、この幸州山城は権慄将軍の不退転の指揮で2300人の精鋭兵、僧兵、義兵、婦女子を含む3000人余りが、3万人余りの日本軍を退けたところで、史跡第56号に指定されています。
この日は行きませんでしたが、幸州山城にはこの権慄将軍の遺影を祀った祠堂の忠荘祠(충장사)もあるそうです。
◆土城を歩いて山頂へ
幸州山城は、海抜124.9mの徳陽山(덕양산)の山頂を中心とした稜線沿いに土を盛って造られた土城です。
山城の形態は山を囲んだ包谷式山城で、正確な築城年代と目的は不明だとのことですが、おそらく三国時代・百済のときに初めて築城されたのではないかと推測されています。
2017年3月には山頂周辺の傾斜面で石城が発見され、現在研究が進められているそうです。
土城に沿って登ることにしました。
リスが出てきそうな山ですが、残念ながら出てきませんでした。
◆山頂は眺めが良くて気持ちがいい
山頂到着です。
広々とした空間に爽やかな風が吹いて、とても気持ちが良かったです。
こちらは新幸州大捷碑(신행주대첩비)です。
うん、でっかい。
大捷碑の名前に「新」が入っているのは、手前の大捷碑閣の中にある石碑が「初建碑(초건비)」だから(だと思います)。
この初建碑は宣祖35年(1602年)に権慄将軍が亡くなった後、部下の将師たちによって建てられました。碑には幸州の戦いにおける勝利の過程が記録されているそうで、その歴史的価値から京畿道有形文化財第74号に登録されています。
冬に行ったので寒かったですが、天気が良くて空が綺麗でした。
この幸州山城は山だけあって、やはり眺めは最高です。
韓国らしい岩山に見とれてしまいます。
漢江も綺麗に見えました。遠くに見えるのはソウル市街で、写真では分かりにくいですが、63ビルディングもはっきり見えました。
漢江を眺めながら下ります。
◆大捷記念館
こちらは1980年に建設された大捷記念館です。下る途中にお邪魔しました。
戦闘当時に武器庫と兵糧倉庫があったと推定される場所に建設され、幸州山城の戦いにおける遺物を展示しています。
入場料は無料で、展示品の写真撮影は禁止です。
館内には火車や銃筒機などの武器類や大捷記録画、権慄将軍の親筆、そのほか山城で発見された遺物などが展示されています。
個人的には、記録画とされる大きな絵画がとても興味深かったです。
このように歴史の遺跡や遺物を見ると思うのは、やはり自国が戦場になるということの傷の大きさです。
豊臣秀吉の朝鮮出兵を知っていても、私にとっては歴史上の出来事というだけで、あくまでも知識のひとつだったのです。でも、実際に戦場となった場所を歩き、現在にまで残っているものの姿を見ていると、自分はこの歴史を「記憶」しているわけではなく、ということは、この歴史と「共に」生きているわけではなかったのだと、深く感じてしまうのです。
まあ、別にそれが善いとか悪いとかではないのですがーー。
◆◆◆
このときは冬に行きましたが、春にはツツジや桜が咲き、秋になると紅葉が楽しめるそうです。また、山頂からの夜景が綺麗なことから、夏には夜間観覧をしている期間もあるそうです。
はい…残念ながら、冬が一番適していなかったようで(笑)
まあ、楽しかったから良しとしよう。