記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【感想】ハリウッドは伊達じゃない!たぶん!超一流作品の皮を被った中身の薄い二流作品『ザ・リング』【ネタバレ】

概要

ザ・リング (The Ring)

あらすじ

それを見た者は7日後に死ぬ…。新聞記者のレイチェルは、そんな呪われたビデオテープの存在を知る。やがて、それを見た4人の若者が死亡する事件が発生。調査を開始したレイチェルは問題のビデオを入手するが、目を離した隙に、幼い息子がそれを見てしまう……

Filmarks

 ぶっちゃけ日本の映画版より良い作品だと思った。っていうのも、原作ありきで成立しているインスタントな本家に対して、こっちは超自然的サスペンスとして完成されてるから。

そもそも原作からしてホラーではない

 そう、この映画はホラーじゃない。スーパーナチュラル・サスペンスなんだ。作品の節々からホラーっぽくない、サスペンス的な匂いがした。例えば、元夫が資料室に忍び込む所だったり、妻がモーガン邸に忍び込んで(こいつら忍び込んでばっかりだな……)サマラパパにバレた瞬間だったり。ここら辺は完全にサスペンスやスリラーのビビらせ方だったね。

 そもそも原作からしてホラーじゃなくてミステリーなんだよな。それをホラーリメイクしたのが日本映画版であってさ。

原作リング …… ミステリー
映画リング …… ホラー(の割には大して怖くないけどね)
ハリウッドリメイク版 …… サスペンス
らせん・ループ …… SF
日本リメイク版 …… クソホラー,コメディ

数あるリングシリーズの中でも、ホラーやってんのって実は日本映画版だけだったりする。原作の続編たるらせんループに至ってはSFだし。

 ……僕には「原作のある映画であろうと、一つの完結したものとして評価すべし」って持論があるんだけど、その軸で言えば本作ハリウッドリメイク版は、リング一連の映画作品でいっっっちばん綺麗に完成された作品だと思う。

良いハリウッドリメイク

 で、具体的にどの部分が綺麗なのかって言うと、まずリメイクにあたっての工夫が良かった。

いくら同じプロットを扱うと言っても、やはり日本とアメリカ。全く違う。おまけにリメイク元が20世紀末の極東の小さな会社で作られたのに対して、これは21世紀のハリウッド。映像の質が高いってのは逆に痛かったんじゃないかな。日本映画版の不気味さは映像の質の悪さに助けられてた部分も大きいと思うから。

 この問題の解決法として多くの映画が使ってるのが、画面を暗くするっていうクソみたいな手法なんだけど、本作は一面真っ白の部屋にぽつんと佇む椅子空間を定期的に白く染める灯台の光風呂場に大量の機械を積んで感電タヒみたいな、綺麗な映像でも気味の悪さが出る工夫がされてる。

まぁ、サマラ(原作で言う貞子)役の子が可愛すぎて浮いてたりっていう良画質の悪い所も出てるけどね。

 次にシーンの構成。日本映画版は場面があまり動的じゃない。これはこれで好きなんだけど、本作は良い意味でのハリウッドらしさが前面に出てる。主人公が赴く先々での景色が大きく変わるから、扱われるのが小さな事件であっても世界観の狭さを感じなかった。ここはアメリカっていう土地の利点かな。

 ラストも良いね。爽やかに終わった本家と違って、一度重いハッピーエンドで終わらせて(と見せかけて)から、再度ストーリーを動かして絶望的な雰囲気のままエンディングへ突入させる。

この流れは、初見で観た人にはそこそこの衝撃だったんじゃないかな。本家には出せない、ハリウッドらしい良いリメイクだと思う。最後はママが犠牲になったっぽい終わり方だけど、続編でも主役を張ってることを考えると誰かを生贄にしたのかな? 個人的にはママの自己犠牲エンドの方が好みなんだけど(とは言え、続編の可能性を残せっていうお上の言葉は想像に難くないし、制作陣的には殺したつもりなのかも)。

この映画最大の問題点は「面白くない」ところ

 さて、ここまでこの映画を褒めたたえた訳だけども、こいつには致命的な欠陥がある。それは面白くないってこと。

「ん?散々凄い!完成されてる!って褒めてたのに、面白くないってどういうこと?」

その疑問はごもっとも。でも、ここまで僕は凄いとは言ったけど、面白いとは一度も言ってない。屁理屈に聞こえるかもしれないけど、この凄いけど面白くは無い系映画って割とよくあるんだよね。筆頭はエヴァAKIRA(怒らないでね。あくまで個人的な意見だから)。コンテンツ全体に対してカルト的な支持がある、かつ閉じている作品(所謂閉じコン)はこうなる傾向が強い。

原因としては、豊富な資金と一流の制作陣によってハイレベルなものに仕上がるも、原作を縮めたり、無理な続編を練ったりして脚本に無理が出ちゃうから……って感じかな。その出来上がった凄いけど面白くないものが、原作パワーで過剰に評価される、と。

 本作もこれ。映像表現や演技は凄いけど、呪いのビデオの謎は弱いし、回収されていない、できていない不必要に思える部分も多い。全体的な内容の薄さが上辺の出来の良さで誤魔化されてるんだ。つまり、凄いけど面白くないってわけ。

(逆に、映画としては無茶苦茶だけど面白いって作品もある。筆頭はザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーで、批評家にボロクソ言われた理由はこれだと僕は勝手に思ってる)

観る価値は十二分にある

 凄いけど面白くない。とは言え、裏を返せば凄くはあるんだ。「あー面白かった!……かな?」ってなるくらいの後味はあるから、観て損はしないんじゃないかな。サマラ役の女の子がめちゃ可愛いから、それだけの為に観ても良いかも。てか観て欲しい。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集