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【感想】キャッチコピーは詐欺だし別にワニ要素は要らないし、こんなしょうもない英雄譚を捧げられたヴァン・サルヴェージの身にもなってあげて欲しい『ブラック・クローラー 殺戮領域』【ネタバレ】

概要

ブラック・クローラー 殺戮領域
(原題: Saltwater: The Battle for Ramree Island) 
2021 / 83分 監督: スティーブ・ローソン


あらすじ

1945年、ビルマ沖のラムリー島。日本軍(笑)の補給基地を破壊するため、ハリスたちイギリス軍部隊(笑)とインドの工藤新一ことシンは密かに島へと上陸する。部隊は島を横断し日本軍(笑)基地へ接近しようとするが、インドの工藤新一ことシンの警告を無視した挙句、イギリス人は足を引っ張りフラグを建築し、ワニだらけの沼地を進むことになってしまう。残当。

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例の如くWikipediaに記事が無い。それは置いておいて、これ、実話らしいよ。

うむむ……本当か?

映画における「実話です」ってーのは、演出だったり、3割実話なんて言うことがよくあるから余り信用できないんだよね。ボクはこういう曖昧なものから歴史を学びたくは無いから、まずは調べてみた。

細かいところが気になってしまう、僕の悪い癖

あった、これかな?

(略)
As no further fighting of any extent was taking place on the island all that remained was for the naval forces to patrol the seaway between RAMREE and the mainland killing the few enemy who tried to escape from the swamp and of these few who drowned or were eaten by the sharks. Those, numbering about 1,000, who remained in the mangroves, were suffering most horribly without food or drinking water, attacked by malarial mosquitoes, scorpions and, most dreadfully, by the crocodiles attracted to them by the blood from their wounds which were covered in blowflies. What, to the Allies, made it worse was that this total sacrifice was completely unnecessary.

On 22nd February 1945 the ships were withdrawn for other duties and the RAMREE ISLAND campaign was officially ended the objectives for which it had been occupied having been secured. However, there were still a few Japanese who had hidden elsewhere than in the swamp and they would emerge, invariably in suicidal positions and cause casualties.

(訳: 島ではこれ以上の戦闘は起こらなかったので、あとは海軍がラムリーと本土を結ぶ海路をパトロールして、沼地から逃げようとした少数の敵を殺すだけだった。マングローブに残った約1,000人の敵は、食料も飲料水もなく、マラリアの蚊やサソリに襲われ、最も恐ろしいことに、傷口から出る血に引き寄せられたワニによって、フキダシだらけにされ、最も恐ろしい苦しみを味わった。連合国側にとってさらに悪いのは、この完全な犠牲がまったく不必要だったことだ。

1945年2月22日、艦船は他の任務のために引き揚げられ、ラムリー島作戦は正式に終了した。しかし、沼地以外の場所に隠れていた日本人はまだ数人いて、彼らは必ず自爆的な位置に現れ、死傷者を出した。)

Wayback Machine

これは、この映画のモデルにもなった"ラムリー島の戦い"のアーカイヴ。映画を最後まで観れば分かるんだけど、キャッチコピーにもなってる「兵士1000人の内、生存者20名」は日本軍のことだよ。酷い詐欺だね。まぁこれを読む限りは本当に実話っぽいけど、これ、英語記事だよね。「日本軍兵士1000人がワニに襲われた」なんていう記録を残してる信用に足る日本語の資料はひっっっとつも見つからなかった。あったのは、嘘だか本当だかよく分からんアーカイヴだけ。

いや、普通に考えれば当たり前だよな。近代兵器を持った軍人が、ワニなんて野生生物に後れを取る訳が無い(劇中では銃の効かない無敵生物だったけど)。この映画、かなりしょっぱかったんだけどさ、実話だからかなーって多少は目をつぶってあげた訳よ。いやぁ、まさかほぼほぼオリジナルとは。恐れ入った。

インドで親父に教わったんだ

本題に入ろう。この映画最大の問題点は、話の動かし方が下手すぎること。酷いもんだよ。こいつさ、ストーリーの大半がおしゃべり会話劇で進行するんだ。そりゃ面白ければ良いよ?でも、見させられるのはやれ俺が上官だの、帰ったら結婚するだの、とにかくクッッッソしょうもない雑談なんだよ。インド人は「インド出身だから」なんて雑な理由で島の正確な位置を言い当てたり、「インドにもいた」って言ってイリエワニの特徴を長々と説明したりするし、ハラハラするシーンなんてあったもんじゃない。ワニはワニでドンキーコングのトラップ程度の活躍しかしないし。この映画においてのワニは、行き詰まったお話を進めるだけの舞台装置、デウス・エクス・マキナでしかない。ただのおまけなんだよ。愚かな人類に超魔生物ワニが鉄槌を下す映画が観たかったのに。アニマル・パニック映画としても戦争映画としてもC級レベル。こりゃないよ。

……ただね、おしゃべり会話劇が絶望的につまらなかった訳でも無いんだ。この監督はなんか知らんけど、お話を作るのは下手な癖して、映画を作るのは謎に上手いんだよな。何言ってるかわかんないと思うけどマジなんだよ。ただの雑談なのに聴いてて絶妙に飽きない。カフェテラスで隣に座ってるおばさんが話してる親戚の悪口みたいな。映像も何故か綺麗でまともだったし。

こんな微妙なものを捧げられたヴァン・サルヴェージもたまったもんじゃ無いと思う

うむむ……話の構成が微妙に下手である事以外の欠点があんまり無いから、これ以上語ることがないぞ……。細かい事を言えばさ、演技が演技っぽいとか、ワニ要素要らなくない?とか、色々文句はあるんだよ。ただ、それを踏まえても絶望的にクソって訳じゃあ無いんだよな。ぶっちゃけ評価2.8/5はあると思う。3.0/5は無いけど。映画として破綻してはいなかったから、寧ろ普通にヒューマンドラマ撮ってた方が良かったんじゃあないのと思うよ。

ところで、この映画の冒頭には「この作品をヴァン・サルヴェージに捧ぐ」って一文が挿入されてるんだけど、こんな微妙なもんを捧げられたサルヴェージさんも、たまったもんじゃないよな。


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