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【感想】色々と雑、だけどそれが良い。そんな世にも珍しいB級社会派SF映画『ソイレント・グリーン』【ネタバレ】

概要

ソイレント・グリーン  (Soylent Green)

あらすじ

時は2022年。留まることを知らない温暖化と人口増加により、かつての先進的な体制は崩れ、一部の特権階級と多くの貧民という格差の激しい社会となっていた。肉や野菜といった本物の食料品は宝石以上に希少で高価なものとなり、人類はソイレント社が海洋プランクトンから作るという合成食品の配給を受けて生き延びていた。
 
ある夜、特権階級の富豪サイモンソンが殺害され、ニューヨーク14分署のソーン刑事が捜査に乗り出す。彼は、この事件がただの殺人ではなく、ソイレント社を中心とした、陰謀渦巻く暗殺である事に気がつくが……。

Wikipedia

この映画良いよね。ぼくも『十二人の怒れる男』『サイダーハウス・ルール』と来て三番目くらいには好きだよ。とは言え、ベタ褒めするような出来の良い映画でもないから、詰めの甘い部分と、その中に潜む魅力を語っていこうと思う。

世にも珍しいB級社会派SF映画

突然だけど、社会派SFの印象ってどう?ぶっちゃけ苦手って人も少なくないと思う。まぁ、実際ぼくもあんまり好きでは無いよ。長くて、地味で、暗い、観ていて息が詰まる作風は、視聴を投げ出して甘いミルクティーなんかをがぶ飲みしたくなるよね。

その点、『ソイレント・グリーン』には社会派SFに有るまじき娯楽色の強さがある。まぁ、B級映画ぽいってことだよ。観た人なら分かると思うんだけど、実はこの映画の核はソイレント・グリーンじゃない。核たるメッセージ部分は人口爆発環境問題であって、アレを……して作る合成食料ソイレントと、それを渦巻くサスペンスってのは、丸々全部が娯楽要素なんだ。

よく思い出して欲しい。この映画を観て、深く考えさせられるシーンがどれくらいあった?強く心突き動かされるシーンは?どれくらい泣いた?どれくらいハラハラした?

……そう、この映画はB級映画なんだよ。
安っぽいメロドラマにしょうもないアクションシーン、謎解き要素なんて皆無の捜査パートは、どれをとっても出来が良いとは言えない。観客の「んまぁ、五十年前の映画だし、こんなもんだろ」なんて声が聞こえてきそうだね。

でも、だからこそ、この映画は傑作なんだ。重苦しい社会問題を、軽い娯楽のオブラートで包んだからこそ、価値ある映画なんだ。これが『華氏451度』みたいなマジのやつだったら、ここまで観られることはなかったと思う。社会派SFを謙遜していた子にはぜひ観て頂きたい。ぼくらの社会が抱える問題について考える時間を、ちょっとだけ与えてくれる映画だよ。

七十年代の方々は中々にロックな未来予想をなさる

しっかし、原作者も監督も、中々にロックな未来予想をしたもんだよね。現代で「ここから五十年後の社会はこうなっていると思うか」って質問をしたとしても、YESと答える人間はそれほど多くないと思う。国連だって、アフリカの人口増加を下方修正したし、八十億の地球人口を「まだまだ足りない」とする学者さえいる。……七十年代に予想されていたより、地球人は増えていないらしい。

閑話休題。この映画のロックな未来予想の一つとして、"近未来を描いた作品の癖に、全く未来感がない" って点がある。車や建造物は七十年代まんまだし、ゲームに限っては名失敗作コンピューター・スペースだよ。とは言え、これは正解だったと思う。仮にスター・トレックみたいなガジェットで未来感を出したとしても、当の未来人に笑いのネタにされちゃうのがオチだろうし。……あぁ!警察のロゴが警戒色のテープだったけど、これはめっっっちゃくちゃ好み!こういう細かい部分の演出は、探せば探すほど出てくるね。

んで、もう一つ。個人的にロックだと思うのは "キリスト教的価値観を持った制作陣が、安楽タヒをディストピアとして描いた" ってとこ。自害を禁止しているキリスト教的には正しいけど、これを描いたのにはちゃんとした訳があるはず。例えば、単にディストピアとして比較的容易に想像できるものだったとか。あとは、当時から安楽タヒを望む声があって、その末路を示唆するものだったとかさ。こうやって、過去の価値観を覗くことができるのも、映画の良いところだよね。

んで、あの後は結局どうなったのさ?

この映画はかなり衝撃的な場面で終わる。と言うか、モヤモヤが残ったと思う。だから、ちょっとその後のストーリーを考えてみる。本当はさ、目につくところに書くのはあんまり宜しくないんだろうけど、一個人の戯言だと思ってよ。

……さて、上に書いた通り、この映画の核は "ソイレント社の不正を暴く" という部分では無く、人口・環境問題にある。って考えると、あまり気持ちの良い未来は待ってないんじゃないかな。飽くまでも、警鐘を鳴らす映画だからね。

ソーン刑事はソイレント・グリーンの真実を明かすが、それによって妥協派と拒絶派に別れる。暴動は以前よりも活発に、激しくなってしまう。政府は人口を減らすために、社会を厳格な管理体制へと移行させる──

安直だけどこんな感じ?あとは、ソーン刑事も消されて、ホームの収集車へと放り込まれてエンド……ってのもオチとしては綺麗かも。んま、かなり観やすい映画だし、友達と鑑賞会した後にカフェかなんかでその後のストーリーを考えてみるのも面白いんじゃないかな。友達がいればね。


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