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【映画】ハッピーエンドかと思いきやラストでとんでもないミステリーがぶち込まれた『ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡』【ネタバレ】


日本版としてはまともなポスター。考えんのめんどくさかったんだろうな。

ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡
(原題: Jungle)

製 作 国  -  オーストラリア
          コロンビア
監   督  -  グレッグ・マクリーン
脚   本  -  ジャスティン・モンジョ
主   演  -  ダニエル・ラドクリフ
公   開  -  2018年(日本)
上 映  時 間  -  115分
興 行  収 入  -  $850,317(米ドル)

あらすじ

三年間の兵役を終えた後、刺激のある人生を求め旅するバックパッカー“ヨッシー・ギンズバーグ”。 彼は、二人の友人とガイドの"カール"とともに、ボリビアのジャングル奥深くの先住民が住むと言われる秘境の地を目指す。

しかし、険しいジャングルを進むうちに、友人の怪我、意見の対立などからグループ内に争いが始まり、四人は2組に分かれて行動することになる。それに追い打ちをかけるように、あるトラブルが起こり、ついにヨッシーは一人きりになってしまう……

彼は、ジャングルに潜む野生生物や自然の脅威に晒され、さらに孤独な闇夜を過ごすことで追い詰められていく。そして、最後は自分の精神との戦いに…… はたして、彼の運命は?

Filmarks


"実話を元にしています"系映画の罪

 いやね、僕って"実話を元にしています"系映画嫌いなんだよ。原作や忠実に縛られていて創造性に欠けるし、それを補うと、今度はノンフィクションを語る意味が無くなる。あまりにも脚色をしすぎて、実際の関係者への侮辱的表現が入れられることすらある。『タイタニック』と『ハドソン川の奇跡』!おめーらのことだぞおい!

 だから僕は、そもそもこの手の作品群は映画に向いてないと思ってるんだけど、それじゃあ感想もクソもないから、今回は創作作品として評価していくよ。

いつもみたいにガッつりネタバレするけど、興味がそそるようになんか書いてやんないから、別に良いよね?

はよ遭難しろ

 この映画を観てて最初に抱いた感想がこれだ。ほんっっっっとーーーーになっかなか遭難しない。誰かが絶望しているところを見たくてワクワクで再生したら、何も起きないままシークバーが三分の一を過ぎた時の僕の気持ちを考えてくれ。実際に事が起きたのは半分をすぎてからだ。

 いや、あのさぁ…… この映画は遭難がメインなんだから、いくら原作に書いてあろうと、そういう準備部分はカットしようよ。最初によくわからん女とロマンチックな雰囲気になってたのはなんだったの? ストーリー的にも、主人公の人物像的にも全く要らなかったでしょあのシーンはさ。女の役者が制作会社の社長の娘とかだったのか?

 演出面での脚色とかしてる場合じゃなかったでしょ。クソみたいにつまらない絵面って訳でもなかったけれども、観客はラドクリフのサバイバルを観に来てんだから、序盤の説明描写はさっさと省くべきだったよ。

ラドクリフが這いずって発狂するだけ

 序盤が長いってことはつまり、本編たる部分が薄っぺらくなるってことでもある。この映画では演出の工夫で誤魔化してたけど、よーく観るとかーなーりー雑だった。

 確かに、見せ場はしっかりと作られてたよ。特に、頭から寄生虫を自力で摘出するシーンなんかは、思わず顔を顰めそうになったし、現実との落差のコントラストを明るい夢で表現しながら、主人公が上流育ちであることを示していたのは本当に脱帽だった。

 でも、やっぱり時間が足りなさすぎるよ。見せ場をいきなり出して、それでもう次の日だもん。長い間さ迷っていたとは感じられなかったし、いざ救助された時の安心感もイマイチなんだよね。

 序盤を削って、徐々に追い詰められていく所を更に描写していれば、もっと良い映画になったんじゃないかな。小説なら長くても良いんだけど、これ、映画だからね。二時間しかないからさ。

最大のミステリーを後日談でまとめるのやめて

 さて、今書いたように、主人公は最終的に無事救助されてハッピーエンドで終わるんだけど、エンドロール前の後日談で衝撃の事実が語られる。よくあるよね? 黒背景に白い字幕で、映画にする程でもないその後を短く纏めたやつだよ。『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』みたいな。

 この衝撃を理解するためには本編を知らなくちゃいけないからちょっと説明するけど、まず、主人公はケヴィンとマークっていうお友達と旅行してて、現地で出会ったベテラン風の探検家カールに「未知の部族を見せてやるよ(要約)」って誘われる。んで、三人はホイホイついて行っちゃうんだ。

 どうやらカールは本当にベテランらしくて、雨が降るタイミングや道まで完璧に把握してた。クソ陰キャの主人公とマークは完全にカールを信じきっちゃうんだけど、陽キャのケヴィンはカールに対してイキリ始めちゃうのよ。

 それが喧嘩に発展して、足を怪我したマークはベテランカールと、主人公とケヴィンは筏で川を下って帰ることになった。その最中に「クリスマスまでには帰れるさ」なんていう、人類史上最悪のフラグをおったてちゃったせいで、主人公組は離れ離れになっちゃうんだよね。

 結果的に、先に救助されてたケヴィンが主人公を探し出してジ・エンドなんだけど、びっくりなのはここから。なんとカールとマークも行方不明らしい。そこから数週間探したけど、結局は遺体すら見つからず。

 さ、ら、に、カールは当局に追われていた犯罪者であったらしく、未知の部族も存在しなかった、と。

 ……いや、字幕の説明だけで済むことじゃあ無いですよね? いやいやいやいや、だってさ、カールは確かに怪しさむんむんだったけど、終始親切なおじさんだったじゃん。こういう、話を根本から覆しかねない事実を「あっそういえば」みたいに終わらせないでくれよ。まぁ、久々に映画で怖がれたから良いんだけどさ。

悪名高き環境活動家 "Karl Ruprechter"

 このカール、映画的には謎の人物として終わってた方が気味が悪くて良いんだけど、やっぱり気になるよね?

 で、調べてみたけど、記事がまーーー出てこない。日本語では精々が著書に触れているものだけ。だから、英語、ドイツ語にまで範囲を広げて探してみたんだけど、その結果、80年代後半にオーストリアで指名手配されていた Karl Ruprechter という人物に関しての興味深い記事を一つだけ見つけた。

 それによると

  • 40年代後半のオーストリアで産まれた熱心で過激な環境活動家である。

  • ベルリン大学で経済学、政治学、国際関係学を学んでいた。

  • 両親は労働活動家であり、社会主義に傾倒していた。

  • 環境保護に関係する複数の法律違反、刑法違反でオーストリア当局に指名手配されていた。

  • 逃亡のために世界中を転々としていた。

  • 2018年に85歳で亡くなるまで逃亡を続けた。

らしい。こいつが映画のカールかは分からないし、この記事自体の信憑性もお察しだけど、うむむ……時期は大体あってるし、苗字も原作と一致してるみたいだぞ…… 

 亡くなった年齢から逆算すれば、主人公が遭難した81年には48歳であったはず。ジャングルにいても確かにおかしくは無いし、寧ろ素人目線では脂の乗ったベテランに見える。

 そして、面白いのは、彼が85歳まで生きていたってところ。これが正しいなら、マークは足の容態が悪化して見捨てられたか、途中で死んでしまったのか、とにかくジャングル内で亡くなっていた可能性が高い。カールは指名手配犯という立場上、警察と関わることはなるべくしたくなく、友人のことは知らせずにそのまま……

 一体、カールはなんのために主人公を誘ったのか、未知の部族とはなんだったのか、マークはなぜ行方不明になったのか、今でも一切が分かっていない。

 何はともあれ、友人マークの亡骸は今でもアマゾンのジャングルにしがみついているのかもね。

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