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#193 股関節の求心性・求心位という考え方

近年、雑誌や健康にまつわる本、
健康を扱ったテレビ番組などで
私自身がよく耳にする言葉に股関節がございます。

たしかに、身体を語る上では、
股関節は最重要事項と言っても過言では
ないかなと個人的には思っております。

歩行の過程の中でも、
あまり理解されておりませんが
歩行時の80%はどちらかの足の
片足立ちになっております。

股関節を考えていく中で、
とても大切になってくる考え方のひとつに
求心性、求心位というものがございます。

この考え方は、肩関節と股関節に当てはまります。

どちらも関節の種類は
球関節(股関節は臼状関節ともいう)になります。

ここでは股関節の求心性、求心位について
考えてみたいと思います。

股関節の求心性とは、
股関節が動く際に、臼蓋の中心に対して
大腿骨頭の中心が接した状態をいいます。

同じような意味合いで、
股関節の求心位とは、大腿骨頭が
寛骨臼の中心(関節窩)に位置している
状態をいいます。

股関節が正常でありましたら、
動きの中でこの求心位を保つことができます。

股関節は体幹と下肢を繋ぐ
重要な関節となっておりまして、
体重支持や移動などの役割を担っております。

求心位を保つことで股関節から
体幹への安定性を高め、
股関節主導で身体を動かすことができます。

股関節の安定性には、
股関節そのものが持つ骨的安定性に加え、
股関節を動かすときの動的安定性
動かしていないときの静的安定性
3種類があります。

また、股関節の安定性に寄与するものとして、
股関節唇があります。

股関節唇は、関節の表面を広くすることで骨頭の
収まりを良くし、衝撃を吸収する作用があります。

合わせて、ゴムパッキンのように
機能しておりまして、シーリング効果が働き、
股関節内が陰圧となり、
骨頭の求心性保持に寄与しております。

股関節を求心位にする筋肉には、
様々な筋肉が関係しております。

股関節の安定には、深層外旋六筋(大腿方形筋、
梨状筋、内・外閉鎖筋・上・下双子筋)、小殿筋、腸腰筋などが関係しております。

深層外旋六筋:大腿方形筋、梨状筋、内・外閉鎖筋、上・下双子筋から構成されており、さまざまな角度で骨頭を求心位に保つ役割があります。

梨状筋:仙骨の前面から起始し、
股関節運動の中心点にあたる付近を走行します。
大腿骨頭を臼蓋に押し付け、股関節運動の適合性を高める働きがあります。

股関節の求心位を保つには、股関節周りの筋肉を
適切に使うことが重要です。

特に、腸腰筋と深層外旋六筋の筋肉が
共同収縮する機能が重要となってきます。

これらの筋肉が働きが悪かったり、
アウターマッスルとのバランスが悪くなってしまうと求心位不良が起きてしまいます。

股関節の求心位が乱れる原因には、
次のようなものがあります。
・関節包や靭帯、筋肉などが硬くなり、骨頭を前方に押し出す
・寛骨臼(臼蓋)形成不全症により、骨頭の納まりが悪い
・変形性股関節症により、関節の被覆が少ないため、求心位を保持するのが難しい

股関節の求心位不良は、動作時の痛みや可動域の
制限に繋がりやすくなります。

股関節の動作時に衝突が生じる病態として
FAI(femoroacetabular impingement)が
知られております。

FAIによって股関節唇や関節軟骨が損傷され、
関節の求心性が損なわれることで
関節不安定症が生じる恐れがございます。

関節の求心性が損なわれてしまいますと
関節不安定症が高率に生じる可能性があります。

股関節不安定性は、歩行などの身体活動中に
寛骨臼の中で大腿骨頭が過剰に運動することで
起こります。

変形性股関節症などの誘因にもなってしまいます。

股関節の安定性を計っていくには、
まずは股関節の求心位に関わる筋肉たちを
鍛えたり的確に使えるようにすることが
大切になってきます。

ただこれだけでは十分ではなく、
ミクリッツ線の考え方や
足部のアーチへの理解、足の指の機能的改善なども
重要になってきます。

加えて、股関節を機能させていくためには、
膝関節や足関節の状態も合わせて
気に掛ける必要があります。

また、股関節は骨盤や脊柱との親和性も高いため、骨盤や脊柱の状態も気に掛ける必要が出てきます。

脊柱は肩甲骨や頭部との関係性もありますので、
股関節を安定させることで、身体全体のバランスを連動させることができるようになるかと思います。

今回の股関節の求心性、求心位について頭の片隅に
入れておいていただければ嬉しく思います。

ミクリッツ線や足部のアーチに関しまして
こちらの投稿も参照していただけると幸いです。