なぜ Lisk ホルダーは JavaScript を好材料として見るのか

はじめまして、エンジニアのルシン(@lucene_coin)です。投資家向けにエンジニア目線からの技術情報をお伝えしています。今回は、仮想通貨 Lisk が JavaScript で開発されていることを好材料として捉えている人に対して、その誤謬を訂正するための記事です。

Lisk が JavaScript で開発されていることは、決して好材料ではありません。理由は後述しますが、だからといって悪材料というわけでも無く、「開発言語はその仮想通貨の未来にさほど影響しない」というのが私の持論です。あくまで重要なのは通貨の設計や思想、その次に提携企業やマーケティング等であり、そこに開発言語が影響する部分はほとんどありません。

なぜ JavaScript で開発されていることは好材料ではないのか。すでに過去記事 仮想通貨 Lisk にまつわる技術情報について に記していますが、主な理由としては JavaScript はプログラミング言語としては粗悪である、という背景が第一にあります。詳細な技術情報については割愛しますが、「JavaScript 罠」などで検索すればその雰囲気は分かるかと思います。

「でも JavaScript の開発者は世界中にいるじゃないか」という反論もあるかと思うので、それについて反論します。JavaScript は言語ランキングでは 6 位で、上位ではありますが、言い換えればさらにメジャーな言語が 5 つ存在し、複数の仮想通貨がよりメジャーな言語で実装されています。そもそも JavaScript 開発者が多い理由は、ブラウザ上では JavaScript しか動かず他に選択肢がないからしぶしぶ JavaScript を選ぶ、という理由によるものです。「素晴らしい言語だから学ぶ」といったポジティブな理由ではないのです。その証左として、Google は JavaScript を代替する Dart という言語を作りました。Microsoft は互換言語である TypeScript を作りました。その他数多の JavaScript の代わりとなる言語が作られ、AltJS という呼び名がついたほどです。しかしかの Google や Microsoft でさえ JavaScript を取り巻く魑魅魍魎とした環境を代替するにはいたらず、Web を取り巻く環境は今もカオスのままです。

前置きが長くなりましたが、JavaScript の開発者より開発者が多い言語は複数あり、好材料とは言えません。それでも納得が行かなければ、逆に、なぜ他の仮想通貨は JavaScript で実装されていないのか?を考えると良いと思います。

なぜ JavaScript が好材料と見られたのか

ではなぜ Lisk 界隈には JavaScript を好材料と捉える向きがあるのでしょうか。一つは Lisk コイン広報がたびたび JavaScript による開発を(ポジショントークで)アピールしており、それを技術に明るくない Lisk ホルダーが真に受けた、という理由がある考えています。

もう少しマクロな視点で解釈してみましょう。投資界の名著として崇められる The Zurich Axioms (日本語訳: マネーの公理)という本があります。本書は投資に関わる人々に対してお金持ちになるために守るべきルールを示した本です。本書の中では投資に関わる人々の心理状態について鋭く指摘しています。本書の中では「投資家は自身のポジションについて、信じたいものを信じる」と解説されており、今回の現象はその心理の現れではないでしょうか。このような心理に対して本書は「楽観のみで行動してはならない」と記しています。

おわりに

私は Lisk ホルダーです。Lisk の未来を信じています。でもそれは Lisk が JavaScript で開発されているからといった理由ではありません。Lisk の設計や思想の筋が良く、今後も順調に伸び続けるだろうという考えに拠るものです。Lisk はまだメジャーな通貨とは言えません。今後も仮想通貨界隈には大勢が新規参入してくるでしょう。その時には、「私が JavaScript を信じているから正しいのだ」というような妄言ではなく、正しい Lisk の技術情報を伝えることが Lisk コインをより我々が期待する未来へ導いてくれるものだと信じています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?